エボラウイルス病-コンゴ民主共和国(更新38)

Disease outbreak news:更新 2019年9月6日

北キブ州、南キブ州、およびイトゥリ州におけるエボラウイルス病(EVD)の感染強度は依然として大きく、直近の8月29日のコンゴ民主共和国でのエボラウイルス病のアウトブレイクニュース更新以来、57の新しい症例が報告されています。 ベニ(Beni) 保健区域などのホットスポットは緩和の兆候を示していますが、新しいホットスポットが他の場所で出現しています。 2019年8月14日から9月4日までの過去21日間に合計186件の確定症例が報告され、その大部分はベニ(17%、n = 31)、カルングタ(Kalunguta)(15%、n = 28) 、マンディマ(Mandima)(13%、n = 24)、マンバサ(Mambasa)(12%、n = 22)保健区域からのものです。カルングタ、マンディマ、およびマンバサ保健区域内の新たに出現した集団感染ではアクセスが制限されており、治安状態が不安定であるため、エボラウイルス病に対する対応活動は多少とも妨げられています。

同様に、エドワード湖の湖岸とウガンダの国境にあるムトワンガ(Mutwanga)とカイナ(Kayna)の保健区域における持続する局地的な感染伝播は、地域的な広がりの新たなリスクを示しています。このリスクは、先週、母親と一緒に医療を求めて移動する際にムポンドウェ・カサンディ(Mupondwe-Kasindi)国境の入境地点(PoE)で特定される前に、ムトワンガ保健区域で感染暴露し発症した8月29日の幼児の症例の確認によって強調されました。子どもはすぐにウガンダのブウェラ(Bwera)にあるエボラ治療センター(ETC)に運ばれ、そこで治療を受けましたが、残念ながら到着後すぐに亡くなりました。現在、限られた数の感染の可能性のある接触者がサーベイランス下にありますが、現在までウガンダでさらに確定された症例はありません。

9月4日の時点で、2,945人の確定例患者と109人の高度疑い例患者を含む合計3,054人のエボラウイルス病患者が報告され、そのうち2,052人が死亡しました(全体の致死率67%)。このアウトブレイクの開始以来、29の保健区域から症例が報告されており、そのうち17の保健区域が過去21日間に新しい症例を報告しました(表1、図2)。確定例と高度疑い例を併せた全症例のうち、58%(1,772)は女性、28%(865)は18歳未満の子供、5%(156)は医療従事者でした。

現在の戦略的対応計画の第1の柱では、2019年7月から12月までの期間におけるすべてのパートナーの推定資金要求額は、WHOの1億2,000万から1億4,000万米ドルを含め、2億8,700万米ドルです。 2019年9月6日現在、4,530万米ドルがWHOによって受領され、さらに資金が引き受けられまたは約束されています。現在利用可能な資金は、2019年9月末までの資金不足を埋める見込みです。2019年12月までの対応に資金を供給するためにさらなる財源が必要であり、WHOは十分な支援を提供するようドナーに訴えています。今回のアウトブレイクが始まってからのWHOが受け取った資金についての概要はこちらから閲覧できます。

図1:2019年9月4日時点の保健区域別エボラウイルス病の発症週ごとの確定例及び高度疑い例のデータ*


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*ここ数週間のデータは、症例の確認と報告、継続的なデータクリーニングが遅れることがあります。その他の保健区域にはアリムボンゴ(Alimbongo)、アリワラ(Ariwara)、ビエナ(Biena)、ブニア(Bunia)、ゴマ(Goma)、カルングタ、カイナ、コマンダ(Komanda)、キョンド(Kyondo)、ロルヴァ(Lolwa)、ルベロ(Lubero)、マンバサ、マングルジパ(Manguredjipa)マセレカ(Masereka)、ミュジヤンエーヌ(Musienene)、ムトワンガ(Mutwanga)、ムウェンガ(Muwenga)、ニャンクンデ(Nyankunde)、ニーラゴンゴ(Nyiragongo)、オイチャ(Oicha)、ピンガ(Pinga)、ルワンパラ(Rwampara)、チョミア(Tchomia)、ヴホヴィ(Vuhovi)が含まれます。

図2:2019年9月4日時点の保健区域別エボラウイルス病の発症週ごとの確定例および高度疑い例のデータ*

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表1:2019年9月4日時点のコンゴ民主共和国北キブ州とイトゥリ州における保健区域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例、被害を受けた保健地域の数**

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**過去21日間に発生した症例と被災した地域は最初の症例警報の日付に基づいており、確定日および保健省による毎日の報告とは異なる場合があります。

公衆衛生上の取り組み

保健省、WHO、およびパートナーによる公衆衛生対応措置の詳細については、WHOアフリカ地域事務所が発行する最新の状況レポートを参照してください。
エボラ状況報告書:コンゴ民主共和国

WHOによるリスク評価

WHOは疫学的状況の変化とアウトブレイクの状況を継続的に監視して、対応への支援が進展する状況に適応していることを確実なものにします。2019年8月5日に実施された直近の評価では国内および地域でのリスクレベルは非常に高いままで、国際的なリスクレベルは低いままであると結論付けられました。

コンゴ民主共和国でのエボラウイルス病のアウトブレイクへの対応は、持続的な政情不安定、不休、コミュニティの非協力による孤立地帯、資金不足という課題を抱えたままの状態です。地域社会の中で死亡症例の割合が高いこと、サーベイランス下で接触者が明らかにされている新規症例の割合が低いこと、院内感染に関連した可能性がある感染伝播の連鎖の存在、症例の検出と隔離の持続的な遅延、政情不安定や地域社会の非協力のために地域社会へのアクセスに問題があることは、影響を受けた全ての地域社会において、さらに感染伝播の連鎖の可能性を増加させる要因となります。

対応戦略を現地の状況に合わせて発展させながら、対応作業の体制と備えについても、近隣諸国を含むアウトブレイクによる影響を受けていない地域において強化・継続されなければなりません。WHOは、NGOや国連パートナーがともに全ての活動を促進させる、より調和のとれたアプローチを呼び掛けています。アウトブレイクの終結という共通の目標の中で、全てのパートナーは対応におけるそれぞれの役割に責任を持っています。

上記の要素は、アウトブレイクが起きた地域からコンゴ民主共和国のその他の地域、およびセキュリティの穴だらけの国境を越えた近隣諸国への頻繁な人口移動と併せて、コンゴ民主共和国と近隣諸国の両方における地理的拡大のリスクを高めます。反対に、コンゴ民主共和国とウガンダ間の入境地点で検出された症例で観察したように、近隣諸国におけるアウトブレイクへの対応体制と準備活動は、症例を迅速に検出して地域への拡大を軽減する能力を高めてきました。これらの活動は継続して拡大しなければなりません。

WHOからのアドバイス

WHOは現在入手可能な情報に基づき、コンゴ民主共和国への渡航や貿易に対していかなる制限も行わないよう勧告します。現在のところ、エボラウイルスから人々を守るワクチンは認可されていません。したがって、国境を越えた移動やビザの発給の制限の基準として、エボラワクチンの接種証明書を要求することは合理的ではありません。WHOは厳重な監視を継続し、必要であれば今回の事象に関連した渡航と貿易の措置を検証します。現在、コンゴ民主共和国との国際交通を著しく妨害するような渡航対策を実施している国はありません。渡航者は渡航前に医師の診察を受けるべきであり、良い衛生習慣を実践すべきです。さらなる情報は、WHOの推奨するコンゴ民主共和国におけるエボラウイルス病アウトブレイクに関連した国際交通についてで確認可能です。

出典

Ebola virus disease -Democratic Republic of the Congo
Disease outbreak news: Update  6 September 2019
https://www.who.int/csr/don/06-september-2019-ebola-drc/en/