エボラウイルス病-コンゴ民主共和国(更新47)

Disease outbreak news:更新  2019年11月7日

先週(10月30日から11月5日まで)は、北キブ州(Kivu)とイトゥリ州(Ituri)で現在も続いているエボラウイルス病のアウトブレイクの中から、15人の確定例が報告されました。新規症例の人数は週の平均と一致していて、過去21日間の確定例の週の平均人数は19人です。しかしながら症例数には1日ごとに著明な変動があります。

マンディマ(Mandima)保健区域にあるルウェンバ(Lwemba)保健地域で今週発生した暴動により、エボラに対応している地域の保健員が死亡し、その男性の配偶者は重体のまま放置されました。WHOとパートナーは攻撃を非難し、対応に関与している個人に対する暴力行為は受け入れられるものではないこと、エボラの破壊的な影響により打撃を受けたコミュニティを援助するために、保健員ができることを危うくするものであることを言い足しました。

過去21日間(10月16日から11月5日まで)のうちに、北キブ州とイトゥリ州(図2、表1)の感染伝播が続いている7つの保健区域から54人の確定例が報告され、その大半は4つの保健区域から報告されました。内訳は以下の通りです。マンディマ(39%, n= 21)、マバラコ(Mabalako)(31%, n= 17)、ベニ(Beni)(11%, n= 6)、マンバサ(Mambasa)(11%, n= 6)です。これらの症例の大部分(83%)はマンディマ保健区域のビアカト-・マイン保健地域に関連していて、残りの10症例はBinase、カトワ(Katwa)、ルウェンバの各保健地域における既知の感染伝播の鎖に関連しています。

この状況の中では、過去にエボラを根絶した地域またはエボラの影響を受けていない隣接した地域へのウイルスの再導入が見込まれることが予想されます。そのため起こり得る地理的拡大について厳重に評価し、監視すべきです。過去21日間に報告された症例の約半数(51%)は、症例が感染した保健区域外に居住していて、多数がマンディマ保健区域への移動もしくはマンディマ保健区域からの移動を行っています。人々の移動の分析の結果、次のことが示唆されています。地域間での人々の渡航は、マンバサからコマンダ(Komanda)とブニア(Bunia)への東に向かう移動、マンバサとマンジーナ(Mangina)の間の南に向かう移動、ベニからビュトンボ(Butembo)にかけてのさらに南に向かう移動、カサンディ(Kasindi)までの移動と国境を越えたウガンダに向かう南東への移動でした。入境地点とそこでの管理は症例や人々の移動に基づき、対応チームによる強化を続けています。主要な航路、交通路、入国地点でスクリーニングを強化する重要性を高めたため、今週1人の症例が、新たに開設された入国管理地点を介した渡航の際に検出されました。進行中の活動の強化の一例は、ウガンダとの国境の近くの、カサンディ保健地域に先週導入したエボラウイルス病の検査室です。これにより症例の迅速な確認と、対応活動の早期の開始を容易にすることが予想されています。

11月5日現在、3,167人の確定例と118人の高度疑い例を含む3,285人のエボラウイルス病症例が報告されていて、そのうち2,191人が死亡しています(全体の症例致死率は67%)。確定例と高度疑い例の全体のうち、56%(n= 1852)は女性で、28%(n= 930)は18歳未満の小児、5%(n= 163)は医療従事者です。

図1:2019年11月5日時点の保健区域別エボラウイルス病の発症週ごとの確定例と高度疑い例のデータ*


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*発症した日付けが報告されていないn=184の症例は除外しています。ここ数週間のデータは、症例の確認と報告、継続的なデータクリーニングが遅れることがあります。その他の保健区域には以下のものがあります。アリムボンゴ(Alimbongo)、アリワラ(Ariwara)、ビエナ(Biena)、ブニア、ゴマ(Goma)、カルングタ(Kalunguta)、カイナ(Kayna)、コマンダ、キョンド(Kyondo)、ロルヴァ(Lolwa)、ルベロ(Lubero)、マングルジパ(Manguredjipa)、マセレカ(Masereka)、ミュジャンエーヌ(Musienene)、ムトワンガ(Mutwanga)、ムウェンガ(Mwenga)、ニャンクンデ(Nyankunde)、ニーラゴンゴ(Nyiragongo)、オイチャ(Oicha)、パンガ(Pinga)、ルワンパラ(Rwampara)、チョミア(Tchomia)、ヴホヴィ(Vuhovi)が含まれています。

図2:2019年11月5日時点の保健地域別の報告された症例の週ごとのエボラウイルス病の確定例と高度疑い例*


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表1:2019年11月5日時点のコンゴ民主共和国の北キブ州とイトゥリ州における保健区域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例、被害を受けた保健地域の数**


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**過去21日間に発生した症例と被災した地域は症例警報の日付に基づいており、確定日及び保健省による毎日の報告とは異なる場合があります。

公衆衛生上の取り組み

保健省、WHO、パートナーによる公衆衛生上の取り組みに関するさらなる情報は、WHOアフリカ地域事務局が発表した最新の状況報告をご参照ください。
エボラ状況報告書:コンゴ民主共和国

WHOによるリスク評価

WHOは対応支援が変化を続けている状況に適応できているか確認するために、疫学的状況とアウトブレイクの状況を継続的に観察しています。2019年10月8日に実施された直近の評価では、国内および地域でのリスクレベルは依然として高いままで、国際的なリスクレベルは低いままであると結論付けられました。

観察された症例の発生数が少ないことは望みがあるといえますが、影響を受けたコミュニティ内のアクセスと治安のレベルは依然として非常に不安定であるため、これは注意深く解釈しなければなりません。症例発生の減少と同時に、ホットスポットが都市部から、地理的領域の中でも到達しにくいコミュニティである田園地域へと移行しています。これらの地域は対応にさらなる課題をもたらします。課題とは、非常に不安定な治安情勢、離れたエリアへの困難なアクセス、コミュニティの参加の遅延で、これらの次に不信と誤解、症例の過少報告が起こります。こういった環境の中では、医療機関を求めて、あるいはその他の理由でホットスポットの外に渡航する症例のために、アウトブレイクの再分散のリスクがあるため、再燃のリスクが依然として非常に高くなります。国際的なパートナーのコンソーシアム(共同事業体)からの支援と合わせて、コンゴ民主共和国と近隣諸国の十分な対応と準備活動により、これらのリスクは軽減され続けます。

WHOからのアドバイス

WHOは現在入手可能な情報に基づき、コンゴ民主共和国への渡航や貿易に対していかなる制限も行わないよう勧告します。現在のところ、エボラウイルスから人々を守るワクチンは認可されていません。したがって、国境を越えた移動や影響を受けた国への/国からの渡航者にビザの発給の制限の基準として、エボラワクチンの接種証明書を要求することは合理的ではありません。WHOは厳重な監視を継続し、必要であれば今回の事象に関連した渡航と貿易の措置を検証します。現在、コンゴ民主共和国との国際交通を著しく妨害するような渡航対策を実施している国はありません。渡航者は渡航前に医師の診察を受けるべきであり、良い衛生習慣を実践すべきです。さらなる情報は、WHOの推奨するコンゴ民主共和国におけるエボラウイルス病アウトブレイクに関連した国際交通にについてで確認可能です。

さらなる情報は下記をご覧ください。

出典

Ebola virus disease – Democratic Republic of the Congo
Disease Outbreak News: 7 November 2019
https://www.who.int/csr/don/07-november-2019-ebola-drc/en/

翻訳

WHO健康開発総合研究センター
https://extranet.who.int/kobe_centre/ja