エボラウイルス病-コンゴ民主共和国(更新)2020年2月13日付け

Disease outbreak news:更新  2020年2月13日

今週は、コンゴ民主共和国のエボラウイルス病のアウトブレイクでの症例発生数が低い状態が続きました(図1)。2月5日から11日までに、3人の新たな確定例が北キブ州のベニ保健区域で報告されました。3人の症例は全て、マバラコ保健区域のアロヤ保健地域を起源とする伝播の鎖に疫学的な関連があり、ベニでの院内感染による曝露の可能性がありました。最も新しいベニ保健区域から2月11日に報告された症例は、症状の出現から1日で隔離されました。症例の早期の検出はコミュニティ内のエボラの伝播の可能性を減少させ、患者の臨床的な転帰を有意に改善させます。

過去21日間(2020年1月22日から2月11日まで)で、3人のコミュニティ内死亡を含む12人の確定例が、北キブ州にある2つの感染伝播が活発な保健区域内の、4つの保健地域から報告されました(図2、表1):ベニ(n=11)とマバラコ(n=1)。カトワ保健区域が新規症例を報告してから42日になります。エボラウイルス病の症例の地理的な広がりの継続的な縮小と、過去21日間に観察された症例の発生率の減少傾向は有望なものです。しかしながら、これらの改善は依然として不安定で、対応活動が縮小可能と示唆すると解釈されるべきではありません。継続した警戒、早期の同定や症例と接触者の経過観察を確実にすることが、医療施設における感染予防と管理には必要不可欠です。

2月11日現在で、3309人の確定例と123人の高度疑い例を含む3432人のエボラウイルス病症例が報告されていて、そのうち2253人の症例が死亡しました(全体の症例致死率66%)(表1)。確定例と高度疑い例の全体のうち、56%(n=1923)が女性、28%(n=968)が18歳未満の小児、報告された全ての症例のうち5%(n=172)が医療従事者でした。

2月12日に、WHO事務局長は国際保健規則(IHR)のもとで緊急委員会を再招集しました。委員会は2019年10月18日に発行された暫定的推奨(the Temporary Recommendations)の実施の進行について再評価しました。本アウトブレイクの最新情報は、コンゴ民主共和国の保健省の代表者、国連エボラ緊急対応コーディネーター、WHO事務局によって提供されました。近隣諸国の状況、コンゴ民主共和国の影響を受けていない地域の準備も再評価されました。この事象は依然として国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)であるというのが委員会の見解でした。さらなる詳細は緊急委員会の声明から閲覧が可能です。

2月10日にWHOは、エボラウイルス病の状況における、妊婦と授乳中の女性の管理についての医療提供者に対する新しいガイドラインを公表しました。本文書では既存のエビデンスを再評価し、エボラに曝露した、エボラと診断された、エボラから回復した女性に対する治療の継続における統一的な推奨を提供しています。これにより医療提供者、緊急対応チーム、保健政策立案者がエボラのアウトブレイクにおける予防と治療法を改善することができるようになると見込まれます。このガイドラインのプレスリリースはこちらからご覧になれます。

図1:2020年2月11日時点の保健区域別エボラウイルス病の発症週ごとの確定例および高度疑い例のデータ*

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* 2020年2月11日時点で報告された、3,432人の確定例および高度疑い症例。発症日が報告されていないn = 163の症例を除きます。 ここ数週間のデータは、ケースの確認と報告、および現在継続中のデータクリーニングの遅延の影響を受けます。感染伝播が活発でない保健区域には、過去42日間に症例が報告されていない保健区域が含まれます。

図2:2020年2月11日時点の保健区域別エボラウイルス病の発症週ごとの確定例および高度疑い例*


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表1:2020年2月11日時点のコンゴ民主共和国の北キブ州とイトゥリ州における保健区域別のエボラウイルス病の確定例と高度疑い例、被害を受けた保健地域の数**

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**過去21日間に発生した症例と被災した地域は症例警報の日付に基づいており、確定日及び保健省による毎日の報告とは異なる場合があります。
 

公衆衛生上の取り組み

保健省、WHO、パートナーによる公衆衛生上の取り組みに関するさらなる情報は、WHOアフリカ地域事務局が発表した最新の状況報告をご参照ください。
エボラ状況報告書:コンゴ民主共和国

WHOによるリスク評価

2020年2月12日に、WHOはこの事象に対するリスク評価を、国家と地域のレベルにおいては「非常に高い」から「高い」に見直しました。一方で世界レベルのリスクレベルは「低い」状態が維持されています。WHOは支援と対応が状況に適応していることを確かにするために、疫学的な状況とアウトブレイクの状況の変化を厳重に監視します。この評価は、症例の発生率、その他の疫学的指標、強化された地域や地方のキャパシティにおける改善を認めています。しかしながら、アウトブレイクの変動パターンは、依然として対応チームが影響を受けた地域にアクセスに依存している状態が続いています。今も続く情勢不安は、アウトブレイクに対する対応活動の障壁として存続しています。エボラウイルス病の新しい症例から未だに時折報告される、少数のコミュニティ内死亡は、サーベイランス下にある集団の外側で新規症例が発生する可能性を持ち、伝播を永続させる可能性があります。エボラウイルスは生存者の体液内に存続するかもしれません。少数の事例から、生存者の体液への曝露からの二次感染が記録されています。今後数カ月の間に、感染した生存者の体液への曝露に続く症例のさらなるクラスターを見込むべきです。このリスクは、生存者のケアと監視に対して作られた計画を介して緩和させることができます。国と地方のレベルで、対応と準備の活動に課された潜在的な制限(例えば資金不足、治安の悪化によるコミュニティへのアクセスの喪失など)が、アウトブレイクの制御によって得られたものを逆転する可能性があります。

WHOからのアドバイス

WHOは現在入手可能な情報に基づき、コンゴ民主共和国への渡航や貿易に対していかなる制限も行わないよう勧告します。国境を越えた移動や影響を受けた国への/国からの渡航者にビザの発給の制限の基準として、エボラワクチンの接種証明書を要求することは合理的ではありません。WHOは厳重な監視を継続し、必要であれば今回の事象に関連した渡航と貿易の措置を検証します。現在、コンゴ民主共和国との国際交通を著しく妨害するような渡航対策を実施している国はありません。渡航者は渡航前に医師の診察を受けるべきであり、良い衛生習慣を実践すべきです。さらなる情報は、「WHOの推奨するコンゴ民主共和国におけるエボラウイルス病アウトブレイクに関連した国際交通にについて」で確認可能です。

さらなる情報は下記をご覧ください。

出典

Ebola virus disease – Democratic Republic of the Congo
Disease outbreak news, 13 February 2020
https://www.who.int/csr/don/13-february-2020-ebola-drc/en/

翻訳

WHO健康開発総合研究センター(WHO神戸センター)
https://extranet.who.int/kobe_centre/ja