感染症速報詳細

記事日付 20090805
タイトル マールブルグウイルス-ウガンダ 20090801.2700、Egyptian fruit bat
国名 ウガンダ20090801    
感染症名 マールブルグウイルス
概要 [1] ウガンダのオオコウモリでマールブルグウイルス確認
Marburg virus found in fruit bats in Uganda
和文 http://www.reuters.com/article/latestCrisis/idUSN31432759
ウガンダのある洞窟内にいる数千頭のコウモリが、エボラウイルスのcousinである、マールブルグウイルス [the Ebolavirus と Marburgvirusはともに、genera of the family _Filoviridae_(フィロウイルス科に属するウイルス)である]に感染していることが、31日に研究者によって明らかになり、この哺乳動物が致死性ウイルスの自然界の宿主であるとの説が、より一層支持される結果となった。米CDCなどからなる調査チームにより、2007年に鉱山労働者らがマールブルグウイルスに感染した洞窟内の、コウモリに対して行われた検査で、5%のコウモリにウイルスが見つかった。10万匹以上が生息する、ウガンダのKitaka洞窟の_R. aegyptiacus_ bats の5%で生きたウイルス感染が確認されたことから、同所内には5000匹を超えるマールブルグウイルス感染のコウモリがいることになる。この洞窟は、アフリカ中にある同じような洞窟内コウモリの1つに過ぎないと、報告したthe Public Library of Science journal PLoS Pathogens 誌の中で、述べている。ヒトでの感染流行の主要な発生原因となる可能性があることは明らかだと述べた。研究者の中で長い間、同じフィロウイルス科の致死性ウイルスである、エボラウイルスとマールブルグウイルスの自然界の宿主として、コウモリが疑われていた...この調査チームは、2007年に鉱山労働者1名がマールブルグ出血熱で死亡した、巨大洞窟内のコウモリの血液を採取した。この死亡した鉱山労働者のウイルスと、コウモリのウイルスは、遺伝学的に非常に近い(一致)ものであった。common Egyptian fruit bats が、マールブルグウイルスの保有宿主かつ感染源であり、ヒトに感染が波及する可能性があると、報告している。
[2] エジプトオオコウモリからの、遺伝学的多様性をもつマールブルグウイルスの分離
Isolation of Genetically Diverse Marburg Viruses from Egyptian Fruit Bats
情報源: PLoS Pathogens 、2009年7月31日。
http://www.plospathogens.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.ppat.1000536
[出典  PLoS Pathog 5(7): e1000536. doi:10.1371/journal.ppat.1000536. Full article available at the above URL]
要約:2007年の7月と9月に、ウガンダのKitaka Caveの鉱山労働者らが、マールブルグ出血熱と診断された。洞窟内での感染源は、コウモリの5.1%(31/611)に認められたマールブルグウイルスRNA、コウモリ血清中のウイルス特異抗体、コウモリの組織からの遺伝学的多様性のあるウイルスの分離などから、Egyptian fruit bats (_Rousettus aegyptiacus_) である可能性が高いことが判明した。9ヶ月の間隔を空けてウイルス株が分離されたことから、長期間のウイルス感染循環があることが判った。このコウモリの群生地には、mark and re-capture methodsを用いて調べた結果、10万匹以上が生息していることから、ウイルスに感染しているコウモリの数は5000匹を超えると予測される。コウモリと鉱山労働者から分離された、ウイルス遺伝子塩基配列の遺伝学的多様性が、非常に近いものであった。common Egyptian fruit bats が、marburgvirusの自然界の宿主であり、ヒトへの感染波及の感染源であることが示唆された。
著者要約:[Members of the genus Marburgvirus] は、近縁ウイルスであるthe Ebolavirus genusと同じく、アフリカ農村地帯で致死率が90%を超えるような、大規模な出血熱流行の原因となる。この致死性ウイルスの自然界の保有宿主が何であるかは、過去数十年間の長い間のenigma 謎であった。この報告により、洞窟内に生息するEgyptian fruit bat (_Rousettus aegyptiacus_) が、marburgviruses のnatural hostであることが明らかになった。これは、これまででは初めてとなる、野生で捕獲された、一見健康なコウモリからの、直接のウイルス分離など、ひとつながりの複数の証拠に基づくものである。_R. aegyptiacus_は、アフリカ全域で普通に見られ、地中海東部から中東まで分布する。ウガンダのKitaka洞窟内の_R. aegyptiacus_ bats の約5%で生きたウイルスが発見され、洞窟内に10万匹以上が生息することから、洞窟内でマールブルグウイルスに感染しているコウモリの数は、5000匹以上となる。(この洞窟は)アフリカ全域に数多く存在する、同じような洞窟の1つにすぎない。これらのコウモリが、ヒトでの感染流行の発生開始に関与する(感染源となる)可能性があることは明らかで、公衆衛生上の影響は大きい。また、コウモリから分離された感染循環中のウイルスに認められた、遺伝子塩基配列上の高度の多様性(21%)は、大きな集団の適合する保有宿主と長期間の関係性をもっていた結果として認められるレベルにあった。
[Mod.CP注-この著者らは、自然界のフィロウイルスの由来が厳密には確認されていないものの、証拠の積み重ねにより、コウモリが関与する可能性が示唆されたと主張している。初めてのMaruburg出血熱のアウトブレイクの原因となった、1967年にウガンダから欧州に運搬された感染サルは、多数のfruit bats(オオコウモリ、フルーツバット)が生息する、ビクトリアVidtoria湖岸や島で捕獲されている。1996年、実験的に感染させたfruit bats は、発症することなくエボラウイルスを増幅させることができることが証明された。洞窟内のEgyptian fruit bats, _Rousettus aegyptiacus_と、2種類の食虫コウモリにおいて、多様な遺伝学的系統のマールブルグウイルスが確認され、洪水発生によりアウトブレイクがおさまったものの、生きたウイルスは分離されていない。2002年の調査で、ガボンの森林に生息する種のfruit batでエボラウイルスのRNAが確認され、その後EHF(エボラ出血熱)の感染流行が発生し、2005年には同じガボン国内で、対応するアウトブレイクが発生することなく、_R. aegyptiacus_ batsにおいて、マールブルグウイルスの核酸が確認されている。いずれのケースでも、生きたウイルスは証明されていない。2007年7月、小規模のMarburg haemorrhagic feverのアウトブレイクが、Kitaka Cave (Ibanda village in western Uganda)の鉛と金の採掘抗夫の間で発生した。この鉱山内には、 おびただしい数の_R. aegyptiacus_と食虫性 _Hipposideros_ species コウモリがいた。2007年8月と2008年5月に行われた環境調査の結果が、今回報告されている。_R. aegyptiacus 内での垂直感染(母児感染)の証拠はないが、母親からの免疫が減弱したり、季節性に節足動物などの外部宿主の感染の発生などの要因によって、発達段階にある幼弱なコウモリjuveniles は、ウイルスに曝露するものと結論づけられれる。今回の研究において、コウモリの接触動物の寄生虫についての限定された調査では、マールブルグウイルス感染の証拠は認められなかったし、1999年のDRC(コンゴ民主共和国)で調査された、多数の寄生性の洞窟関連の節足動物においても、同じ結果であった。ヘンドラウイルスやニパウイルスのように、感染感受性のあるコウモリの間での水平感染するというのがもっともらしい。しかし、コウモリの口腔内スワブ検体でMarburgウイルスRNAが確認されたことはない。これは、肝や脾でウイルスRNAが陽性であったコウモリも含めた結果である。Nipah ニパウイルスで示唆されているような、masticated fruit spats (フルーツの咬み残し)による感染伝播は、マールブルグウイルスの感染経路とは考えにくいことを示している。別の経路として、糞や尿を介した感染伝播がある。ebolavirus が、実験的に感染させたfruit batsで最大3週間、排泄物中に排泄されることは有名である。しかし、われわれが行った、RT-PCR陽性のコウモリのホルマリン固定した腎臓の、限定的な免疫組織学的解析では、これまでのところ陰性で、糞を介した感染経路と比較して、尿を通じた感染経路の可能性は低い。しかし、糞や尿、だ液による感染伝播を除外するのは早計で、免疫組織化学法はRT-PCRより感度が低い。R. aegyptiacus batsの感染実験を通じて、将来感染経路のメカニズムが検討されるべきである。CONCLUDING REMARKSにおいて著者らは、21%以上の核酸の相違が見られるような、ウイルスの遺伝学的系統上の多様性をもつ世代やperpetuation 存続は、保有宿主とウイルスに長期間の関連性があり、さらにnaiveな個体との絶え間ない接触が繰り返されるような、大きな集団である必要性も示唆する結果と述べている。112000匹と見積もられている、Kitaka mine内の_R. aegyptiacus_ batsは、年間2回の繁殖期を通じて、最大10万匹の子孫を生み出すと考えられる。その上、この種のコウモリはアフリカ中に分布しており、the Kitum Cave complex on Mount Elgonのある東アフリカの周辺地域だけでも、多数の巨大コロニーを有している。南アフリカでは、_R. aegyptiacus_ colonies 内のコウモリの大部分が、季節ごとに(on a seasonal basis)300マイル以上離れた他のコロニーまで移動することが確認されている。すなわち、marburgviruses の脊椎動物の宿主の範囲は、広大な地理的範囲内の数千万のコウモリにおよぶ可能性もある。Marburg virus の系統的多様性が、ウガンダのKitaka鉱山やDRCのGoroumbwa鉱山という、単一の場所で共感染循環していることが観察されているものの、非常に近縁の系統が、例えば2000km以上も離れた別の場所でも確認されていることは注目に値する。例えば、ガボンのmarburgvirusの遺伝子塩基配列は、ジンバブエ、ウガンダ、DRCで分離されたウイルスと、非常に近い関係にある。the Ravn lineageのウイルス株は、 Kenya, DRC and Ugandaで確認されている。実際、今回のデータについて行った、isolation-by-distance analysis(Mantel test)では、遺伝学的相違と距離との相関関係は認められなかった。非常に近い関係にあるmarburgvirus の系統株が、地理的に離れた場所に存在することは、その自然界の宿主の移動性と最も関係が深く(一致するもので)、アフリカに生息する_R. aegyptiacus_の大移動の動きがあれば、容易に達成される。自然感染した_R. aegyptiacus_ coloniesの縦断的研究により、免疫状態のほか、集団内でのshedding(ウイルス排泄)、感染伝播、持続性などの動きに関する様々な洞察が得られるだろうし、年齢別の感染割合が周期的なのか、確率に従うのかも判るだろう。個々のコウモリにおける感染経過を知るために、感染実験が追加される必要もある。ヒトでの感染では、発症から3ヶ月後まで、睾丸などのprivileged sites(免疫寛容部位)において感染性のエボラウイルスが確認されていることから、感染したコウモリの様々な組織の検査は慎重に行うことも留意しなければならない]
写真 the Egyptian fruit bat (_Rousettus aegyptiacus_) http://www.arkive.org/egyptian-fruit-bat/rousettus-aegyptiacus/images.html?size=large
地図 the location of Uganda in Africa http://www.infoplease.com/atlas/country/uganda.html

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