感染症速報詳細

記事日付 20090918
タイトル インフルエンザパンデミック(H1N1)2009-オーストラリア:(51) 抗体の不足 20090917.3261
国名 オーストラリア    
感染症名 インフルエンザパンデミック
概要 ウイルスに感染し重症化した妊娠女性では、抗体のレベルが低い
和文 http://www.metronews.ca/toronto/live/article/311673--low-levels-of-key-antibodies-may-lead-to-severe-disease-study-suggests
豪の研究者らが、なぜ豚インフルエンザの感染者の一部が、生命を脅かすような重症化が見られるかの理由についての手がかりを発見したかも知れない。そしてもし彼らが正しければ、パンデミックによる死者を減らすことのできる治療手段を手に入れることができる。この研究グループは、パンデミック H1N1 2009 ウイルスに感染し重症化した妊娠女性では、ウイルスに特異的に働き、ワクチン接種に反応して身体を防御することが知られている抗体のレベルが低いことを発見した。中等症の女性では、抗体が有意に抑制されたレベルになる頻度がずっと低かったと、報告している。メルボルンMelbourneの3病院のネットワークであるAustin Healthの感染症病院長である、Dr. Lindsay Graysonは、非常に興味深い事実に出会ったと信じていると話した。いずれのインフルエンザかを問わず、その重症例と、わずかだが重要な免疫不全immune deficiencyとの相関correlation もしくは 関連性 association を明らかにしたのは、この報告が初めてだと考えていると述べた。抗体のクラスだけでなく、個々のサブタイプまで行われた検査によって明らかになった。特に急激な悪化を見た、非常に重症の患者について行われ、研究チーム内で、献血から集めた抗体を含む血液製剤である、免疫グロブリンが治療に役立つかを議論した。(最重症)患者らの検査で、IgG2と呼ばれる抗体のレベルが低値であることが判明し、結果に驚いたと認めている。ICU [intensive care unit 集中治療室]の豚インフルエンザ感染患者全てについても、検査が行われることとなり、ICU入院を必要とした患者のほとんど全てが、IgG2 deficient(低値)であることが判ったと述べた。結果は、ICAAC, the annual meeting of the American Society for Microbiology(全米微生物学会)で発表された。重症患者のIgG2レベルは、中等症の患者のおよそ1/3であった。この研究は妊娠女性だけで行われたものであるが、ほとんどの患者が一次的なインフルエンザだけに終わる一方で、ほんの一部の豚インフルエンザ患者が重症化することを、この抗体欠乏によって説明できるかを検討することは非常に有用だろうと述べている。2-20%のヒトに何らかのantibody deficiencyがあることが知られているが、その全てにIgG2 deficientは認められることはない。免疫グロブリンによる治療を受けた重症患者の3/4が生存するが、予測は困難である。トロントTrontoのMount Sinai病院の微生物学者は、この発見は暫定的ではあるが非常に興奮するものであり、豚インフルエンザに感染した場合に、(豪原住民の)アボリジニにより重症化リスクがあることも説明できるかも知れないと述べた。この仮説はさらに検討する価値があると述べた...しかし、ウィニペグ Winnipeg の集中治療の専門家で、今春から初夏にかけて多数の重症豚インフルエンザ患者の治療に当たっていた医師は、それほど楽観視していない。この結果は、重症患者ではどのようなグループ(どのような病気であっても)においても予想されるものと、電子メールで指摘した。また、別の感染症専門家も、重症患者で全ての抗体レベルが低下するのは、珍しいことではなく、より重症であるほど低下は大きいと述べた。

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