エボラウイルス病―コンゴ民主共和国(更新8)

Disease outbreak news:更新  2019年1月10日

WHOとパートナーは、最も複雑な状況の1つである現在進行中のエボラウイルス病(EVD)のアウトブレイクへの対応を続けています。以前のアウトブレイクの中心であったベニ(Beni)において、症例発生の減少が認められました。この事実は、本件が複雑な課題であったにも関わらず、対応がいかに効果的であったかということを強く示唆しています。
しかしながらベニおよびその他の地域において、治安の悪化による最近の対策活動の一時的混乱に伴って症例の検出が遅れることが予測されているため、傾向は慎重に解釈しなければなりません。しかし、WHOと各パートナーは、政府のリーダーシップのもと、各機関との協力を通じて、課題への対処とアウトブレイクの終結のために最大限の努力を続けます。
2019年1月8日現在で、総計628例のエボラウイルス病症例が認められており(580例の確定例と48例の高度疑い例)、うち383例で死亡が確認されています(全体の致死率:61%)。今までのところ222名が回復し、Ebola Treatment Centre (ETC)から退院し、また生存者の観察と支援のための専用のプログラムに参加しています。

直近の21日間(2018年12月19日から2019年1月8日)で、アウトブレイクが依然として活発な10の保健区域からエボラウイルス病症例が報告されています。保健区域ごとの症例数は、カトワ(Katwa)(18)、ビュトンボ(Butembo) (16)、オイチャ(Oicha)(13)、ベニ(Beni)(13)、カルングタ(Kalungata)(6)、マバラコ(Mabalako)(5)、コマンダ(Komanda)(3)、ムシエネネ(Musienene)(2)、キョンド(Kyondo)(1)、そしてNyankunde (1)です。全体的に見て、症例は北ギブ(North Kivu)州とイトゥリ(Ituri)州にある16の保健区域内に限局した、紛争地域において発生してきました(図1)。アウトブレイクの再燃や再流行の迅速な検出のため、すべての地域でサーベイランス活動が継続されています。

新症例発生数の傾向(図2)は、ベニなどにおける好ましい症例発生減少を含む、地理的に分散したこれらの地域間のアウトブレイクの継続を反映しています。苦労して得られた進歩も、封じ込めの努力を妨げる治安情勢の悪化が長く続くことによって未だに失われる可能性があります。

エボラウイルス病症例の確定例と高度疑い例の中で、61%(385/628)が女性で30%(189/628)が18歳未満の小児でした。これは多数の1歳未満(38)と1-4歳(58)の乳幼児を含んでいます。この女性と子供に偏った負担のリスクファクターを把握するための調査が進められるとともに、対策チームは、この集団グループを優先して、起こりうる全ての場所における感染のリスクを最小化すべく努力を続けています。
感染が起こった地域、コンゴ民主共和国のその他の地域、そして近隣諸国における全ての警報に関して監視と調査が継続されています。直近の報告の公表から、警報はコンゴ民主共和国の複数の地域、ウガンダ、南スーダン、ルワンダ、そしてブルンジからスウェーデンに戻った渡航者において認められています。これまでのところ、エボラウイルス病は流行地域の外における警報例では認められていません。コンゴ民主共和国において医療支援を行った後に米国に帰国した医師1名を含む、ウイルスに接触した可能性がある海外渡航者は厳密に追跡されます。全ていまだ無症候性です。

図1:コンゴ民主共和国北ギブ州およびイトゥリ州の保護区域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例、2019年1月8日時点のデータ(n=628)



図2:2019年1月8日時点までに発症した週ごとのエボラウイルス病の確定例と高度疑い例 (n=628)


*ここ数週間のデータは、症例の確定と報告の遅れ、継続中のデータクリーニングの遅れの影響を受けています。この期間中の傾向は慎重に解釈する必要があります。

公衆衛生上の取り組み

MoH(保健省)はWHO及びパートナーの支援を得て、対応策の強化を継続しています。優先事項は、対応の調整、サーベイランス、接触者追跡、検査室のキャパシティ、感染予防と管理(IPC)、患者の臨床管理、ワクチン接種、リスクコミュニケーションと地域社会の関与、心理社会的支援、安全で尊厳のある埋葬(SDB)、近隣の州や国々における国境を越えたサーベイランスと準備活動です。

WHOとパートナーによる公衆衛生上の取り組みに関する詳細情報については、WHOアフリカ地域事務局によって公表されている最新の状況報告書をご参照ください。

Ebola situation reports: Democratic Republic of the Congo
  エボラ状況報告書:コンゴ民主共和国

WHOのリスク評価

WHOはこのアウトブレイクのリスク評価を再考し、国家・地域レベルで非常に高く、世界的には低いリスク状態が続いているとみています。今回のエボラウイルス病のアウトブレイクは、ウガンダ、ルワンダ、そして南スーダンに接するコンゴ民主共和国の北東部の地域に影響を与えています。アウトブレイクが影響している地域とコンゴ民主共和国の他の地域および近隣の国々との間における広範囲な人の往来、また治安の悪化による、国家・地域レベルでのエボラウイルス病伝播の潜在的リスクがあります。同国は同時にその他の伝染病(例えばコレラ、ワクチン由来ポリオウイルス感染症、マラリア)と長期に渡る人道的危機を経験しています。
さらに、ときには北ギブ州とイトゥリ州における治安情勢により、対策活動の実施が制限されます。

国家単位や地域単位での拡大のリスクは非常に高いため、近隣の地域や国々に対してサーベイランスと準備活動を強化することは重要です。国際保健規則(IHR2005)の緊急委員会は、これらの備えやサーベイランスの活動を強化しなければ状況は悪化することに繋がり、さらなる拡大を招くことが予測されると勧告しました。WHOは継続して近隣諸国やパートナーとともに、保健当局が警戒し、対応の準備が整っている状態を確かなものにするために活動していく予定です。

WHOからのアドバイス

国際交通
WHOは現在入手可能な情報に基づき、コンゴ民主共和国への渡航や貿易のいかなる制限をも行わないよう勧告します。現在のところ、エボラウイルスから人々を守るワクチンは認可されていません。したがって、国境を越えた移動や、コンゴ民主共和国を離れる乗客に対するビザ発給の制限の基準としてエボラワクチンの接種証明書を要求することは合理的ではありません。WHOは厳重な監視を継続し、必要であれば今回の出来事に関連した渡航と貿易の措置を検証します。現在のところ、コンゴ民主共和国への、そして同国からの国際輸送を著しく妨げる渡航の措置を実施した国はありません。渡航者は渡航の前に医師の助言を受け、良好な衛生状態を守るべきです。

更なる情報は、以下をご参照ください。

WHO Director-General concludes New Year visit to Ebola-affected areas in the Democratic Republic of the Congo
Women join hands to oust Ebola from the Democratic Republic of the Congo
Summary report for the SAGE meeting of October 2018
Statement on the October 2018 meeting of the IHR Emergency Committee on the Ebola virus disease outbreak in the Democratic Republic of the Congo
WHO Interim recommendation Ebola vaccines
WHO recommendations for international travellers related to the Ebola Virus Disease outbreak in the Democratic Republic of the Congo
Ebola virus disease in the Democratic Republic of the Congo – Operational readiness and preparedness in neighbouring countries
Ebola virus disease fact sheet
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脚注1
ここ数週間のデータは、症例の確定と報告の遅れ、継続中のデータクリーニングの遅れの影響を受けています。この期間中の傾向は慎重に解釈する必要があります。

翻訳

出典

Ebola virus disease- Democratic Republic of the Congo
Disease outbreak news: Update   10 January 2019
https://www.who.int/csr/don/10-january-2019-ebola-drc/en/