エボラウイルス病 - コンゴ民主共和国(更新20)

Disease outbreak news:更新   2019年5月2日

公衆衛生上の取り組みを運用する上での環境はますます不安定になり、社会政治的に複雑になっています。社会不安は、影響を受けた地域社会におけるタイムリーな対応介入を確実に行うための大きな障害となっています。 ビュトンボ(Butembo)とカトワ(Katwa)におけるエボラウイルス病(EVD)への対応活動は依然として限定されたままでした。しかし、この状況は治安対策の包括的な強化と地域社会の取り組みの努力を受けて徐々に回復しています。にもかかわらず、全体的な治安状況は不安定なままです。今週は重大な負傷や損傷は報告されていませんが、マンディマ(Mandima)、マセレカ(Masereka)、カルングタ(Kalunguta)およびヴホヴィ(Vuhovi)の一部での現場へのアクセスおよび活動は、武装集団の存在およびその他の治安上の懸念のために変則的なままです。今後数週間にわたってこれらのホットスポット地域での治安上の事件と相まって、新しいエボラウイルス病の症例が増え続けると予想され、対応チームと彼らの安全な移動を確保するたに現存している治安要員に対して大きな負担をかけています。

今週のコンゴ民主共和国におけるエボラウイルス病症例の発生率は、予想外ではないですが、前の週と比較してかなりの増加を見ました。このことは、対応活動の混乱の後に新たな症例数が急増した以前の事例と一致しています。 カトワ、ビュトンボ、マンディマのホットスポット地域では、最も強力な感染伝播が続いています(図1および表1)。さらに、マバラコ(Mabalako)やミュジャンエーヌ(Musienene)のような以前にアウトブレイクが起きた保健区域で、顕著な再発事象が報告されており、その後、新たな保健地域に波及するような局所的な増幅と拡大が続いています。 2019年4月10日から30日までの21日間で、15の保健区域内の70の保健地域で新しい症例が報告されました。 157の保健地域の45%が今日までにエボラウイルス病の被害を受けています(表1と図2)。この期間中に合計292人の確定症例が報告され、その大部分はカトワ(47%、n = 137)、ビュトンボ(13%、n = 38)、マンディマ(11%、n = 32)、マバラコ(7%、n = 20)、およびミュジャンエーヌ(6%、n = 17)の保健区域からのものです。

4月30日の時点で、合計1,495人のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例が報告されており、そのうち984人が死亡しました(致死率66%)。性別と年齢が記録された全症例のうち、56%(830人)が女性、28%(422人)が18歳未満の子供でした。り患した医療従事者の数は92人に増加しました(全症例の6%)。今日までに、エボラ治療センター(ETCs)で治療を受けた合計415人のエボラウイルス病患者が退院しました。

4月27日から30日にかけて、国際保健機関(WHO)事務局長のTedros Adhanom GhebreyesusとWHOアフリカ地域局長のDr. Matshidiso Moetiが、現在の対応活動をレビューし、現在活動している対応要員の支援を強化するためにビュトンボを訪問しました。訪問中、Tedros博士とMoeti博士は、WHOとパートナー組織のスタッフに感謝の意を表明し、支援を示すためにビュトンボを訪問し、同時にセキュリティとエボラ対応の取り組みを強化するために必要な次のステップについても評価を行いました。彼らはまた、地元の政治、ビジネス、そして宗教上の指導者達と会い、彼らに周囲の環境の安定化を推進するための努力を加速させるよう求めました。今回の訪問では、Tedros博士とMoeti博士が現在の状況に対する懸念を改めて表明し、資金ギャップを埋めることによってアウトブレイクを封じ込めるための支援を強化するよう、国際社会へのアピールを繰り返しました。

2019年5月5日のWHO世界手指衛生デーの開始により、リスクコミュニケーションとコミュニティエンゲージメント(RCCE)および感染予防と管理(IPC)チームが感染予防と管理のキャンペーンの開始に向けて協力しています。このキャンペーンの最初の焦点は、注射剤の安全性を高めることです。これは、エボラウイルス病の感染リスクを減らす手段として、注射剤よりも経口薬の使用を増やすこと、および医療施設での針の安全な使用と取り扱いを促進することを目的とした取り組みです。また、RCCEチームは他のWHOパートナーと密接に協力して、今後数週間のうちにアウトブレイク対応のすべての柱からアウトブレイクの被害を受けている地域社会への重要なメッセージを宣伝するための新しいマスコミキャンペーンを実施します。

地域社会がエボラウイルス病対応に積極的に取り組むことを可能にする継続的な努力の一環として、地域住民との多くの対話から受けた要請は、アウトブレイク対応のオーナーシップの一部を地域社会に移転することを支援するために検討されています。最近の対話は、消極性や不信に関するコミュニティ関連の事件に対処することに焦点を当てています。この取り組みから得られた著しい成功には、以前は抵抗していた接触者が対応活動への再参加を目指すことや、エボラウイルス病対応チームとの一層の協力を促進するために地域社会での影響力を活用して支援する誓約が含まれます。

図1:2019年4月30日時点の保健区域別エボラウイルス病症例の週ごとの確定例および高度疑い例のデータ*


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* ここ数週間のデータでは、症例の確定と報告の遅れ、継続的中のデータクリーニングの遅れの影響を受けています。他の保健区域(other health zone)は、ビエナ(Biena)、ブニア(Bunia)、カルングタ、カイナ(Kayna,)、コマンダ(Komanda)、キョンド(Kyondo)、ルベロ(Lubero)、マングルジーパ (Mangrujipa)、マセレカ、ミュジャンエーヌ、ムトワンガ(Mutowanga)、ニャンクンデ(Nyankunde)、オイチャ(Oicha)、ルワンパラ(Rwampara)、チョミア(Tchomia)です。

図2:2019年4月30日時点でのコンゴ民主共和国北キブ州およびイトゥリ州の保健地域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例


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表1:2019年4月30日時点のコンゴ民主共和国北キブ州およびイトゥリ州における保健区域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例、および影響を受けた保健地域の数**


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**過去21日間に発生した症例と地域の合計は、最初の症例警報の日付に基づいており、確定日および保健省による毎日の報告とは異なる場合があります。

公衆衛生上の取り組み

保健省、WHO、およびパートナーによる公衆衛生上の取り組み活動に関する詳細情報については、WHOアフリカ地域事務局によって公表された最新の状況報告書を参照してください。
エボラ状況報告書:コンゴ民主共和国
 

WHOによるリスク評価

WHOは、疫学的状況の変化とアウトブレイクの状況を継続的に監視して、対応への支援が進展する状況に適応することを確実にします。直近の評価では、国内および地域のリスクレベルは非常に高いままで、国際的なリスクレベルは低いままであると結論付けられました。 2019年2月下旬以降、毎週新しい患者の増加が続いています。全般的な治安状況の悪化と、政治的緊張と治安不穏によって悪化した地域社会の不信に基づく躊躇や拒絶、そして抵抗を示す孤立地帯(ポケット)が存続しています。アウトブレイクの影響を受けている地域において繰り返される一時停止と症例調査および対応活動の遅延により、介入の全体的な有効性が低下します。しかし、最近の地域社会との対話、アウトリーチ構想、および特定のホットスポットエリアへのアクセスの回復により、地域社会による対応活動および症例調査の取り組みに対する受け入れが改善されました。確定症例のうち報告される地域社会の中で死亡する症例の割合、サーベイランス下で接触者が知られている新規症例の割合が比較的低いこと、院内感染に関連する感染伝播連鎖の存在、症例発見とエボラ治療センターにおける隔離の持続的遅延、ならびに高度疑い例に対する適時報告と対応における困難さは、アウトブレイクの影響を受ける地域社会でのさらなる感染連鎖の可能性を高め、コンゴ民主共和国内および近隣諸国へのエボラウイルス病の地理的拡大のリスクを高めるすべての要因となります。アウトブレイクの影響を受けている地域から、コンゴ民主共和国の他の地域へ、そして不安の高まりの間に穴だらけの国境を越えて近隣諸国へと人口移動が頻繁に起こることで、これらのリスクはさらに高まります。現在のアウトブレイクの長期的な発生、対応スタッフの疲労、および限られた資源に対する継続的な負担によって、新たなリスクが生じます。反対に、近隣諸国での実質的な即応体制の整備および準備活動は、症例を迅速に検出して地域への蔓延を軽減する能力を高めている可能性があります。しかし現時点ではこれらの取り組みは拡大し続ける必要があります。

WHOからのアドバイス

WHOは現在入手可能な情報に基づき、コンゴ民主共和国への渡航や貿易に対していかなる制限も行わないよう勧告します。現在のところ、エボラウイルスから人々を守るワクチンは認可されていません。したがって、国境を越えた移動や、コンゴ民主共和国を離れる乗客に対してビザ発給の制限の基準として、エボラワクチンの接種証明書を要求することは合理的ではありません。WHOは厳重な監視を継続し、必要であれば今回の事象に関連した渡航と貿易の措置を検証します。現在、コンゴ民主共和国との間の国際交通を著しく妨害するような渡航対策を実施している国はありません。渡航者は渡航前に医師の診察を受けるべきであり、良い衛生慣習を実践すべきです。

出典

Ebola virus disease ―Democratic Republic of the Congo
Disease outbreak news: Update   2 May 2019
https://www.who.int/csr/don/02-may-2019-ebola-drc/en/