感染症速報詳細

記事日付 20090724
タイトル インフルエンザパンデミック(H1N1)-米国:神経学的合併症 20090723.2606
国名 米国    
感染症名 インフルエンザパンデミック
概要 小児の新型インフルエンザパンデミック(H1N1)感染に見られた神経学的合併症--ダラス、テキサス州、2009年5月
Neurologic Complications Associated with Novel Influenza A (H1N1)
Virus Infection in Children --- Dallas, Texas, May 2009
和文 http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5828a2.htm?s_cid=mm5828a2_e
痙攣、脳炎、脳症、Reyeライ症候群、その他の神経症状などの神経学的合併症は、季節性のA型およびB型インフルエンザウイルスの呼吸器感染に伴って報告されていたが、インフルエンザパンデミック(H1N1)2009ウイルスによる報告はなかった。2009年5月29日、theDallas County Department of Health and Human Services (DCHHS)は、2009年5月18-28日の期間中にDallas Countyで発生した、インフルエンザパンデミック(H1N1)2009ウイルス[このあと、本報告中で新型インフルエンザA(H1N1)と呼ばれている]感染に伴う神経学的合併症のある4人の小児の入院について、CDCに報告した。この4人の患者の臨床症状について要約し報告する。人の年齢は7-17歳で、influenza-likeillness (ILI インフルエンザ様症状)を発症し入院となった。4人のうち3人に、脳波検査で異常が認められた。すべての患者の鼻咽頭からの検体で新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスのRNAが検出されたが、脳脊髄液からは検出されなかった。oseltamivir(4 patients) およびrimantadine (3patients)の抗ウイルス薬による治療が行われた。いずれも後遺症なく回復した。季節性インフルエンザ同様、新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスの気道感染後にも、神経学的合併症が発生することが明らかになった。原因不明の痙攣や精神状態の変化を伴うインフルエンザ様症状を示す小児の患者、特に入院を必要とする症例では、鑑別診断として、季節性インフルエンザおよび新型インフルエンザA(H1N1)の急性感染も検討し、気道からの検体の適切な診断検査を行い、初期経験的治療として抗ウイルス薬をただちに開始する必要があると考えられる。

症例の詳細 Case Identification
2009年4月29日以降、DCHHS当局はDallas
County内のすべての医療機関に対して、新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスによる受診患者についての詳細情報を提供するよう要請してきた。7月20日現在、当局が確認している、検査で確定された新型インフルエンザA(H1N1)ウイルス感染患者数は、the
greater Dallas areaにおいて405人であり、このうち44人が入院患者であった。死亡は報告されていない。感染が確定された患者のうち、83%は18歳未満であり、これらの小児科患者の中で、入院した26人を含む145人の小児は、the Children's Medical Center of Dallas (CMCD) laboratory-based surveillance programにより判明した。H1N1による入院患者全員の入院から退院までの記録は、当局の疫学担当者らによって定期的にチェックされている。入院患者の特徴は常に蓄積され、特異な症例や住症例については詳しく調査されている。急性神経学的合併症のあった新型インフルエンザA(H1N1)ウイルス感染患者とは、ILI症状の発症日から5日以内に、他の原因によらない、けいれん・脳症もしくは脳炎が認められた、検査で気道に新型インフルエンザA(H1N1)ウイルス感染があることが確認された患者と定義した。脳症とは、24時間以上続くaltered mental status[精神(意識)状態の変容]と定義した。脳炎は、脳症に加え以下の2つ以上の項目を満たすものとした;38℃以上の発熱、局在性神経学的症状、CSF pleocytosis 脳脊髄液の多型球症、脳炎特有の脳波所見、感染もしくは炎症を示唆する異常な神経画像所見。4月22日から7月20日までの期間中に、7例の、神経学的合併症が疑われる新型インフルエンザA(H1N1)ウイルス感染患者が確認された。3例は、他の原因による(未熟性による低カルシウム血症と無呼吸、など)神経学的合併症であると判断されたか、または症例定義を満たさない(精神状態の変容が24時間未満)であったため、除外された。この報告は、残る4例について記述されている。はじめに1例(患者A)が、5月18日にDallasの地方病院から報告された。残る3例は、5月23-27日の間に、CMCDからDCHHSに報告され、その後7月20日の時点まで、新たな患者報告はない。CMCDを受診した患者3人全員の鼻咽頭スワブ検体は、Directigen EZ Flu A+B rapid enzyme immunoassay (EIA) (BD [Becton, Dickinson, and Company], Sparks, Maryland), QuickVue Influenza A+B test (EIA)
(Quidel, San Diego, California), or D3 Ultra direct fluorescent assay (Diagnostic Hybrids, Athens, Ohio)、のいずれかを用いて、インフルエンザAおよびB抗原の検査が行われた。陽性検体はすべてDCHHSに送付され、novel influenza A (H1N1) virusであることが、CDCが認可した primers and probe setsを用いたreal-time reverse transcription-polymerase chain reaction (rRT-PCR)検査によって確認された。CSF(脳脊髄液)の検体はすべてCDCに送付され、rRT-PCR法によりinfluenza,
enteroviruses, parechovirus, adenovirus, and human parainfluenza virus serotype 3について検査された。patients B and DのCSFについては、commercial laboratory (Viracor)において、別のウイルスについても検査が行われている。

症例報告(詳細は原文参照願います)
患者A 5月17日発症の17歳の黒人男性。39.2℃の発熱と咳、頭痛、めまいがあり、EIAでインフルエンザA陽性。自宅 oseltamivirを服用したが、反応性低下などが見られるため入院となった。...
患者B 5月23日発症の10歳のヒスパニック男児。40℃の発熱があった4日後に、3分間続いた全身性強直性間代性けいれんと発作後精神症状。...
患者C 5月26日発症の7歳の白人男児。けいれん、咳などがあり、2分間の上下肢の強直運動を伴って自宅で倒れていたところを発見..
患者D 5月27日発症の11歳の黒人男児。発熱と嘔吐で入院した翌日に、運動失調と、間欠性の眼球回転と舌の突出からなるけいれんを発症...

MMWR編集部注
原文参照願います


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