記事日付 | 20090911 |
タイトル | インフルエンザパンデミック(H1N1)2009(44)-世界各国:レセプターとの結合性 20090910.3192 |
国名 | 世界各国   |
感染症名 | インフルエンザパンデミック |
概要 | 豚インフルエンザウイルスの能力に対する懸念 Scientists warn over swine flu virus potency |
和文 | http://www.timesonline.co.uk/tol/news/uk/health/Swine_flu/article6828915.ece 豚インフルエンザ[インフルエンザパンデミック(H1N1)2009]ウイルスは、季節性インフルエンザと比べて肺の深い場所(奥)の細胞に感染するため、感染した患者でより重症の合併症が起きやすいことが、研究により示唆されている。雑誌 Nature Biotechnology に掲載されたこの研究は、第一線の医師らからの報告を、初めて検査結果から裏付ける報告となった。季節性インフルエンザウイルスは、ほとんど例外なく鼻・のど・上気道の細胞だけに付着し、鼻水・咽頭痛・乾いた咳といったインフルエンザの症状を引き起こす。しかし、この研究では、インフルエンザパンデミック(H1N1)2009ウイルスは、より広範囲のレセプターに結合することが可能であるため、肺の奥にある細胞に到達することが明らかにされた。折しも本日(12日)、英国政府の主任科学アドバイザーは、来月ごろに豚インフルエンザはピークを迎えるとの見方を示した。感染の第2波は、最も早くても10月以前ではないだろうと、述べた。研究結果や疫学モデルから、ウイルスは弱まると見られていたと述べた。このあと何度か感染の波が訪れるが、次の波が今後起きるどの波よりも大きい可能性が高いと、University of Surreyの教授が述べた。英国政府当局は先週、豚インフルエンザに関する見通しを変更し、英国内で最悪の場合の死者が19000人と予想している。以前は死者65000人との見方を示していた。しかし依然、人口の最大30%が発病すると見られている。ほとんどの患者が1週間程度で回復する一方で、一部は二次感染や肺炎を発症し、死亡につながることもある。英国内では少なくとも70人が感染により死亡し、数百人が入院治療を必要とした。今回の研究で、Imperial College Londonの教授らは、86種類のレセプターに、季節性インフルエンザとパンデミックインフルエンザを接触させる実験を行った。季節性インフルエンザは、上気道に見られる種類のレセプターだけに定着したが、インフルエンザパンデミック(H1N1)2009ウイルスは、弱いながらも肺の中にあるレセプターにも定着する能力を持っていた。これによって、より重症な肺の感染症が引き起こされる。もしも今後インフルエンザウイルスの変異が起こり、肺内の深い位置にあるレセプターへのより強固な接着が可能になれば、さらに重症化する患者が増えると考えられ、今後、このような変化に対する注意深い監視が必要と述べた。一部の専門家からは、第2波発生時の患者受け入れに対する、NHSの集中治療用のベッド不足が指摘されている。しかし、アウトブレイクの程度は、それ以前に、いかに多くのヒトが感染していたかにかかっているとも指摘されている。報告されていない患者数を推定することは困難であり、ちょっと鼻をすすったり、いらいらしていた程度でも、実際にはウイルスに感染していたというヒトもいるはずである。これまでに使用されたタミフル(oseltamivir)は45万人分で、インフルエンザと確定診断された患者の10倍である。Beddington 教授は抗ウイルス薬で多数の人々を治療することに反対の立場をとっていたが、Scientific Advisory Group for Emergencies (Sage)では、タミフルを自由に処方することについて意見が分かれた。内閣に助言を行うグループのメンバーは、耐性のリスクを懸念しているが、ウイルスが耐性を獲得したとの証拠は得られていない。 原著 Nature Biotechnology, September 2009, Volume 27 No 9, - pp797 - 799.: "Receptor-binding specificity of pandemic influenza A (H1N1) 2009 virus determined by carbohydrate microarray"( http://www.nature.com/nbt/journal/v27/n9/full/nbt0909-797.html subscription required). |
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