記事日付 | 20090805 |
タイトル | HIV-カメルーン:ヒト、ゴリラ、新たな系統株 lineage 20090803.2728 |
国名 | カメルーン   |
感染症名 | HIV |
概要 | [1] 新たなHIV株発見 Scientists find new strain of HIV |
和文 | http://news.bbc.co.uk/1/hi/health/8175379.stm ゴリラの間で、SIV [simian immunodeficiency virus サル免疫不全ウイルス] の感染が見られることは、極めてまれである。今回、ゴリラがヒトへのHIVを起こした初めての例が確認された。これまで世界で3300万人の患者が発生しているHIV-1ウイルス株は、チンパンジー由来のウイルスであった。しかし今回、研究者らにより、カメルーン人女性が、明らかにゴリラのウイルス株と関連するHIVに感染していることが確認されたことが、Nature Medicine [Nature Medicine Volume 15 No 7. 2009]に掲載された。この研究者はBBCに対し、このHIVは新型ではあるが、現在の薬剤は有効だろうと述べた。初めて会ったウイルスではあるが、このウイルスにより、新たな問題が生じる心配はないと語った。HIV/AIDSは、1980年代に研究者らによって初めて確認されたウイルスであるが、コンゴ民主共和国内のある地域では、20世紀前半には、ヒトの間での発生が開始していたと考えられている。感染のあった bush meat(動物の肉)に触れたヒトに、種の壁を飛び越えて感染したのが最初だと考えられている。SIV(ウイルス)は、ゴリラを含む他の霊長類では報告されていた。パリParis在住の62歳のカメルーン人女性の治療を行ったフランス人の医師らは、当初、通常のload tests(ウイルス量検査)に、ある乖離 discrepancies があることに気づいた。詳しい検査により、女性が感染していたHIVウイルス株は、ヒトのHIVより、ゴリラのSIVにより近いことが判明した。この女性は、この新しいウイルス株への感染が確認された唯一の患者であるが、他にも感染例があるものと見られている。パリに引っ越す前は、この女性はカメルーンの半都会の地域に住んでおり、ゴリラやbush meatと接触する機会はなかった。このことから、女性は、ほかのゴリラウイルスに感染していた誰かからウイルスに感染したと考えられる。検査機関におけるこのウイルスの解析により、ヒトの細胞で増殖できることがわかった。共著者のマンチェスターManchester大学のDr David Robertsonは、チンパンジー以外の感染源からHIVが伝播されたことを確実に示したはじめての例で、この新しいウイルス株の新興について、監視する必要があることがはっきりしたと述べた。HIVの進化が今も進んでいることが示唆され、このウイルスでは、われわれヒトを含めた霊長類どうしの間で、種を飛び越えた感染の波及が起こりうる;この病原体は何百万年も前から、われわれヒトとともに生きてきた中で、常に宿主となる種を替えてきた;フランスでこの患者の感染が診断されていたことから、ヒトの移動により、世界中にウイルスが簡単に移動することが示された、と述べた。BBCの番組Wold Today の中でDr Robertsonは、既存の薬剤がこの新しいウイルスに効果がないことを示す理由はないと述べた。いつか(HIV)ワクチンが開発された場合にも、それが(SIVには)有効でない理由はどこにもないとも述べた。エジンバラEdinburgh大学のProfessor Paul Sharpは、おそらくこのウイルスは、チンパンジーからゴリラに伝播されたのが最初であろうと述べている。この最新の発見は興味深いが、驚くには値しないとしている。このウイルスが、他の3種類のHIV-1ウイルスのグループにあまり近いウイルスではないため、簡易検査では同定できなかったというのが、医学的な解釈として成り立ち、このため、このウイルスが潜在的にヒトの間に広まっている可能性もあると解説した。しかし彼は、広く蔓延することはなく、大きな問題ともならないと見ている。このウイルスに感染した患者に症状が見られないからといって、AIDSを発症しないと信じることはできないとも付け加えている。 [2] ゴリラからヒトへの新型HIVウイルス感染確認 Scientists Find New Human HIV From Gorillas 情報源: Medical News Today、2009年8月3日。 http://www.medicalnewstoday.com/articles/159623.php パリ在住のカメルーン人女性において、新たなhuman immunodeficiency virus (HIV ヒト免疫不全ウイルス) を発見した研究者らは、このウイルスは、ゴリラ由来と考えられる、これまでなかったHIV-1の変異ウイルスであることを確認した。この発見につながった、フランスのthe University of Rouen(ルーアン大学)のDr Jean-Christophe Plantierが率いるチームの研究結果は、8月2日のNature Medicine誌に掲載された。英国のDrs David Robertson and Jonathan Dickerson(the Faculty of Life Sciences at The University of Manchester マンチェスター大学)も参加している。HIV-1には、チンパンジー由来のM,N,Oの3種類の系統が確かめられているが、この新たな変異ウイルスは、ゴリラ由来の新たな系統の原型prototype であり、これまでに知られていた他の系統との組み換えrecombination があった形跡も認められなかったと、説明されている。この新たな系統を、HIV-1 group Pと呼ぶことを提唱している。現在世界中に、the HIV-1 virus group M (groups N and O are mainly confined to Cameroon)によるAIDS患者は3300万人いる。HIVは、チンパンジーで見つかったsimian immunodeficiency virus (SIV サル免疫不全ウイルス)が、感染した動物の肉をヒトが食べたことによって起きたと考えられる、種を超えた感染で生み出された疾患である。初めてHIVが確認されたのは1980年だったが、現在のアフリカのコンゴ民主共和国にあたる地域周辺では、およそ80年前から感染が発生していたと考えられている。研究対象となっている、この62歳のカメルーン人女性は、2004年にパリに移住し、その直後に発病した。女性の血液検体は、viral load(ウイルス量)に乖離が見られ、さらに詳しい検査により、ヒトのHIVよりも、ゴリラのSIVに近い、新たなHIVウイルス株の感染であったことが判明した。しかし、この女性のパリへの移住前の住所は、アフリカ中西部カメルーン共和国の半都会地域で、動物の肉やゴリラとの接触暦は認められなかった。この情報と、このウイルスに、ヒトの細胞内での増殖能があるとの研究結果から、研究者らは、ウイルスが別の場所にも存在する可能性が十分あることを示唆している。新型のHIV-1系統の発見は、新型のHIV変異ウイルスの発生についての、より注意深く監視を続けなければならないことの重要性を指摘した。HIVは常に変化し続けており、種から種へ、霊長類から他の霊長類へと、われわれヒトを含めて種を飛び越えた感染の波及の可能性がある...[1]と重複。 出典 "A new human immunodeficiency virus derived from gorillas." Nature Medicine, Published online: 02 August 2009. DOI:10.1038/nm.2016 http://www.nature.com/nm/journal/vaop/ncurrent/full/nm.2016.html 要約 We have identified a new human immunodeficiency virus in a Cameroonian woman. It is closely related to gorilla simian immunodeficiency virus (SIVgor) and shows no evidence of recombination with other HIV-1 lineages. This new virus seems to be the prototype of a new HIV-1 lineage that is distinct from HIV-1 groups M, N and O. We propose to designate it HIV-1 group P. |
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