記事日付 | 20100227 |
タイトル | 狂犬病-米国:テキサスTX、ヒト、presumed abortive、2009年 |
国名 | 米国   |
感染症名 | 狂犬病 |
概要 | ワクチン接種歴のない、非典型的な狂犬病の回復例の報告 |
和文 | http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5907a1.htm?s_cid=mm5907a1_e 狂犬病は重症の感染症で、記録のはっきりしている回復した患者は、世界中で6人しかいない(参考文献1,2)。このうち5人は発症までにワクチンを接種されており、接種されていなかった1人は、長期間の集中治療後に感染を生き延びた。生存者の多くが、中等度ないし高度の神経学的後遺症を残した。生存患者6人全員の狂犬病の診断は、曝露歴、典型的な臨床症状と狂犬病ウイルス中和抗体rabies virus-neutralizing antibodies (VNA)の存在に基づいて診断されている。今回、発病の2ヶ月前にコウモリと接触がある、狂犬病のワクチンを接種されていなかった、脳炎を発症した少女の、臨床経過と検査所見について報告する。 この患者の血清および脳脊髄液から、indirect fluorescent antibody test (IFA:間接蛍光抗体法)により、抗狂犬病ウイルス抗体が確認されている。しかし、狂犬病VNA抗体が確認されたのは、1回目の狂犬病ワクチンと抗狂犬病免疫グロブリンの接種の後のことであった。この女児は、反復性の神経症状のため数度の入院や通院を必要としたものの、集中治療室での治療を受けることなく回復した。他の病因は確認できなかったため、abortive human rabies (この報告の中では、集中治療なしの狂犬病からの回復例と定義されている)と診断された...2009年(以下、すべて2009年)2月29日、17才の少女が、激しい前頭部痛、光線恐怖症photophobia、嘔気、頸部痛、めまい、顔面と前腕のしびれを訴えて、救急室を受診した。頭痛は受診の2週間前から続いていた。診察の結果、間欠性の失見当識、Glasgow Coma Score of 14、項部硬直、38.9℃の発熱の異常が認められた。頭部CT検査で異常は認められなかった。腰椎穿刺の結果は、white blood cell (WBC) count of 163/mm3, no red blood cells (RBC), 97 per cent lymphocytes, 3 per cent monocytes, and glucose of 61 mg/dL. であった。ceftriaxone and dexamethasoneの静注が行われたが、脳脊髄液の細菌培養では菌の発育が見られなかった。入院の3日後、少女の症状は回復し、退院して自宅に戻った。その後、頭痛が再び増強した;3月6日、photophobia、嘔気、頸部と背部を中心とした筋肉痛のため、他の病院を受診した。頭部Magnetic resonance imaging (MRI)検査で、年齢に比し、側脳室が拡大している点を指摘された。再度行われた腰椎穿刺の結果は、protein level of 160 mg/dL, WBC count of 185/mm3, and RBC count of 1/mm3 with 95 per cent lymphocytes and 5 per cent macrophages.であった。同日、三次の小児病院に移送された。 到着時には、発熱はなく、意識清明で見当識も正常であった。眼底検査で、両側disk marginsが不明瞭であることが判明した。左の視野の一過性の視野狭窄(制限)を伴う、光線恐怖症が認められた。上下肢の筋力低下があったが、その後の検査では回復していた。前腕と背部に、斑状掻痒性発疹が現れた。感染性脳炎の疑いと診断され、acyclovir, ceftriaxone, ethambutol, isoniazid, pyrazinadmide, and rifapminの静注による治療が続けられた。3月10日、少女は感覚脱失と右上肢の脱力を訴え、診察でも確認できた。嘔気はひどくなり、agitated and combative(動揺性で攻撃的)となった。しかし、このような症状は翌日には消失した。再度腰椎穿刺を行ったところ、頭蓋内圧の上昇が認められた。広い範囲の脳炎・無菌性髄膜炎の鑑別診断が行われたが、確定診断には至らなかった。 3月10日、医療チームはコウモリとの接触歴を聞き出し、鑑別診断に狂犬病の疑いが入れられた。患者自身が、頭痛が始まる2ヶ月ほど前に、キャンプ旅行でテキサスTexas州の洞窟に入り、飛んでいるコウモリとの接触があったことを思い出した。複数のコウモリが患者の身体に触れたが、咬まれたり引っ掻かれたりした感覚はなかった。患者はまた、ペットのフェレットとイヌを飼っていると報告したが、いずれも健康上の問題は認められていないため、獣医師が監視を続けている。この患者に対しては、一度も狂犬病ワクチンは接種されていなかった。3月11日CDCにおいて、血清および脳脊髄液の抗狂犬病ウイルス抗体に関するserologic tests、唾液と項部皮膚生検材料の狂犬病ウイルスRNAの存在を診断するためのpolymerase chain reaction (PCR) tests、および項部皮膚検体の狂犬病ウイルス抗原検出のための直接蛍光抗体法検査が行われた。ウイルス抗原およびRNAは検出されなかったが、4件の血清および脳脊髄液検体で、IFAによる狂犬病ウイルス抗体検査が陽性となった...交差反応が見られる可能性ある北米のリサウイルス属のウイルスは、Kern Canyon virus (KCV) のみで、皮膚生検材料・唾液・CSFのnested PCR法検査では、KCV RNAは検出されなかった。検査結果を受け、3月14日に初回の狂犬病ワクチン接種および1500 IU of HRIG接種が行われた。3月19日に血清のthe rapid fluorescent focus inhibition test (RFFIT)は陽性となったが、脳脊髄液は依然として rabies VNA.陰性の結果のままだった。患者は集中治療を必要とせず、3月22日には退院となった...編集部注、参考文献など、原文参照願います。 [Mod.CP注-....] |
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