渡航時におけるジカウイルス感染症への注意について

 世界保健機関(WHO)および汎米保健機構(PAHO)の情報によりますと、ジカウイルスが流行している地域で、先天異常、ギラン・バレー症候群、その他の神経症候群や自己免疫症候群が増加しています。ジカウイルスが小頭症やギラン・バレー症候群の原因であるということで、学術的にも意見が一致しています。

ジカウイルス感染症とは
 ジカウイルスは、主にヤブカ属のネッタイシマカやヒトスジシマカのうちウイルスを保有した蚊に刺されると人に伝播します。デング熱、チクングニア熱、黄熱を伝播する蚊と同じ種類です。

 ジカウイルス感染症の潜伏期間(曝露から発症までの時間)は明らかではありませんが、数日から一週間以上の場合もあるようです。ジカウイルス感染症の症状は、デング熱など他のアルボウイルス感染症の症状と類似しており、発熱、発疹、結膜炎、筋肉痛、関節痛、倦怠感、頭痛などが起こります。通常、これらの症状は軽く、2-7日続いて治まります。

感染後に発生が増えている疾患
 感染症状自体は軽度ですが、ジカウイルス感染症の後にギラン・バレー症候群の発症や、ジカウイルスの流行地域で小頭症の新生児が増加していることが報告されています。

 ギラン・バレー症候群や新生児の小頭症とジカウイルスとの関係は解明されていませんが、関連性が示唆されています。

 ジカウイルスが流行している処に住んでいる又は旅行する人は、蚊に刺されることを避ける予防処置を取って下さい。

 特に、妊娠の可能性のある女性およびそのパートナーは、感染への対策とともに性生活面でも注意が必要です。WHOが注意喚起を促している期間は、入手された情報とともに変わっていますので、確認しておいてください。
 ジカウイルス感染症の発生国への旅行者に向けての情報

 

媒介感染症に罹らないための対策
・ 可能な限り、しっかりと網戸がとりつけられているか、エアコンが備わっている、または、蚊をしっかりと駆除しているホテルやリゾートに滞在してください。蚊取り線香も有効です。
・ 長袖のシャツ、ズボンを着て、できるだけ皮膚の露出部を少なくするようにしてください。
・ 流行地域では屋外にでかける場合や網戸が備わっていない建物にいる場合には、ディート(DEET)などの有効成分が含まれている虫よけ剤を、皮膚の露出部につけてください。使用する場合には、必ず添付文書に記載されている使用法を守ってください。日焼け止めを使う場合は、先に日焼け止めをつけてから、虫よけ剤を使用してください。
・ 子ども、とくに乳児への虫よけ剤の使用については、小児科医にご相談ください。虫よけ剤が使用できない場合、ベビーカーにぴったりと合う蚊帳でベビーカーをおおってください。

心配な場合には早めの受診を
・ 海外で発熱などの症状が出たら、できる限り早く医療機関を受診してください。
・ また、ご帰国の際に、発熱や心配な症状のある方は検疫所の担当者にご相談ください。帰国後に発症した場合や、症状が改善しない場合は、お近くの医療機関または検疫所にご相談ください。
・ 医療機関を受診する時には、医師に、渡航先や渡航期間、渡航先での活動などについて、詳しく伝えてください。

参考:蚊媒介感染症を取り扱う医療機関
日本感染症学会による蚊媒介感染症専門医療機関一覧

FORTH 掲載情報
ジカウイルス感染症について (ファクトシート)(更新7) [WHO. Zika virus. Fact sheet] (2016年9月9日)
https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2016/09091615.html

ジカウイルス感染症の発生国への旅行者に向けた注意情報(2017年3月24日)
https://www.forth.go.jp/topics/2017/03241121.html

西太平洋地域におけるジカウイルス感染症のリスク評価 (2016年10月21日)
https://www.forth.go.jp/topics/2016/10211201.html

参考

厚生労働省
ジカウイルス感染症について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000109881.html

2016年7月14日に「蚊媒介感染症の診療ガイドライン」が改訂されました。
医療関係者の方は、こちらもご参照下さい。
http://www.nih.go.jp/niid/images/epi/dengue/Mosquito_Mediated_160713-3.pdf
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/sa/zika/6590-zika-medical-g3.html

国立感染症研究所
ジカウイルス感染症とは
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/sa/zika.html

外務省
感染症危険情報
ジカウイルス感染症に関する注意喚起(発出対象国追加:妊娠中又は妊娠予定の方は可能な限り渡航をお控えください。)(その4)

米国・フロリダ州米国・テキサス州シンガポールマレーシアフィリピンタイミャンマーパラオから危険情報がでています。

2016年1月掲載2017年6月更新