抗マラリア剤
海外で購入した抗マラリア薬を予防内服あるいは待機治療(自己治療)に使用する場合を想定します。
メフロキン mefloquine
海外では、LARIAM(Roche), MEPHAQUIN(Mepha)などの商品名で流通しています。マラリア予防薬としては最も広く使われている薬剤ですが、 以下のいずれかに該当する場合は必ず医師に相談して下さい。
- 精神神経系疾患の既往のある者。けいれん発作の既往のある者。
- 心臓病の治療薬を内服している者。
- 心肺疾患、肝腎疾患の既往がある者。
以下、メフロキン塩基250mg錠を使用する前提で使用法を記載します。
- 予防内服に用いる場合、成人量は1回1錠、週1回内服。
- 待機治療に用いる場合、成人量は1回4錠。小児は15mg/kg(耐性マラリアがない地域)。
小児は5mg/kg。妊婦には原則として使用できません。
体重 | ~5kg | 5~12kg | 13~24kg | 25~35kg | 36kg~ |
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毎週の内服量 | 不可 | 1/4錠 | 1/2錠 | 3/4錠 | 1錠 |
体重 | ~5kg | 5~6kg | 7~8kg | 9~12kg | 13~16kg | 17~24kg | 25~35kg | 36~50kg | 51~59kg |
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1回治療量 | 不可 | 1/4錠 | 1/2錠 | 3/4錠 | 1錠 | 1.5錠 | 2錠 | 3錠 | 3.5錠 |
高頻度にみられる副作用として、めまい、嘔気、うつ状態などがあります。
以下、薬剤調査報告に記載されていたメフロキン製剤です。
地域 | 商品名 | メーカー | 含有量 | 価格 |
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シンガポール | LARIAM | Roche | 250mg錠 | \2189/8錠 |
南アフリカ | LARIAM | Roche | 250mg錠 | 不明 |
南アフリカ | MEFLIAM | Cipla Medpro | 250mg錠 | 不明 |
クロロキン chlorooquine
わが国では製造・販売が禁止されています。 海外では、ARALEN, AVLCLOR, CHLOROCHIN, NIVAQUINE, RESOCHINなどの商品名で流通しています。 マラリア予防薬としては最も安全性の高い薬剤ですが、薬剤耐性マラリアが多いことが欠点です。
以下、リン酸クロロキン250mg錠(クロロキン塩基150mg相当)を使用する前提で用量を記載します。
- 予防内服に用いる場合、1回2錠、週1回内服。小児では5mg/kg。
- 待機治療に用いる場合、成人量は初日4錠、2日目4錠、3日目2錠。小児は総量25mg/kg。
妊婦、0歳児には慎重投与。
体重 | 5~6kg | 7~14kg | 15~18kg | 19~35kg | 36kg~ |
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毎週の内服量 | 1/4錠 | 1/2錠 | 3/4錠 | 1錠 | 2錠 |
体重 | 5~6kg | 7~10kg | 11~14kg | 15~18kg | 19~24kg | 25~35kg | 36~50kg | 51kg~ |
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初日 | 0.5錠 | 0.5錠 | 1錠 | 1錠 | 1.5錠 | 2.5錠 | 3錠 | 4錠 |
2日目 | 0.25錠 | 0.5錠 | 1錠 | 1錠 | 1.5錠 | 2.5錠 | 3錠 | 4錠 |
3日目 | 0.25錠 | 0.5錠 | 0.5錠 | 1錠 | 1錠 | 1錠 | 2錠 | 2錠 |
安全性の高い薬剤ですが、以下のような副作用が知られています。 小児の手の届かないところに保管する、通算5年以上連用する場合には定期的に医師に相談するといった対策が必要です。
- 急性毒性 : 成人の致死量2~3g。小児は致死量が小さい。キニジン様作用が発現し、循環虚脱→心停止に至る。
- 慢性毒性 : 内服した薬剤の一部は組織に沈着する。1日250~400mg、2~4年連用すると網膜が変性し失明に至る。
以下、薬剤調査報告に記載されていたリン酸クロロキン製剤です。
地域 | 商品名 | メーカー | 含有量 | 価格 |
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インドネシア | RESOCHIN | Bayer | 250mg錠 | \766/200錠 |
シンガポール | ALVOCLOR | Zeneca | 250mg錠 | \2237/100錠 |
インド | MELUBRIN | Ranbaxy | 250mg錠 | \14/10錠 |
オマーン・UAE | MALAREX | Dumex | 250mg錠 | 不明 |
ケニア | MALARAQUINE | Stering Health | 250mg錠 | 不明 |
安価なこともあり、世界各地で入手可能です。
プログアニル proguanil
ピグアナイド系抗マラリア剤です。通常、クロロキンとの併用で予防内服に使用します
以下、塩酸プログアニル100mg錠を使用する場合の用量です。
- 予防内服に用いる場合、1回2錠, 1日1回内服。小児には3mg/kg。妊婦、0歳児には慎重投与。
- 待機治療には使えません。単独ではマラリア原虫を殺す効力が弱いからです。
体重 | 5~8kg | 9~16kg | 17~24kg | 25~35kg | 36~50kg | 50kg~ | 一日量 | 0.25錠 | 0.5錠 | 0.75錠 | 1錠 | 1.5錠 | 2錠 |
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以下、薬剤調査報告に記載されていたプログアニル製剤です。
地域 | 商品名 | メーカー | 含有量 | 価格 |
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シンガポール | PALUDRINE | Zeneca | 100mg錠 | \1201/1000錠 |
インド | LAVERAN | Unicure | 100mg錠 | 不明 |
オマーン、UAE | PALUDRINE | Zeneca | 100mg錠 | 不明 |
ケニア | PALUDRINE | Zeneca | 100mg錠 | 不明 |
クロロキンが週1回内服なのに対して、プログアニルは毎日内服です。
ドキシサイクリン doxycycline
わが国では、ビブラマイシン、ドキシサイクリンなどの商品名で流通しています。 国内では予防目的の処方は禁止されています。
以下、ドキシサイクリン100mg錠を使用する場合の用量です。
- 予防内服に用いる場合、1回100mg, 1日1回内服(夕食後)します。妊婦と8歳未満(体重25kg未満)の小児には使えません。8歳以上の小児には、1.5mg/kgで使用します。
- 治療には使えません。単独ではマラリア原虫を殺す効力が弱いからです。
体重 | ~25kg | 25~35kg | 36~50kg | 50kg~ | 一日量 | 使用不可 | 0.5錠 | 0.75錠 | 1錠 |
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これも毎日内服です。連用すると各種の副作用が問題になります。長くとも8週間以内にとどめて下さい。
ファンシダール fansidar
わが国でもマラリア患者の治療に使用されています(処方薬)。 国内では待機治療を目的とした処方はできません。
- 予防内服には使用しないで下さい。致死的な副作用(Stevens-Johnson症候群)が発生する場合があります。
- 待機治療に使用されます。ただし、反復して内服した場合、副作用が問題となる可能性があります。
- 治療には使用できます。サルファ剤 sulfonamides に対するアレルギーがなければ問題ありません。
体重 | 5~6kg | 7~10kg | 11~14kg | 15~18kg | 19~29kg | 30~39kg | 40~49kg | 50kg~ | 1回治療量 | 0.25錠 | 0.5錠 | 0.75錠 | 1錠 | 1.5錠 | 2錠 | 2.5錠 | 3錠 |
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アレルギー症状が出現したら、内服を中止し、早急に医師と相談して下さい。
参考文献: International Travel and Health, Vaccination Requirements and Health Advice, WHO
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