エボラウイルス病―コンゴ民主共和国(更新48)

Disease outbreak news:更新  2019年11月14日

北キブ州およびイトゥリ州で進行中のエボラウイルス病(EVD)のアウトブレイクで、過去1週間(11月6日から12日)に6例の新しい確定例が報告されました。 6件の症例はすべて、ベニおよびマバラコ健康地帯での局所的な感染伝播に起因しており、すべて確定例の既知の接触者でした。すべての症例は、マンディマ保健区域のビアカトー・マイン保健地域における以前の感染伝播の連鎖に関連させられますが、その保健地域では11月4日以降症例を報告していません。

先週、カルングタ保健区域は21日間新規のエボラウイルス病の確定例の報告はなく、カトワ保健区域は新規の確定例なしで42日間をクリアしました。症例数が着実に減少するにつれて、他の症例指標が励みになるようです。発症前の症例における登録接触者の割合は時間とともに増加し、過去7日間では100%(6人/6人)に達しました。確定例の中での地域社会内での死亡率の傾向も改善されました。直近の過去3週間では、12%(3/34)が地域社会における死亡でしたが、これに対しその前の3週間(10月9-29日)は28%(17/61)であり、アウトブレイク全体を通しては33%でした。症状の発現から、生存しているエボラウイルス病患者の隔離入院までの日数の短縮も報告されています。 2019年8月24日から10月1日までの期間の遅延は平均で4.1日でしたが、2019年10月2日から11月12日までの期間は3.2日でした。

しかし、最近の症例のマバラコ保健区域への移行については懸念が残っています。過去21日間(10月23日から11月12日)に、北キブ州とイトゥリ州の5つのエボラウイルス病の感染伝播が活発な保健区域(図2、表1)から40の確定例が報告されました。大多数はマバラコ( 40%、n = 16)、マンディマ(33%、n = 13)、およびベニ(20%、n = 8)の3つの保健区域で報告されています。治安の問題がこれらの地域へのアクセスと対応の困難さを引き起こしたため、マバラコ保健区域のビンゴおよびンゴヨ(Ngoyo)保健地域で進行中の感染伝播は困難な課題となっています。

11月12日の時点で、合計3,291例のエボラウイルス病症例が報告され、そのうち3,173例が確定、118例の高度疑い例があり、そのうち2,193例が死亡しました(全体の致死率67%)。確定例と高度疑い例を合わせた全症例のうち、56%(n = 1,856)が女性、28%(n = 930)が18歳未満の子供、5%(n = 163)が医療従事者でした。

今週、世界保健機関(WHO)は初めてエボラワクチンの事前認定を行いました。メルク(米国およびカナダ以外ではMSDとして知られている)が製造する注射可能なエボラワクチン、Erveboは、品質、安全性、有効性に関するWHO基準を満たしており、現在、国連機関およびワクチン同盟のGaviによってリスクのある国で調達できます。この決定は、ワクチンの入手可能性やコンゴ民主共和国での現在の用量の使用方法に直ちに大きな影響を与えるものではありませんが、将来の入手可能性を高めるための一歩です。

図1:2019年11月12日時点の保健区域別エボラウイルス病症例の週ごとの確定例および高度疑い例のデータ*

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*発症日が報告されていないn = 184症例を除く。 ここ数週間のデータは、ケースの確認と報告、および継続的なデータクリーニングの遅延の影響を受けます。 その他の保健区域には、アリムボンゴ(Alimbongo)、アリワラ(Ariwara)、ビエナ(Biena)、ブニア(Bunia)、ゴマ(Goma)、カイナ(Kayna)、コマンダ、キョンド(Kyondo)、ロルヴァ(Lolwa)、ルベロ(Lubero)、マングルジパ(Manguredjipa)、マセレカ(Masereka)、ミュジヤンエーヌ(Musienene)、ムトワンガ(Mutwanga)、ムウェンガ(Mwenga)、ニャンクンデ(Nyankunde)、ニーラゴンゴ(Nyiragongo)、オイチャ(Oicha)、パンガ(Pinga)、ルワンパラ(Rwampara)、チョミア(Tchomia)、ヴホヴィ(Vuhovi)が含まれます。

図2:2019年11月12日時点の保健区域別エボラウイルス病の発症週ごとの確定例および高度疑い例のデータ*

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表1:2019年11月12日時点のコンゴ民主共和国北キブ州およびイトゥリ州の保健区域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例、影響を受けた保健地域の数**


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**過去21日間に発生した症例と被災した地域は症例警報の日付に基づいており、確定日及び保健省による毎日の報告とは異なる場合があります。
 

公衆衛生上の取り組み

保健省、WHO、パートナーによる公衆衛生上の取り組みに関するさらなる情報は、WHOアフリカ地域事務局が発表した最新の状況報告をご参照ください。
エボラ状況報告書:コンゴ民主共和国

WHOによるリスク評価

WHOは、対応支援が変化を続ける状況に適応できているかを確認するべく、疫学的状況の変化とアウトブレイクの状況を継続的に観察しています。2019年10月8日に実施された直近の評価では国内および地域でのリスクレベルは非常に高いままで、国際的なリスクレベルは低いままであると結論付けられました。

発生率の低下は喜ばしいものですが、影響を受ける地域におけるアクセスと治安のレベルに状況が大きく左右されるので、注意して解釈しなければなりません。発生率の低下と並行して、より集中した地域で、ホットスポットが都市部から農村部の手の届きにくい地域にさらにシフトしています。これらの地域では対応するにあたり更なる課題をもたらします。著しく不安定な治安状態、アクセスが困難である遠隔地の地域があること、エボラの認知度が比較的低く、地域の関与が遅れているために不信と誤解が生じていること、そして、潜在的な症例を過少に報告することが、更なる課題に含まれます。このような環境では、再興の可能性が非常に高いままですし、医療を受けることやその他の理由でホットスポットの外に移動することに伴って、アウトブレイクが再び分散する可能性も同じく非常に高いままです。これらのリスクは、国際パートナーのコンソーシアム(共同事業体)からの支援を受けて、コンゴ民主共和国および近隣諸国における実質的な対応および準備活動によって引き続き軽減されることになります。

WHOからのアドバイス

WHOは、現在入手可能な情報に基づいて、コンゴ民主共和国への渡航および貿易に対していかなる制限もすべきでないと助言します。現在、人々をエボラウイルスから保護するための認可されたワクチンはありません。したがって、国境を越えた移動や影響を受ける国への/からの旅行者に対するビザの発行を制限するために、エボラワクチンの接種証明書を要求することは、合理的な根拠にもとづくものではありません。WHOは、この事象に関連する旅行および貿易を引き続き注意深く監視し、必要に応じて検証します。現在、コンゴ民主共和国との間の国際交通を著しく妨げる旅行施策を実施している国はありません。旅行者は旅行前に医師の助言を得るべきであり、良好な衛生状態を保つべきです。詳細については、コンゴ民主共和国でのエボラウイルス病のアウトブレイクに関連する国際交通に関してWHOが推奨している事項を参照してください。

出典

Ebola virus disease - Democratic Republic of the Congo
Disease outbreak news: Update  14 November 2019
https://www.who.int/csr/don/14-november-2019-ebola-drc/en/