エボラウイルス病 ー コンゴ民主共和国(更新26)

Disease outbreak news:更新  2019年6月13日

コンゴ民主共和国(DRC)でのエボラウイルス病(EVD)のアウトブレイクは、カトワ(Katwa)、ベニ(Beni)、カルングタ(Kalunguta)保健区域などのホットスポットで新たな症例数が減少し続けていることを示しています。しかし、マバラコ(Mabalako)やビュトンボ(Butembo)などの他の地域では、中程度の感染率が続いています。 北キブ(North Kivu)州およびイトゥリ(Ituri)州の12の保健区域の地域社会内で進行中のエボラウイルス病の伝播により、症例発見の持続的な遅れ、症例の約3分の1がエボラ治療センターまたはトランジットセンター外で死亡、人口移動が多いなどの要因がコンゴ民主共和国内および近隣諸国への地理的拡散の高いリスクを示しています。このことはウガンダへの最近の症例の輸出によって強調されました-この症例は10カ月以上前のアウトブレイクの発生以来北キブ州とイトゥリ州の外で検出され確定された最初の症例になります。詳細については、ウガンダのエボラウイルス病に関する疾病アウトブレイクニュースを参照してください。

新しい症例の週毎の発生率の減少がいくつかの保健区域で報告されています。しかし、他ではアウトブレイクの増加または継続が観察されています(図1)。 2019年5月22日から6月11日までの21日間で、12の保健区域のうち62の保健地域が新たな症例を報告し、北キブ州およびイトゥリ州の664の保健地域の9%を占めています(図2)。この期間中、合計212人の確定症例が報告され、その大部分はマバラコ((33%、n = 69)、ビュトンボ(18%、n = 39)、カトワ(14%、n = 30)、マンディマ(11%、n = 23)およびベニ(9%、n = 20)の健康区域のものです。前回の報告例から長期間経って、先週ルワンパラ(Rwampara)とコマンダ(Komanda)保健区域からも確定例が1例ずつ報告されましたが、双方とも前述のホットスポットで感染した症例です。

2019年6月11日の時点で、1990人の確定症例と94人の高度疑い症例を含む合計2084人のエボラウイルス病の症例が報告されました。確定症例1311人の死亡を含む合計1405人の死亡が報告されました(全体の症例致死率67%)。年齢と性別がわかっている2084人の確定及び高度疑い例のうち、57%(1194)が女性、29%(605)が18歳未満の子供でした。医療従事者の間で症例数は増え続け、そのうち累積感染者数は118人に増えました(全症例の6%)。
これらの最近の出来事を考慮に入れて、WHO事務局長は2019年6月14日に国際保健規則(IHR)の下で緊急委員会を召集します。独立した公衆衛生の専門家グループが、この事象が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を構成するかどうか、彼らの見解を国際保健機関(WHO)の事務局長に提供します。この事象がPHEICを構成すると決定された場合、事務局長は一時的勧告を発します。これは通常、エボラの国際的な広がりを減らし、国際的な交通との不要な干渉を避けることを目的とした保健対策です。会議とその結論を説明する声明は、会議の直後にWHOのウェブサイトに掲載されます。

図1:2019年6月11日時点の保健区域別エボラウイルス病症例の発症週ごとの確定例および高度疑い例のデータ*


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*ここ数週間のデータは、症例の確認と報告、および継続的なデータのクリーニングが遅れることがあります。その他の保健区域には、アリムボンゴ(Alimbongo)、ビエナ(Biena)、ブニア(Bunia)、カルングタ、カイナ(Kayna)、コマンダ、キョンド(Kyondo)、ルベロ(Lubero)、マングルジパ(Mangurujipa)、マセレカ(Masereka)、ムトワンガ(Mutwanga)、ニャンクンデ(Nyankunde)、オイチャ(Oicha)、ルワンパラ(Rwampara)、およびチョミア(Tchomia)が含まれます。

図2:2019年6月11日時点でのコンゴ民主共和国北キブ州およびイトゥリ州の保健地域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例


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表1:2019年6月11日時点のコンゴ民主共和国北キブ州およびイトゥリ州における保健区域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例、および被害を受けた保健地域の数**

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**過去21日間に発生した症例と被災した地域の合計は、最初の症例警報の日付に基づいており、確定日および保健省による毎日の報告とは異なる場合があります。

公衆衛生上の取り組み

保健省、WHO、およびパートナーによる公衆衛生上の取り組み活動に関する詳細については、WHOアフリカ地域事務所が発表した最新の状況報告を参照してください。
エボラ状況報告書:コンゴ民主共和国

WHOによるリスク評価

WHOは、疫学的状況の変化とアウトブレイクの状況を継続的に監視して、対応への支援が進展する状況に適応していることを確実なものにします。直近の評価では、国内および地域のリスクレベルは非常に高いままで、国際的なリスクレベルは低いままであると結論付けられました。 2019年2月から5月中旬にかけて、毎週新しい患者の増加が続いています。全般的な治安状況の悪化と、特に過去4週間にわたる政治的緊張と治安不穏によって悪化した地域社会の不信に基づく躊躇や拒絶、そして抵抗を示す孤立地帯(ポケット)が存続しています。アウトブレイクの影響を受けている地域において繰り返される一時停止と症例調査および対応活動の遅延により、介入の全体的な有効性が低下しています。しかし、最近の地域社会との対話、アウトリーチ構想、および特定のホットスポットエリアへのアクセスの回復により、地域社会による対応活動および症例調査の取り組みに対する受け入れが改善されました。スタッフの安全と治安を確保するために治安の緩和策が強化されており、手続き上、運用上および物理的な治安上の課題が解決されています。確定症例のうち報告される地域社会の中で死亡する症例の高い割合、サーベイランス下で接触者が知られている新規症例の割合が比較的低いこと、院内感染に関連する感染伝播連鎖の存在、症例発見とエボラ治療センターにおける隔離の持続的遅延、ならびに高度疑い例に対する適時報告と対応における困難さは、アウトブレイクの影響を受ける地域社会でのさらなる感染連鎖の可能性を高め、コンゴ民主共和国内および近隣諸国へのエボラウイルス病の地理的拡大のリスクを高めるすべての要因となります。アウトブレイクの影響を受けている地域から、コンゴ民主共和国の他の地域へ、そして不安の高まりの間に穴だらけの国境を越えて近隣諸国へと人口移動が頻繁に起こることで、これらのリスクはさらに高まります。現在のアウトブレイクの長期的な発生、対応スタッフの疲労、および限られた資源に対する継続的な負担によって、新たなリスクが生じます。反対に、優先医療施設での医療従事者や現場作業員の予防接種を含む、近隣諸国での実質的な即応体制の整備および準備活動は、症例を迅速に検出して地域への蔓延を軽減する能力を高めている可能性が高いです。現時点でこれらの努力を拡大し続ける必要があります。

WHOによるアドバイス

WHOは現在入手可能な情報に基づき、コンゴ民主共和国への渡航や貿易に対していかなる制限も行わないよう勧告します。現在のところ、エボラウイルスから人々を守るワクチンは認可されていません。したがって、国境を越えた移動や、影響を受けた国への/国からの渡航者に対してビザ発給の制限の基準として、エボラワクチンの接種証明書を要求することは合理的ではありません。WHOは厳重な監視を継続し、必要であれば今回の事象に関連した渡航と貿易の措置を検証します。現在、コンゴ民主共和国との間の国際交通を著しく妨害するような渡航対策を実施している国はありません。渡航者は渡航前に医師の診察を受けるべきであり、良い衛生慣習を実践すべきです。

出典

Ebola virus disease ー Democratic Republic of the Congo
Disease outbreak news: Update  13 June 2019
https://www.who.int/csr/don/13-june-2019-ebola-drc/en/