エボラウイルス病-コンゴ民主共和国(更新30)

Disease outbreak news:更新  2019年7月11日

ここ1週間のコンゴ民主共和国の北キブ州(North Kivu)とイトゥリ州(Ituri)におけるエボラウイルス病のアウトブレイクは、先週と同程度の流行強度で継続しています。新規症例数は、ビュトンボ(Butembo)、カトワ(Katwa)、マンディマ(Mandima)保健区域といった以前のホットスポットでは減少傾向が続いている一方で、ベニ(Beni)での増加、マバラコ(Mabalako)保健区域の一部での著名な増加を認めています。これらのホットスポットにおける再燃に加えて、他の保健区域への多数の確定例と高度疑い例を含む大きな人口移動が発生しています。移動はベニ保健区域から最も多く起こっています。このような事象はアウトブレイクを新たな保健区域へと拡大させ、すでに感染制御を達成した保健区域でアウトブレイクを再燃させます。一連の出来事は、接触者の名簿登録とフォローアップのための堅固な仕組みの構築、人々が移動を決意する動機を理解することの重要性を示しています。

アリワラ(Ariwara)保健区域では、6月30日に最初の症例が報告された後、新規症例は認められていません。同区域に配置された対応チームは接触者の特定、コミュニティの協力要請、リスク下にある人々への予防接種を継続しています。隣接国であるウガンダと南スーダンからの対応要員は、準備活動の実施支援を継続しています。同地域におけるウガンダ共和国とコンゴ民主共和国の境界の監視のために必要な物資が送られています。

2019年6月19日から7月9日までの21日間で、22の保健区域のうち72の保健地域が新規症例を報告し、北キブ州とイトゥリ州内の664の保健地域のうち11%を占めています(図2)。この期間中、合計247人の確定例が報告され、その内の大部分はベニ(41%, n=101)、マバラコ(19%, n=48)、ルベロ(Lubero)(6%, n=16)、マンディマ(Mandima)(5%, n=13)の保健区域のものです。2019年7月9日の時点で、2343人の確定例と94人の高度疑い例を含む2437人のエボラウイルス病症例が報告されました(表1)。確定例1552人の死亡を含む合計1646人の死亡が報告されました(全体の症例致死率68%)。年齢と性別が分かっている2437人の確定例と高度疑い例のうち、57%(1384人)が女性、29%(704人)が18歳未満の小児でした。

医療従事者間での症例数は増え続けていて、累積感染者数は132人に達しました(全症例の5%)。情報が利用可能な128人の医療従事者のうち、ヘルスポスト(20%, n = 26)、民間の医療施設(35%, n = 45)の医療従事者の割合が最も高くなっていました。医療従事者の感染の大部分(68%, n = 87)は看護師でした。

ウガンダ共和国では、2019年6月13日に公表された先日のエボラウイルス病についてのDisease Outbreak News以降、新規症例、死亡は報告されていません。7月3日の時点で症例に曝露した108人の接触者が確認され、接触者の全てが21日間のフォローアップを完遂しましたが、全ての接触者が無症候性でした。ウガンダ北西部に位置しており、ウガンダ共和国とコンゴ民主共和国の国境近くのアルア(Arua)地区は現在、ウガンダの国境から8kmに位置しており、コンゴ民主共和国に隣接するアリワラ(Ariwara)保健区域で2019年6月30日に死亡した症例に続くエボラ症例の侵入を防止するための対応準備を進めています。この症例は200人以上の接触者がいることが知られていて、その中の一部はアルア地区に隣接したコミュニティのものです。2019年7月9日の時点で、アルア地区において2人の疑い例が報告され、ともに検査陰性でした。2019年7月9日の時点で、アルア地区における予防接種を受けた累積人数は、対象とされている現場作業員と医療従事者1092人のうち811人です。

図1:2019年7月9日時点の保健区域別エボラウイルス病の発症週ごとの確定例及び高度疑い例のデータ*

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*ここ数週間のデータは、症例の確認と報告、継続的なデータクリーニングが遅れることがあります。その他の保健区域には、アリムボンゴ(Alimbongo)、アリワラ、ビエナ(Biena)、ブニア(Bunia)、カルングタ(Kalunguta)、カイナ(Kayna)、コマンダ(Komanda)、キョンド(Kyondo)、ルベロ、マングルジパ(Mangurujipa)、マセレカ(Masereka)、ムトワンガ(Mutwanga)、ニャンクンデ(Nyankunde)、オイチャ(Oicha)、ルワンパラ(Rwampara)、チョミア(Tchomia)が含まれます。

図2:2019年7月9日時点の保健区域別エボラウイルス病の発症週ごとの確定例及び高度疑い例のデータ*


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表1:2019年7月9日時点のコンゴ民主共和国北キブ州及びイトゥリ州における保健区域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例、被害を受けた保健地域の数**


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**過去21日に発生した症例と被災した地域は最初の症例警報の日付に基づいており、確定日及び保健省による毎日の報告とは異なる場合があります。

公衆衛生上の取り組み

保健省、WHO、パートナーによる公衆衛生上の取り組みに関する詳細については、WHOアフリカ地域事務局が発表した最新の状況報告をご覧ください。

Ebola situation reports: Democratic Republic of the Congo
エボラ状況報告書:コンゴ民主共和国

 

WHOによるリスク評価

WHOは、疫学的状況の変化とアウトブレイクの状況を継続的に監視して、対応への支援が進展する状況に対しての適応化を確実なものにします。直近の評価では、国内および地域のリスクレベルは非常に高いままで、国際的なリスクレベルは低いままであると結論付けられました。2019年2月から5月中旬にかけて、週ごとに新規患者の増加が見られ、それ以降は減少しながらも依然としてかなりの割合で発生しています。この1週間の治安状況は比較的落ち着いていましたが、ビュトンボとカルングタ間の検問所が攻撃され、その日一時的に対応活動が中断された、という報告が一度ありました。現地の治安維持部隊は事態の収拾作業を実施し、その後対応活動が再開されました。この間、コミュニティの非協力による孤立地帯(ポケット)が認められました。しかし、最近の地域社会との対話、アウトリーチ構想、及び特定のホットスポットエリアへのアクセスの回復により、地域社会による対応活動及び症例調査の取り組みに対する受容が改善されました。スタッフの安全、治安、活動の継続を確保するために、作業をする地域は厳重な監視と評価を継続していて、治安の緩和策がとられています。確定症例の中から報告された地域社会の中での死亡症例の高い割合、サーベイランス下で接触者が知られている新規症例の割合が比較的低いこと、院内感染に関連する感染伝播連鎖の存在、症例発見とエボラ治療センターにおける隔離の持続的遅延、ならびに高度疑い例に対する適時報告と対応における困難さは、アウトブレイクの影響を受ける地域社会でのさらなる感染連鎖の可能性を高め、コンゴ民主共和国内および近隣諸国へのエボラウイルス病の地理的拡大のリスクを高めるすべての要因となります。アウトブレイクの影響下にある地域から、コンゴ民主共和国のその他の地域へ、また不安が高まる期間に穴だらけの国境を越えて近隣諸国へと人口移動が頻繁に起こることで、これらのリスクは高まります。現在のアウトブレイクの長期化、対応スタッフの疲労、および限られた資源に対する継続的な負担によって、新たなリスクが生じます。反対に、近隣諸国での実質的な即応体制の整備および準備活動は、症例を迅速に検出して地域への蔓延を軽減する能力を高めている可能性が高いです。現時点でこれらの努力を拡大し続ける必要があります。

WHOによるアドバイス

WHOは現在入手可能な情報に基づき、コンゴ民主共和国への渡航や貿易に対していかなる制限も行わないよう勧告します。現在のところ、エボラウイルスから人々を守るワクチンは認可されていません。したがって、国境を越えた移動や、影響を受けた国への/国からの渡航者に対してビザ発給の制限の基準として、エボラワクチンの接種証明書を要求することは合理的ではありません。WHOは厳重な監視を継続し、必要であれば今回の事象に関連した渡航と貿易の措置を検証します。現在、コンゴ民主共和国との間の国際交通を著しく妨害するような渡航対策を実施している国はありません。渡航者は渡航前に医師の診察を受けるべきであり、良い衛生慣習を実践すべきです。

さらなる情報はこちらをご覧ください。 Ebola virus disease fact sheet
 

出典

Ebola virus disease – Democratic Republic of the Congo
Disease Outbreak News: 11 July 2019
https://www.who.int/csr/don/11-july-2019-ebola-drc/en/

翻訳

WHO健康開発総合研究センター
https://extranet.who.int/kobe_centre/ja