中国におけるポリオ感染について(更新情報)

2011年9月22日、29日 WPRO-抜粋(原文〔英語〕へのリンク
2011年9月22日 WHO Europe-抜粋(原文〔英語〕へのリンク)

WHOヨーロッパ地域事務局は加盟国に対し、野生型ポリオウイルスに対して警戒するよう促し、野生型ポリオウイルスの報告のあった国や地域へ旅行する人及び来る人はWHOのITH(International travel and health)が推奨している十分なワクチン接種をするよう呼びかけています。

中国当局は中国西部の新疆自治ウイグル地区でのポリオ発生に対し迅速に対応し続けています1)。
中国で野生型ポリオウイルス1型の発生が継続していることを受け、WHOヨーロッパは加盟国に対して以下のような発表を行っています。

中国衛生部よりWHO西太平洋地域事務局へ4人の小児から野生型ポリオウイルス1型(WPV1)が分離されたとの最初の報告のあった2011年8月26日以降、中国では6症例が追加報告されました。またWPV1は濃厚接触者と健康な小児からも発見されました。現在までに合計10症例が麻痺を発症し、そのうち6人が3歳以下で4人が22歳から26歳までの若年成人でした。小児は2011年7月3日から17日の間に麻痺を発症し、若年成人は8月1日から9月6日の間に麻痺を発症しています。症例は中国西部の新疆自治ウイグル地域(ホータン県及びBazhou県からホータン東部)より報告されています。中国西部のこの地域はWHOヨーロッパ地域のカザフスタン、キルギス、タジキスタンと国境を接しています。

9月9日中国当局は発症者の中の1人の死亡例を確認しました。これらの結果は新疆自治ウイグル地域で野生型ポリオウイルスが広範囲に広がっていることを示唆します。

中国衛生部は9月8日に始まった15歳未満の380万の小児を対象とした地域全体の予防接種キャンペーン(第2回目)を実施し、地域南部の15~39歳まで対象を拡大しています。初期の予防接種キャンペーンは好調のようです2)。

ホータン県では9月13日以降100万人を対象としています。南部新疆の他県(Aksu, Bazhou, Kashgar and Kezhou)の15~39歳のおよそ450万人へのワクチン接種が9月23日に始まります。

ポリオ予防接種キャンペーンでは家庭訪問、幼稚園、学校、職場、市場、バスターミナル、空港など接種もれの人がいないよう強化されています。中国では小児がワクチン接種されているかどうか追跡する方法として,耳の後ろに消えないインクでマーキングしています。

これまでの経験とデータにより輸入例を最小化するための最も効果的な対策はポリオウイルスの高感度なサーベイランスと免疫をもつ人口の高い割合にあると示されています。同時に各国は輸入例が生じた場合に直ちに対応できるよう対策を講じておくべきです1)。

中国と中央アジア諸国間の貿易、旅行や移住に関し、この流行は中国の領土を越えた脅威であることを示しています。WHOが実施した中国のリスクアセスメントではまた、新彊自治ウイグル地域とヨーロッパ地域全加盟国の主要空港を結ぶ航空交通量が多いことを指摘しています。カシュガルとウルムチから上位14の国際的な航空機による目的地のうち、10箇所はヨーロッパ地域にあります。欧州ポリオ撲滅審査委員会(RCC)は2011年8月24日、WHOヨーロッパ地域のすべての加盟国に用心深く警戒するよう要請しています。その際、欧州は2010年に野生ポリオウイルス1型の輸入後にポリオフリーの状態を維持していることも発表しました。
中国で分離されたウイルスの遺伝子配列は、現在パキスタンで循環しているウイルスに関連していることを示しています。中国で最後のWPV症例は、1999年のインドからの輸入例でした。中国最後の国内発生ポリオ症例は、1994年でした。
症例の詳細な調査が継続されています。WHOは、現在進行中のアウトブレイク調査及び予防接種の対応活動と中期計画の作成などで中国衛生部を支援しています。WHOヨーロッパ地域事務局は、西太平洋地域事務局との密接な連携をとり、アウトブレイクに関し近隣諸国へ通知しています。さらに、近いうちに詳細なリスク評価が実施予定で、加盟国は次のことを含む予防措置をとるよう推奨されています(国境地域での検出と啓発キャンペーンの実施、国境を越える前や中国への航空機に搭乗する前に必要とする旅行者へポリオワクチンの提供)。近隣諸国はまた急性弛緩性麻痺の症例のサーベイランスを強化し、すべての行政地域は報告するよう奨励しています。WHO /ヨーロッパは必要に応じてそのような活動への技術サポートを提供する予定です。
WHOヨーロッパ地域事務局は、サーベイランスや免疫が不十分なリスクのある国々で、中国のポリオ発生地域へ貿易や旅行するすべての関係者に対して年齢に関係なく追加のポリオワクチン投与の機会を提供するべきであると、勧告しています。これは、国際空港や既知の地元住民や中国国民の人口の多い市場などの国境地点で予防接種サービスの提供を通じて行うことができるとしています。
野生ポリオウイルスの検出により国際的な旅行や貿易の制限はありません。WHOの国際渡航と健康(ITH)に記載されている推奨事項に従って、野生型ポリオウイルスの報告された国や地域からくるすべての旅行者及びそれらの国や地域へ行く旅行者は、適切にワクチンを接種すべきです。
他の関連サイトへのリンクとともに定期的な更新は、WHO /ヨーロッパより掲載されます2)。

出典

1)WPRO
Wild Poliovirus in China- Update (29Sep 2011)
Wild Poliovirus confirmed in China- Update (22 Sep 2011)

2)WHO Europe
Ongoing outbreak of wild poliovirus type1 in China: WHO/Europe’s recommendations and response