デング熱-ジャマイカ

Disease outbreak news 2019年2月4日

2019年1月3日、ジャマイカの国際保健規則(IHR)担当官(National Focal Point)は、ジャマイカにおけるデング熱症例が増加していることをWHOに通知しました。

2019年1月1日から21日までの間に、6人の死亡を含む、 339人の疑い例と確定例が報告されました(図1)。2018年には、13人の死亡を含む、総計986人のデング熱の疑い例と確定例が報告されています。これは2017年の報告症例数の4.5倍にのぼります(6人の死亡を含む215例)。2019年のこれまでの報告症例数は、流行閾値epidemic thresholdを上回っています(図2)。

過去のデータによると、ジャマイカは2016年に大規模なアウトブレイクで、2人の死亡を含む2,297人のデング熱感染を報告しています。当時流行していたのはデングウイルス3型(DENV3)と4型(DENV4)でした。

2018年末までの症例の大多数はキングストン教区とセント・アンドリュー教区(Kingston and Saint Andrew parishes)から報告されています。2019年は、これまでのところセント・キャサリン教区からの症例報告が最も多くを占めています。

臨床検査では、現在流行しているデング熱の血清型として3型(DENV3)が同定されました。

2019年1月には、グアドループ(Guadeloupe)、マルティニーク(Martinique)、そしてセント・マーチン(Saint Martin)などのカリブ海地域の国々・領土でデング熱症例の増加が報告されました。注目すべき点は、セント・マーチンとグアドループでは1型(DENV1)が現在流行していることです。

図1:ジャマイカにおける2018年1月1日から2019年1月21日までの発症週毎のデング熱症例数と死亡者数


出典:ジャマイカ保健省発行、PAHO(全米保健機構)/WHOにより複製
※疑い例/推定例/確定例の累積=1,325

図2:2018年、2019年ジャマイカにおけるデング熱の疑い例/推定例/確定例の月ごとの症例数・平均と流行閾値の比較



出典:ジャマイカ保健省発行、PAHO/WHOにより複製

公衆衛生上の取り組み

• ジャマイカ保健省(MoH)は2019年1月3日にデング熱のアウトブレイクを公表しました。
• ジャマイカの保健当局は次の対策を実施しています:ベクターコントロールの強化と統合、症例サーベイランスの強化、ソーシャルモビライゼーション(様々な関係者間での連携推進)、臨床的管理、検査診断キャパシティの強化、及び緊急事態下のリスクコミュニケーション。
• ジャマイカ保健省(MoH)は対策の強化と調整のため、全米保健機構(PAHO/WHO)やその他の国際機関と協力しています。
• ベクターコントロールの強化は2018年7月から行ってきました。
• 2018年12月27日には緊急対策本部(Emergency Operations Centre)を立ち上げ、活動の調整と報告を促進すべく、2019年1月3日から本格始動させました。対策活動は、対応能力を強化するために適切な人材の拡充、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)をジャマイカ島全土において減少させる昆虫学的取り組みの支援、臨床的管理のキャパシティ強化に向けられています。

WHOのリスク評価

ジャマイカは1990年よりデング熱症例を報告してきました。2018年は年間を通して、報告してきました。しかしながら、2018年12月からは流行閾値を上回る症例数の増加が認められています。同様の大規模な増加は2010年(2,887人)、2012年(4,670人)、2016年(2,297人)に報告されています。カリブ海諸島におけるデング熱の増加は、より重症なデングウイルスの再感染に繋がる可能性があり、包括的なリスクコミュニケーションが必要とされています。

WHOからのアドバイス

2018年11月21日、全米保健機構(PAHO/WHO)は南北アメリカ大陸の国々や領土におけるデング熱症例の増加について加盟国に注意を喚起し、感染拡大と死者の増加を防ぐ対策の優先順位付けを含む、保健セクター内外の活動調整を推奨しました。

全米保健機構(PAHO/WHO)はさらに、2018年11月21日に発行された「全米保健機構(PAHO/WHO)デング熱最新疫学情報(PAHO/WHO Epidemiological Update on Dengue)」に則って、アウトブレイクへの準備と対応、症例管理、検査機能、総合的ベクター管理に関する主要な推奨事項を順守するよう助言しました。同文書は下記リンクから参照できます。

PAHO Epidemiological Alert: Dengue (21 November 2018)
https://www.paho.org/hq/index.php?option=com_docman&view=download&category_slug=dengue-2217&alias=47044-21-november-2018-dengue-epidemiological-alert&Itemid=270&lang=en

デングウイルスによる疾患に特異的な治療法はありません。したがって、予防こそがデング熱の感染リスクを減らす最も重要な手段です。WHOは適切で時機を得たデング熱症例の管理を推奨しています。感染が確認された全ての地域と国家においてサーベイランスは継続して強化されるべきです。人々の間でデングウイルスが伝播するリスクを減少させるべく、主要な公衆衛生学的情報は継続して共有されるべきです。

加えて、潜在的な蚊の繁殖の場をなくし、ベクターそのものの数を減らし、人々のウイルスへの曝露を減らすべく、総合的なベクター管理(IVM)が強化されるべきです。IVMには、幼虫と成虫両方におけるベクターコントロール計画(環境管理、発生源の削減、化学的制御策など)が、個人と家庭を保護する計画と同様に含まれるべきです。屋内での蚊刺がある場合は、家庭用エアロゾル殺虫剤、蚊取り線香、その他の噴霧式殺虫剤によって蚊刺が減らせる可能性があります。窓やドアの間仕切りや空調設備といった家屋の構造もまた、蚊刺を減少させることができます。ヤブカ属(Aedes mosquitoes)(主要な媒介生物)は日中に刺す蚊であり、日中に肌の露出をできるだけ減らす衣服を使用するなどの個人防護策が推奨されています。防虫剤は直接、肌に対して、もしくは衣服に対して使用できます。防虫剤の使用の際には、標識の指示を厳重に守らなければなりません。殺虫剤処理をした蚊帳は、夜間の蚊刺を予防するだけでなく、日中眠る人(例えば幼児、寝たきりの人、そして夜勤の労働者)も同様に保護します。

WHOは現在入手可能な情報に基づき、一般的な渡航や貿易に対する制限を推奨しません。
 

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