南アメリカにおけるマヤロ熱 (Mayaro fever) の流行

PAHO Epidemiological Alert2010年6月7日

マヤロ熱についての情報

南アメリカでは、この十年ほどの間にマヤロ熱の小規模な流行が、ブラジルのアマゾン地方、ボリビア、ペルーの農村地域で起きています。流行調査を行ったところでは、流行に関与した媒介昆虫はHaemagogus属の蚊であることがわかっています。この蚊は通常未開地に生息し、人以外の霊長類の中ではマーモセットが脊椎動物の宿主であると考えられています。人のマヤロ熱症例は散発的に発生しており、熱帯雨林で作業をする人や、居住者などに生じています。

現在の流行状況

マヤロウイルスはボリビア、ブラジル、コロンビア、ガイアナ、フランス領ガイアナ、ペルー、スリナムなどで、人や野生動物、そして蚊から分離されています。マヤロウイルスによる熱性疾患は南アメリカ諸国では動物にみられる風土病の一つです。今年、ベネズエラはPortuguesa州の農村地域で集団発生の報告があり、2010年6月4日までに77例が報告されました。これらの症例は血清学診断およびウイルス分離で確定されました。2000年のベネズエラで最初の人の集団発生がみられました。

  • 症例発生の原因となっている因子、症例増加を起こしている可能性のある因子
  • 生態系の変化や森林破壊
  • 節足動物(蚊)生息地域への人口の移動や、節足動物(蚊)の生息環境に対する人そのものあるいは家畜の干渉

一般的推奨事項

症例を検知できるように、また、感染の予防および制御手段をとれるように警戒を強めること。

現在の流行状況を調査し、適切な感染予防、感染制御を明らかにすること。

症例診断のために検査体制を強化すること。

症例検出および症例管理のために医療従事者に最新の情報を把握してもらうこと。

感染伝播に関与しているベクターを決定するために、昆虫学的な警戒体制を強化すること。

リスクのある集団に対して、情報や推奨事項を広め、警戒を呼びかけること。

マヤロ熱について

マヤロ熱はトガウイルス科アルボウイルス族の一種で起こる人畜共通感染症で、南アメリカの湿気の多い熱帯雨林地帯で、Haemagogus属の蚊によって感染伝播します。人症例はこの媒介蚊が生息している湿潤森林地帯での人の暴露状況に相関して発生します。

この疾患は、急な発熱ではじまり、頭痛、全身の疼痛、眼窩後部痛、めまい、関節痛や全身の関節腫脹がある(このためしばしば消耗します。)という点でデング熱に類似しています。この疾患は、3日から5日で自然に軽快し、致死的ではありません。しかし、関節痛は時に数週間から数ヶ月にわたることがあります。