オンコセルカ症について (ファクトシート)

2013年2月 WHO (原文〔英語〕へのリンク

要点

  • オンコセルカ症は河川盲目症とも呼ばれ、回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)という寄生虫によって起こります。
  • 症状には、激しい掻痒や皮膚の外観が損なわれるほか、永久的な失明を含む視覚障害があります。
  • 人は、ブユ(Simulium spp.)に刺されることによって感染します。
  • 感染者の99%以上がサハラ以南のアフリカで発生していますが、ラテンアメリカやイエメンの一部地域でも発生しています。
  • アフリカでは、オンコセルカ症を排除するための中核的な戦略は、イベルメクチンを用いた地域主導型治療です。一方、アメリカ大陸の戦略は、イベルメクチンを用いた年2回の大規模な治療です。

オンコセルカ症は河川盲目症とも呼ばれ、回旋糸状虫というフィラリアによっておこる寄生虫症です。オンコセルカ症は感染したブユに刺されることによって感染します。感染したブユは流れの速い河川で繁殖し、ほとんどが、人間が農業に頼っている肥沃な土地の近くにある僻村に生息しています。

回旋糸状虫の成虫は、人間の体内でミクロフィラリア(被鞘幼虫)を産み、そのミクロフィラリアは皮膚、眼、その他の臓器に移行します。雌のブユは、感染した人を吸血する際にミクロフィラリアを摂取すると、ブユの体内で回旋糸状虫が成長し、次に人を刺した際に人に感染します。

所見と症状

オンコセルカ症は眼と皮膚の疾患です。症状は、ミクロフィラリアが皮下組織を移行し、特に、ミクロフィラリアが死滅する際に激しい炎症反応を誘発します。感染した人は、激しい掻痒や様々な皮膚症状を呈します。ほとんどの場合、皮下に小結節が生じます。感染した人の中には、眼病変が生じ、視覚障害や永久的な失明に至ることもあります。

地理的分布

オンコセルカ症は、主に熱帯地域で発生しています。感染者の99%以上は、以下に示すサハラ以南のアフリカにある31か国で発生しています。

アンゴラ、ンゴラ、ベナン、ブルキナファソ、ブルンジ、カメルーン、中央アフリカ、チャド、コートジボワール、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、赤道ギニア、エチオピア、ガボン、ガーナ、ギニア、ギニア・ビサウ、ケニア、リベリア、マラウイ、マリ、モザンビーク、ニジェール、ナイジェリア、ルワンダ、セネガル、シエラレオネ、南スーダン、スーダン、トーゴ、ウガンダ、タンザニア

また、イエメンでも発生しています。

さらに、以下に示すラテンアメリカの6か国の13地域でもオンコセルカ症が発見されています。

ブラジル、コロンビア、エクアドル、グアテマラ、メキシコ、ベネズエラ

感染者が発生した地域の住民を対象としたイベルメクチンによる大規模な治療が成功し、2011年末までに10地域で疾患の伝播が止まりました。排除に向けた取り組みは、ブラジルとベネズエラに住むヤノマミ族に焦点が当てられています。

予防、感染制御、排除計画

回旋糸状虫を予防するワクチンや医薬品はありません。

1974年から2002年にかけて、オンコセルカ症対策計画(Onchocerciasis Control Programme; OCP)によって西アフリカのオンコセルカ症は制御されました。主に、ヘリコプターや航空機でブユの幼虫に対する殺虫剤スプレーを散布するというベクター・コントロールを行っていましたが、1989年以降、イベルメクチンの大規模な配付に変わりました。

OCPによって、4,000万人の感染が予防し、60万人の失明を防ぎ、1,800万人の小児が疾患と失明の脅威にさらされずにすみました。また、2,500万ヘクタールの土地が耕され、人が居住し、農業生産が行えるようになり、1年間に1,700万人の食事を賄うことが可能となりました。

1995年に、依然としてオンコセルカ症が常在していた国におけるオンコセルカ症の制御を目的として、アフリカオンコセルカ症対策計画(the African Programme for Onchocerciasis Control; APOC)が進められました。その計画の主な戦略はイベルメクチンを用いた継続的な地域主導型治療と、必要に応じた環境に悪影響を与えない方法でのベクター・コントロールでした。2010年には、イベルメクチンを用いた継続的な地域主導型治療を実施した16か国で、約7,600万人にイベルメクチンが配付されました。計画を感染制御から排除に向けて移行させるためには、さらに、今後数年間で少なくとも1,500万人にイベルメクチンを配付する必要があります。

アメリカのオンコセルカ症排除計画(the Onchocerciasis Elimination Program of the Americas; OEPA)は1992年に開始されました。その目的は、2012年までにイベルメクチンを用いた年2回の大規模な治療により、アメリカ大陸全域でのオンコセルカ症による眼疾患の罹患と感染の伝播を排除することです。2006年には感染者が発生している全13地域で85%以上の人に治療が行われ、2011年末までに、13地域のうち10地域で疾患の伝播が止まりました。

治療

WHOは、オンコセルカ症の治療として、約10年から15年間、イベルメクチンを少なくても年1回投与することを推奨しています。回旋糸状虫とロアロアという別のフィラリアがともに常在しているカメルーン、中央アフリカ、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、ナイジェリア、南スーダンでは、重篤な副反応が起こるおそれがあり、その管理を行うため、メクチザンに関する専門家会議とAPOCの推奨に従うことが勧められます。

世界保健機関(WHO)の対応

WHOはAPOCの実施機関です。WHO本部は、行政研究や、技術的研究、運営上の研究を支援しており、WHOアフリカ地域事務局は、APOCの管理を行っています。WHOはOEPAのパートナーシップを通じて、常在国や国際的な関係機関と連携しています。

WHO は、現在、イエメン保健省、世界銀行、その他の国際的な関係機関と連携して、イエメンの排除計画を推進しています。

出典

WHO
Onchocerciasis Fact sheet N°374 February 2013
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs374/en/index.html