エボラウイルス病-コンゴ民主共和国(更新37)

Disease outbreak news:更新  2019年8月29日

コンゴ民主共和国の北キブ州(Kivu)、南キブ州、イトゥリ州(Ituri)でのエボラウイルス病のアウトブレイクは、過去6週間と同程度の感染強度で今週も続いていて、この期間の平均は週に77例でした(図1)。2019年8月7日から8月27日の過去21日間に18の保健区域のうち66の保健地域が新規症例を報告しました(表1、図2)。同期間中に、合計203人の確定例が報告され、その大部分はベニ(Beni)(28%, n=57)、マンディマ(Mandima)(11%, n=22)、カルングタ(Kalunguta)(11%, n=22)の各保健区域のものでした。さらにマンバサ(Mambasa)では、過去21日間に16症例が報告されていて、新たなホットスポットの出現の徴候が続いています。対応としては、早期発見を通して、また調査・強化した接触者の確認とフォローアップ・現地のコミュニティの関与を通して、これらのホットスポットへの取り組みが継続されています。

南キブのムウェンガ(Mwenga)保健区域より2人の新規症例が報告され、8月15日以降の合計は6症例になりました。これらの人々はある最近の一人の症例の家族です。これはムウェンガ内の2つの世代に及ぶ局地的な感染伝播を示唆していますが、新規症例はサーベイランス下の人々であり、また悪化する前に迅速に治療を受けることができました。

8月22日に、ゴマ市(Goma)の郊外を含むニーラゴンゴ保健区域(Nyiragongo)は、新規確定例の検出がないまま21日間が経過し、全ての接触者は21日間のフォローアップ期間を完遂しました。ウイルスの伝播が活発な地域からのエボラウイルス病のさらなる導入のリスクは依然として高いため、ゴマ市内と周辺地域でのサーベイランスと対応活動は継続する予定です。

8月27日の時点で、2892人の確定例と105人の高度疑い例を含む、合計2997人のエボラウイルス病症例が報告されています。そのうち1998例は死亡しています(全体の症例致死率67%)。確定例と高度疑い例全体の内、58%(1740人)が女性、28%(842人)が18歳未満の小児でした。現在までに156人の医療従事者が感染しています。

コンゴ民主共和国でのエボラウイルス病のアウトブレイクを制御するための戦略的対応計画4の第1の柱がWHOのウェブサイトで確認できます。第1の柱はアウトブレイクへの中心的な公衆衛生上の対応を網羅しています。現在推定されている、2019年7月から12月までの期間に全てのパートナーに対して必要な資金は、WHOに対する1億2000万USドルから1億4000万USドルを含む2億8700USドルです。8月27日現在で、WHOは4530万USドルを受け取っていて、さらに資金提供または寄付が申し込まれています。現在利用できる資金は、2019年9月末までの資金不足を埋めることが見込まれています。さらなる財源が2019年12月までの対応資金として必要とされていて、WHOは寄付者に十分な支援を提供するよう訴えています。今回のアウトブレイクが始まってからのWHOが受け取った資金についての概要はこちらから閲覧できます。

図1:2019年8月27日時点の保健区域別エボラウイルス病の発症週ごとの確定例及び高度疑い例のデータ*


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*ここ数週間のデータは、症例の確認と報告、継続的なデータクリーニングが遅れることがあります。その他の保健区域にはアリムボンゴ(Alimbongo)、アリワラ(Ariwara)、ビエナ(Biena)、ブニア(Bunia)、ゴマ、カルングタ、カイナ(Kayna)、コマンダ(Komanda)、キョンド(Kyondo)、ロルヴァ(Lolwa)、ルベロ(Lubero)、マンバサ、マングルジパ(Manguredjipa)マセレカ(Masereka)、ミュジヤンエーヌ(Musienene)、ムトワンガ(Mutwanga)、ムウェンガ、ニャンクンデ(Nyankunde)、ニーラゴンゴ、オイチャ(Oicha)、ピンガ(Pinga)、ルワンパラ(Rwampara)、チョミア(Tchomia)、ヴホヴィ(Vuhovi)が含まれます。

図2:2019年8月27日時点の保健区域別エボラウイルス病の発症週ごとの確定例および高度疑い例のデータ


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表1:2019年8月27日時点のコンゴ民主共和国北キブ州とイトゥリ州における保健区域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例、被害を受けた保健地域の数**


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**過去21日間に発生した症例と被災した地域は最初の症例警報の日付に基づいており、確定日及び保健省による毎日の報告とは異なる場合があります。

公衆衛生上の取り組み

保健省、WHO、パートナーによる公衆衛生上の取り組みに関するさらなる情報は、WHOアフリカ地域事務局が発表した最新の状況報告をご参照ください。
エボラ状況報告書:コンゴ民主共和国

WHOによるリスク評価

WHOは疫学的状況の変化とアウトブレイクの状況を継続的に監視して、対応への支援が進展する状況に適応していることを確実なものにします。2019年8月5日に実施された直近の評価では国内および地域でのリスクレベルは非常に高いままで、国際的なリスクレベルは低いままであると結論付けられました。

コンゴ民主共和国でのエボラウイルス病のアウトブレイクへの対応は、持続的な政情不安定、不休、コミュニティの非協力による孤立地帯、資金不足という課題を抱えたままの状態です。地域社会の中で死亡症例の割合が高いこと、サーベイランス下で接触者が明らかにされている新規症例の割合が低いこと、院内感染に関連した可能性がある感染伝播の連鎖の存在、症例の検出と隔離の持続的な遅延、政情不安定や地域社会の非協力のために地域社会へのアクセスに問題があることは、影響を受けた全ての地域社会において、さらに感染伝播の連鎖の可能性を増加させる要因となります。

対応戦略を現地の状況に合わせて発展させながら、対応作業の体制と備えについても、近隣諸国を含むアウトブレイクによる影響を受けていない地域において強化・継続されなければなりません。WHOは、NGOや国連パートナーがともに全ての活動を促進させる、より調和のとれたアプローチを呼び掛けています。アウトブレイクの終結という共通の目標の中で、全てのパートナーは対応におけるそれぞれの役割に責任を持っています。

上記の要素は、アウトブレイクが起きた地域からコンゴ民主共和国のその他の地域、およびセキュリティの穴だらけの国境を越えた近隣諸国への頻繁な人口移動と併せて、コンゴ民主共和国と近隣諸国の両方における地理的拡大のリスクを高めます。反対に、近隣諸国におけるアウトブレイクへの対応体制と準備活動は、症例を迅速に検出して地域への拡大を軽減する能力を高めてきました。これらの活動は継続して拡大しなければなりません。

WHOからのアドバイス

WHOは現在入手可能な情報に基づき、コンゴ民主共和国への渡航や貿易に対していかなる制限も行わないよう勧告します。現在のところ、エボラウイルスから人々を守るワクチンは認可されていません。したがって、国境を越えた移動やビザの発給の制限の基準として、エボラワクチンの接種証明書を要求することは合理的ではありません。WHOは厳重な監視を継続し、必要であれば今回の事象に関連した渡航と貿易の措置を検証します。現在、コンゴ民主共和国との国際交通を著しく妨害するような渡航対策を実施している国はありません。渡航者は渡航前に医師の診察を受けるべきであり、良い衛生習慣を実践すべきです。さらなる情報は、WHOの推奨するコンゴ民主共和国におけるエボラウイルス病アウトブレイクに関連した国際交通にについてで確認可能です。

さらなる情報は下記をご覧ください。

出典

Ebola virus disease – Democratic Republic of the Congo
Disease Outbreak News: 29 August 2019
https://www.who.int/csr/don/29-august-2019-ebola-drc/en/

翻訳

WHO健康開発総合研究センター
https://extranet.who.int/kobe_centre/ja