米国で発生したハンタウイルス肺症候群について -カリフォルニア州 ヨセミテ国立公園

2012年11月23日 CDC(原文〔英語〕へのリンク

2012年8月16日、カリフォルニア公衆衛生局部は、ヨセミテ国立公園に宿泊したカリフォルニア州の住民からハンタウイルス肺症候群(HPS)の確定患者2人が発生し、米国国立公園管理局、カリフォルニア州公衆衛生局、米国疾病予防管理センター(CDC)が調査を開始したことを公表しました。また、8月27日には、ヨセミテ国立公園がさらに2人の患者が発生したことを公表しました。10月30日までに、10人の確定患者が確認されています。

このアウトブレイクでは、確定患者の症例定義は、次の通り定められました。
2012年6月1日から8月28日の間にヨセミテ国立公園に宿泊した者で、
1)発熱があり、血清でハンタウイルス(Sin Nombre virus)特異抗体が陽性であること
または、
2)死亡後の組織の免疫組織化学検査でウイルス抗原が陽性であること
CDCは、米国内外の公衆衛生担当者や医療従事者に通知しました。 国立公園管理局は、6月1日から9月17日までの間にヨセミテ国立公園の宿泊者として登録されていたすべての者(約26万人)に、電子メール、電話、郵便で通知しました。

確定患者の10人は、3州の住民でした(カリフォルニア州8人、ウエストバージニア州1人、ペンシルバニア州1人)。患者の年齢は12歳から56歳でした。また、患者のうち4人は女性でした。患者のうち9人に典型的なHPSの症状が現れましたが、1人には呼吸器症状がみられませんでした。3人の患者が死亡しました。

9人の患者はカリー・ビレッジのシグネチャー・テント・キャビン("signature" cabins)に宿泊しましたが、このキャビンには外壁と内壁を覆う帆布があり、その部分でげっ歯類の出没が発見されました。8月28日、シグネチャー・テント・キャビンの91軒のキャビンはすべて、無期限に閉鎖されました。 また、公園全域のスタッフと訪問客に対して教育的な介入が強化され、カリー・ビレッジ全域に罠を仕掛けるなど、多面的なげっ歯類のコントロールが実施されました。

HPSは、全米で届出対象疾患です。米国では、HPSは、ほとんどがSin Nombre virusによって起こります。シカシロアシマウス(Peromyscus maniculatus)が病原体を保有します。感染したマウスの尿、糞便、唾液からウイルスが排泄されます。人は、げっ歯類の排泄物から生じるエアロゾル化したウイルスを吸入することや、げっ歯類に直接接触して咬まれることによって感染します。潜伏期間は、1週間から6週間です。初期の症状には、発熱、悪寒、筋肉痛、頭痛、胃腸症状があり、1日から7日間続きます。そして、急速に進行し、呼吸困難とショックに進展します。大部分の患者は入院治療が必要で、酸素吸入や挿管を要します。致死率は約36%です。HPSには特異的な治療法がありませんが、早期に支持療法を行うことによって死亡率を減らすことができます。このアウトブレイクの前では、1994年以降、カリフォルニア州の住民で58人のHPS患者が報告されています。このうち2人は、今年以前にヨセミテ国立公園に訪問した人でした(2012年のカリフォルニア州公衆衛生局の未発表データによる)。

臨床医は、げっ歯類と接触歴のある発熱患者で、急速に呼吸器症状が現れた人に対し、鑑別疾患としてハンタウイルスを忘れずに含めてください。HPSは全米で届出対象疾患であり、HPSが疑われる患者を診療した臨床医は、州保健局への届出が必要であり、確定検査について州保健局と相談すべきです。ハンタウイルスの臨床評価、治療、診断に関する詳細な情報はCDCから入手可能です。公園に訪れる人と市民は、げっ歯類とその尿、糞便、営巣材料との接触を避けるように勧められます。

出典

CDC MMWR
Notes from the Field:Hantavirus Pulmonary Syndrome in Visitors to a National ParkYosemite Valley, California,2012
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm6146a5.htm?s_cid=mm6146a5_e