ジカウイルス-フランス

Disease outbreak news  2019年11月1日

2019年10月9日、フランス当局は、フランスのヴァール(Var)県イエール(Hyeres)で発生した自生のジカウイルス(ZIKV)の症例を報告しました。この症例は、2019年7月29日に発症したものが報告されたものです。患者またはパートナーについて、ジカウイルス流行国への旅行歴は報告されていません。この通知以降、フランス当局は、イエールにおける同じ地域および同じ時間枠での積極的な症例探索を通じて特定した追加の2人の自生のジカウイルスの高度疑い症例を報告しました(3つの症例は2019年8月6日から15日に発症)。3人のすべての患者がすでに回復しています。

フランス当局による疫学及び昆虫学的フィールド調査はいまだに進められており、これらの症例の感染伝播経路を特定し、さらなる広がりを防ぎ、関連しうる症例を検知しようとしています。

3つのケースは、7月下旬から 8月上旬にこの近隣地域でジカウイルスのベクター(媒介昆虫)が媒介した感染伝播が原因であった可能性があります。これは、フランスの都市部およびヨーロッパにおいて認識された、ジカウイルスが地域のベクターが媒介して伝播した最初のエピソードである可能性があります。

公衆衛生上の取り組み

地元の保健当局は、蚊の検出といったベクターコントロール活動を症例の発生地の周辺で実施しています。

この地域の追加の症例を特定するために、疫学調査が実施されました。この地域と部局に関係する医療機関や保健医療専門職はジカウイルスの診断と検出、および疑い症例の定義(notification of suspect cases)について情報提供されました。症例の発生地の近くに居住するか滞在したことのある妊婦を担当する医療専門家にも有用な情報が提供されています。

WHOによるリスク評価

ジカウイルス伝播の主要な媒介動物であるネッタイシマカがフランスで定着していないことから、全国レベルで病気が広がる全体的なリスクはとても低いです。媒介能力は劣るものの潜在的な拡散のベクターであるヒトスジシマカは定着しています。ただし、今後の冬の訪れによって気温が下がることは、ジカウイルスの伝播を促進するようなベクターの活動性を下げていくことになります。

3つの症例のすべてにおいて性的および臓器/組織による感染を支持する証拠はありません。また、フランス都市部から外への旅行歴もありません。3つの症例がベクターによる地域での伝播の結果である可能性が高いことを示唆しています。

現在までに、これらの3つのケースを超えたさらなる広がりを示す証拠はありません。しかし、フランス当局は、この地域で起こりうるウイルス循環のすべてを評価するために、さらなる疫学調査を実施しています。ジカウイルス症例の50%から80%が無症候性であることが知られているため、既知の症例の感染は、蚊刺しを通じて、無症候性の感染者から生じた可能性があります。

地域レベルおよび世界レベルでは、病気の広がりについての総計のリスクはとても低いと考えられます。

WHOからのアドバイス

日中と夕方に蚊刺しから防御することは、ジカウイルス感染を防ぐための重要な手段です。妊娠中の女性、妊娠可能な年齢の女性、および小児は蚊に刺されないように特に注意すべきです。

個人保護対策には、できるだけ体の多くを覆う衣服(できれば明るい色)の着用、網戸やドアや窓を閉じるといった物理的なバリアの使用、使用上の注意に従って、DEET、IR3535、またはイカリジンを含む防虫剤を皮膚または衣服に塗布することが含まれます。

ネッタイシマカは、家、学校、職場の周りの小さな水たまりで繁殖します。これらの蚊の繁殖場所をなくすことが重要です。貯水容器を覆い、植木鉢に溜まった水を取り除き、ゴミと使用済みタイヤを掃除します。地域での取り組みは、地方自治体および公衆衛生プログラムを支援するために不可欠です。コミュニティレベルでクリーンアップキャンペーンを始めるときには、家や空き地の裏庭にあるすべての廃棄物を取り除くことが奨励されています。保健当局は、蚊の数と病気の広がりを減らすために、幼虫駆除剤と殺虫剤の使用を勧めることもあります。

ジカウイルスは、性交渉によって感染伝播する可能性があります。これは、ジカウイルス感染と妊娠の異常および胎児への影響との関連により特に懸念されます。ジカウイルスの感染伝播が活発な地域では、性的にアクティブな男性と女性のすべて、特に感染者とその性的パートナーは、ジカウイルス感染から身を守る方法についてカウンセリングを受けるべきです。また、妊娠リスクとより安全な性交渉について十分な情報に基づいた選択をするために、あらゆる避妊方法が提供されるべきです。

現在、ジカウイルス感染を防ぐためのワクチンはなく、ジカウイルス感染またはその関連疾患に対する特定の治療法はありません。

WHOは、このイベントに関して、影響を受けている国との旅行または貿易の制限をしないように助言します。

出典

Zika virus disease -France
Disease outbreak news  1 November 2019
https://www.who.int/csr/don/01-november-2019-zika-virus-disease-france/en/