感染症速報詳細

記事日付 20091002
タイトル インフルエンザパンデミック(H1N1)2009-ニュージーランド、オーストラリア:インフルエンザA関連急性呼吸器疾患症候群 FLAARDS
国名 ニュージーランド     
感染症名 インフルエンザパンデミック
概要 肺で炎症が生じ水浸しになることが、豚インフルエンザによる死亡のきっかけ
Inflamed, flooded lungs trigger death by swine flu
和文 http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601081&sid=aPd3JODa5N08
豪とニュージーランドの医師らは、豚インフルエンザ[インフルエンザパンデミック(H1N1)2009]ウイルス感染の最も危険な状態は、感染によって肺に炎症が生じ、液体が貯留し、機能不全になった場合であることを突き止めた。このウイルスに感染したヒトのほとんどが軽症である一方で、少数の患者が生命に関わる状態に至ることがあると、ICUの専門家らは述べた。パンデミック 2009 ウイルスによる、主な3つの合併症は、"flu A-associated acute respiratory disease syndrome", or "FLAARDSと命名された...新型のパンデミック H1N1 2009 ウイルスにより、世界191カ国に感染が拡大し、3917人以上が死亡した。オーストラリアでは2009年冬に、集中治療室のベッドの1/4がインフルエンザ患者のために使われ、178人が死亡した。香港では、現在がピークとなっていると見られている。救急部門の1日平均の受診者が、8月最終週の6354人から先週[9月21日の週]には7086人に増えた。香港では23人が死亡している。豪とニュージーランドNZの集中治療室の医師らは、400人以上の豚インフルエンザ患者のデータを蓄積し、疾患のパターンを明らかにして治療戦略を立て、来る2009-2010年の冬に予測される事態について、北半球の国々に情報提供を行っている。集中治療を必要とした重症例だけの記述ではあるが、この新たな疾患の影響全体を理解するのに役立つかもしれないと著者は述べている。豪第2の人口が住むビクトリアVictoria州では、パンデミックウイルスにより人口の約5%が発病し、患者の0.3%が入院した。入院となった患者の5人に1人が集中治療室ICUに収容され、ほとんどが重症呼吸不全が原因であった。重体となった患者の85%は、回復するまで平均9日間のICU入院を要した。約3/4の患者が人工呼吸器を必要とし、7%はextracorporeal
membrane oxygenation, or ECMO.と呼ばれる、ポンプで人工肺に血液を送る処置が必要だった。ほとんどの患者では、インフルエンザは鼻・のど・気管にとどまって、鼻水、咽頭痛、咳などの症状が見られたあと、1週間以内で免疫によってウイルスが排除された。ヒト以外の霊長類でウイルスの研究を行った東京大学のYoshihiro Kawaokaによると、新型パンデミック H1N1 2009 ウイルスは、季節性インフルエンザに比べて1000倍以上、下気道に浸潤しやすかった。重症例では、インフルエンザが、小さなブドウの房の形をして血中のガス交換に与る、肺胞と呼ばれる部分を取り巻く毛細血管に障害を与え、肺胞からの出血がおきることで、肺内出血や血栓が生じる可能性がある。感染に反応し、傷害された組織を修復するために免疫システムが作り出す炎症物質の過剰産生反応が、肺の液体貯留を増悪させ、肺の機能不全を引き起こす永続的な瘢痕を生じる。FLAARDS以外にも、パンデミックインフルエンザウイルスに伴う特徴的な疾患パターンとして、市中細菌性肺炎や、ウイルスによるairflow limitation(気流制限?)の増悪などがあげられている。著明な肥満、2型糖尿病、担がん、免疫低下、慢性肺疾患などの基礎疾患のある人では、致死性感染がより多く見られている。妊娠女性や出産後間もない女性も、ハイリスクの傾向が見られた。しかし、FLAARDSの患者の多くは若年者で、それまで問題のなかった人々であると、著者は述べている。オーストラリアでは、季節性インフルエンザで死亡する患者の平均年齢は83才であるが、新型パンデミック H1N1 2009 ウイルスの場合は51才であると21日に報告されている。

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