2013年のニュース

世界におけるインフルエンザ流行状況 (更新5)

2013年3月15日 WHO ( 原文〔英語〕へのリンク

要約

  • 北米のインフルエンザの活動性は、依然として高い地域もありますが、全体的には減少し続けています。米国ではインフルエンザB型の占める割合が若干増加しましたが、依然としてインフルエンザA(H3N2)が最も多く検出されています。米国では、肺炎とインフルエンザによる死亡者数が示すように、2003年から2004年のシーズン以降で最も影響の大きいシーズンとなりましたが、その影響は65歳以上の集団で最も大きくなっています。メキシコの活動性も、1月中旬から下旬にかけてピークに達した後、減少しています。
  • ヨーロッパのインフルエンザの活動性は、依然として高いですが、伝播が減少したと報告する国が増えています。検出されるウイルスの型・亜型は地域によって差があります。インフルエンザA型よりもインフルエンザB型が多く検出されている国もありますが、主に東部ではインフルエンザB型の検出は非常に少数です。ほとんどの国の超過死亡は中等度で、死亡のほとんどが65歳以上で発生しています。
  • アジアの温帯地域の全域で、インフルエンザの活動性は減少しましたが、モンゴルと韓国では依然として活動性が高いです。
  • 熱帯地域のインフルエンザの活動性は低い水準であり、南半球のインフルエンザの活動性は、依然としてシーズンオフの水準です。
  • 検査を実施している国で、ノイラミニダーゼに耐性を有するウイルスが少数検出されています。

北半球の温帯地域

北米

 北米でのインフルエンザの活動性は、カナダと米国では、1月上旬にピークに達した後、3月第1週は全体的に減少し続けており、メキシコは両国よりも約2週間遅くなっています。インフルエンザの活動性は減少しましたが、依然として活動性の高い地域がありました。

 カナダでは、検査で確定された患者数は若干増加しましたが、全体的には前週に比べて減少傾向にあり、1月上旬のピーク時から明らかに減少しました。国全体でのインフルエンザ様疾患(ILI)の受診率は減少し続けており、2月の最終週は患者1,000人当たり31.8でしたが、3月第1週は20.5でした。3月第1週にインフルエンザウイルスが陽性となった割合は、先週の12%から15%に若干増加しましたが、以前の水準に比べ、依然として比較的低い水準です。病院、長期療養施設、学校におけるインフルエンザの集団発生は31件の報告があり、120件を超える報告があった1月第2週にピークに達した後は減少し続けています。

 3月第1週に、総合サーベイランスシステム(カナダのインフルエンザの入院患者の一部を集計するシステム)によって、112人のインフルエンザに関連した入院患者が報告されました。入院患者の多く(46%)が65歳以上でした。3月第1週にインフルエンザに関連した死亡者は11人と報告されており、そのうちの8人が65歳以上でした。シーズン当初からインフルエンザに関連した死亡は254人と報告されましたが、その83%(254人中211人)が65歳以上でした。予防接種監視活動(IMPACT)ネットワークによって、16歳未満のインフルエンザに関連した入院患者で、検査によって確定された者は新たに26人が報告され、今シーズン当初からの累計は654人となりました。

 カナダでは、3月第1週に793株のインフルエンザウイルスが検出されましたが、64.1%がインフルエンザA型であり、亜型が判明しているインフルエンザA型のうち、54%がインフルエンザA(H3N2)で、46%がインフルエンザA(H1N1)pdm09でした。インフルエンザB型が検出される割合は、過去数週間で著しく増加し、1月中旬には2.1%でしたが、3月第1週には35.9%に増加しました。しかし、シーズンの累計割合では、依然として、インフルエンザB型(5.2%)よりもインフルエンザA型(94.8%)が大部分を占めています。地域的には、インフルエンザB型の占める割合が増加したのは西部の州に集中しており、東部では減少しました。3月第1週に報告された小児のインフルエンザに関連した入院患者のうち、50%(26人中13人)がインフルエンザB型に関連していましたが、16歳以上では20%(15人中3人)がインフルエンザB型に関連していました。シーズン当初からの累計では、小児(16歳以下)の入院患者のうち9.9%(654人中65人)がインフルエンザB型で、成人(16歳以上)の入院患者のうち2.7%(1,385人中37人)がインフルエンザB型でした。シーズン当初から、国立微生物学研究所で703株のインフルエンザウイルスの抗原解析が行われ、463株がインフルエンザA(H3N2)で、93株がインフルエンザA(H1N1)pdm09で、147株がインフルエンザB型でした。インフルエンザA型は、すべて、今シーズンに北半球で使用されているワクチン株に抗原的に類似しており、インフルエンザB型ウイルスの多くは、今シーズンに北半球で使用されているワクチン株に抗原的に類似していましたが、147株中32株は前シーズンのワクチン株であったB/Brisbane/60/2008(ビクトリア系統)に類似していました。今シーズンは、オセルタミビルまたはザナミビルに対する耐性を示したインフルエンザウイルスはありませんでした。

 米国では、インフルエンザの活動性は12月下旬から1月上旬にかけてピークに達した後、ほとんどの地域で減少し続けていますが、3月第1週は依然として高い水準でした。国全体では、ILIの外来受診率は、前回の報告は2.8%でしたが、3月第1週には2.3%に減少しましたが、依然として、国の閾値である2.2%を若干上回っています。インフルエンザが陽性となった検体の割合は、前回の報告では16.8%でしたが、17.2%に若干増加しました。しかし、ピークとなった昨年最終週の38%に比べて低い状態が続いています。122都市の死亡報告システムを通して報告された肺炎とインフルエンザによる全死亡の割合は、1月第4週に9.8%とピークに達した後は減少し、3月第1週は7.7%でしたが、依然として流行閾値の7.5%を若干上回っています。このピークの値は、過去10年間では、2003年から2004年のシーズン(10.4%)に次いで、2番目に高い水準です。また、今シーズンは、これまでにインフルエンザに関連した小児の死亡は87人報告されました。インフルエンザに関連した小児の死亡は、2011年から2012年のシーズン中に34人、2010年から2011年のシーズン中に122人、2009年から2010年のシーズン(パンデミック)中に282人が報告されました。

 シーズン当初から、検査で確定診断されたインフルエンザに関連した入院患者は10,721人と報告されており(累積率では人口10万人当たり38.5)、過去3シーズンに比べて著しく高くなっています(2011年から2012年のシーズンは人口10万人当たり8.6、2010年から2011年のシーズンは人口10万人当たり21.4、2009年から2010年のシーズンは人口10万人当たり29.0)。65歳以上のインフルエンザによる入院患者の割合は、他の年齢層に比べて非常に高くなっており、51%を占めました。一方、他の年齢層では、入院患者の割合は例年と同様の水準でした。

 シーズン当初から検査されたインフルエンザウイルスのうち、76%がインフルエンザA型で、24%がインフルエンザB型でした。亜型が判明しているインフルエンザA型ウイルスのうち、96%がインフルエンザA(H3N2)でした。しかし、最近の数週間で、インフルエンザB型が検出される割合が増加しました。3月第1週は、インフルエンザが陽性となった検体の64%(1,074検体中689検体)がインフルエンザB型でした。この米国の傾向は、カナダとは対照的であり、カナダでは確定された検体のうち96.5%がインフルエンザA型でした。シーズン当初から、疾病予防管理センター(CDC)は1,472株のインフルエンザウイルスの抗原解析を行いました。このうち105株がインフルエンザA(H1N1)pdm09、937株がインフルエンザA(H3N2)、430株がインフルエンザB型でした。インフルエンザA型とB型ともに、多くの株は、今シーズンに北半球で使用されているワクチン株に抗原的に類似していました。インフルエンザB型ウイルス430株のうち122株はB/Victoria/02/87 –likeの系統でした。さらに、インフルエンザA(H3N2)のうち0.4%(937株中4株)はA/Victoria/361/2011に対して産生される抗血清の力価が低下しており、インフルエンザA(H1N1)pdm09のうち1%(105株中1株)はA/California/7/2009に対して産生される抗血清の力価が低下していました。シーズン当初から、インフルエンザA(H3N2)とインフルエンザB型ウイルスでは、ノイラミニダーゼ阻害薬であるオセルタミビルとザナミビルに対する耐性は認められませんでした。インフルエンザA(H1N1)pdm09は358株が検査され、オセルタミビル耐性株が2株報告されました。

 メキシコは、最近、更新データを報告しました。インフルエンザの活動性は、米国と同様であり、過去数週間で減少傾向にあり、主にインフルエンザA(H3N2)が検出されました。メキシコのインフルエンザの活動性は、米国よりも約2週間遅れてピークに達したようです。

ヨーロッパ

 ヨーロッパのインフルエンザの活動性は、依然として高い水準にありますが、特に西部では伝播が減少したと報告する国が増えました。西部では、ILIや急性呼吸器感染症(ARI)の受診率は1月最終週にピークに達しましたが、閾値を設定しているすべての国で、その閾値を上回っています。定点機関で採取された検体でインフルエンザが陽性になった検体の割合は前回の報告よりも減少しました。ヨーロッパ全域では、1月最終週に約60%とピークに達した後、2月最終週では49%(2,217検体中1,079検体)に減少しました。重症急性呼吸器感染症(SARI)のサーベイランスを実施している国で、1週間のSARIによる入院患者数もピークに達しましたが、東部ではピークに達していない国もあります。ロシアでは、2月最終週に、インフルエンザが陽性となった呼吸検体の割合が増加し、まだピークに達していないようです。

 ヨーロッパ死亡率監視プロジェクトに参加している15か国から報告された全死亡者数のデータによれば、現時点の超過死亡は閾値に近づいており、過去2年間のシーズンに比べ、全体的には低くなっています。ほとんどの国では、冬季の超過死亡は例年と比べ、中程度と考えられています。しかし、デンマークでは、超過死亡が最も多く、最も長期にわたって報告されており、インフルエンザの活動性はインフルエンザA(H3N2)が優勢です。

 ヨーロッパ大陸で、最も多く検出されているのはインフルエンザA (H1N1)pdm09ですが、地域によって差があります。今シーズンは、64,000株以上のインフルエンザウイルスが解析されました。このうち66%がインフルエンザA型で、34%がインフルエンザB型でした。亜型が判明したインフルエンザA型のうち、72%(27,810株中19,944株)がインフルエンザA (H1N1)pdm09で、28%(27,810株中7,866株)がインフルエンザA(H3N2)でした。しかし、フランス、アイルランド、イタリア、スペイン、英国では、インフルエンザB型が検出される割合が高くなっています。対照的に、東部ではインフルエンザB型の検出は非常に少数です。シーズン当初から、1,560株のインフルエンザA型ウイルスが解析されましたが、1,079株のインフルエンザA(H3N2)は、すべて、現在使用されている季節性の3価ワクチンに含まれるA/Victoria/361/2011(H3N2)-likeと抗原的に類似していました。解析された1,136株のインフルエンザB型ウイルスのうち、50%(1,136株中566株)はB/Estonia/55669/2011-like(B/Yamagata/16/88-lineage)と抗原的に類似しており、24%(1,136株中272株)はB/Wisconsin/1/2010-like(B/Yamagata/16/88-lineage)と抗原的に類似していました。

 2012年第40週から、ノイラミニダーゼ阻害薬であるオセルタミビルとザナミビルの感受性検査が11か国で合計730株について行われました。アミノ酸変異(H275Y)を有するノイラミニダーゼ阻害薬耐性株が5株検出されました。そのうち2株は英国で、オセルタミビルでの治療を受けていない外来患者から検出されました。他の3株は、オランダ(2株)とスイス(1株)で、オセルタミビルによる治療を受けた免疫抑制状態にある患者から検出されました。194株のインフルエンザA(H3N2)はオセルタミビルとザナミビルに感受性がありました。234株のインフルエンザB型のうち、233株はオセルタミビルとザナミビルに感受性がありましたが、英国で抗ウイルス薬による治療を受けていない患者から検出された1株はオセルタミビルによる阻害効果が減少していました。

アフリカ北部と東地中海地域

 アフリカ北部における、インフルエンザ陽性検体数は、過去数週間にわたって増加しました。アルジェリアとチュニジアでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザB型の伝播が増加したと報告されています。

 東地中海地域では、インフルエンザの活動性は2月第1週にピークに達した後、減少し続けています。この地域では、今シーズンはインフルエンザA(H1N1)pdm09が優勢です。イスラエルでは、3月第1週に活動性が比較的高いものの減少していると報告されています。

北アジア

 アジアの温帯地域では、ほとんどの地域でインフルエンザの活動性が減少し続けています。中国北部と日本では、約4週間にわたって、ILIの活動性と、ILI患者の検体でインフルエンザが陽性になったものの割合が減少しました。一方、モンゴルでは、依然として活動性が高く、まだ減少していないようですが、季節性の水準内です。韓国のインフルエンザの活動性は若干増加し続けており、まだピークに達していないようです。

 今シーズンに北アジアのほとんどの地域で最も多く検出されているのはインフルエンザA(H3N2)ですが、中国北部では、最近数週間でインフルエンザA(H1N1)pdm09が増加したと報告されています。中国北部で、3月第1週に検出されたインフルエンザウイルス75株は、すべてインフルエンザA型でした。このうち70.7%(75株中53株)はインフルエンザA(H1N1)pdm09で、28.0%(75株中21株)はインフルエンザA(H3N2)でした。今シーズン当初から中国国家インフルエンザセンターで亜型が解析されたインフルエンザウイルスのうち、インフルエンザA(H1N1)pdm09の99.2%(131株中130株)はA/California/7/2009-likeに類似しており、インフルエンザA(H3N2)はすべて(519株)A/Victoria/361/2011(H3N2)-likeに類似していました。また、インフルエンザB型では、インフルエンザB/Victoriaの96.5%(144株中139株)はB/Brisbane/60/2008-likeに類似しており、B/Yamagataはすべて(20株)B/Wisconsin/01/2010-likeに類似していました。3月第1週に検査された3株のインフルエンザA(H1N1)pdm09と4株のインフルエンザB型の株で、ノイラミニダーゼ阻害薬であるオセルタミビルとザナミビルに耐性のあるものはありませんでした。

熱帯地域

アメリカ大陸(中米、カリブ海諸国)の熱帯地域

 中米とカリブ海諸国では、インフルエンザの活動性は前週と比べ、ほぼ同じか減少し、晩夏のピークから減少し続けています。全体的には、ILIとARIの患者のほとんどがインフルエンザではない疾患と報告されており、RSウイルスとライノウイルスが最も多く報告されています。キューバではインフルエンザA(H1N1)pdm09が最も多く検出されており、ニカラグアではインフルエンザB型が最も多く検出されていると報告されています。

 南米の熱帯地域では、急性呼吸器疾患の活動性は低いままで、予想される水準に留まっています。ブラジル、エクアドル、ペルーでは、インフルエンザA(H3N2)とB型が少数報告されています。

中部アフリカ

 中部アフリカのほとんどの国では、インフルエンザの検出数は低くなっています。しかし、カメルーンとマダガスカルでは、わずかですが、インフルエンザB型の伝播が持続していると報告されています。

アジアの熱帯地域

 南アジアのインフルエンザの伝播は低い水準で、活動性は高くありません。タイでは、インフルエンザA(H3N2) とインフルエンザB型がともに伝播しています。この地域のほとんどの国では、ILIのサーベイランスで、3月第1週にインフルエンザが陽性になった検体は非常に少数か、無かったと報告しています。

 インドでは、過去数週間に比べ、低い水準でインフルエンザA(H1N1)pdm09が報告されており、さらに低い水準でインフルエンザB型も報告されました。パキスタンでは、インフルエンザの活動性は減少しており、インフルエンザB型のみが検出されていると報告されています。一方、スリランカでは、前週に比べてインフルエンザが陽性になった検体数が増加し、3種類の型・亜型がほぼ同じ割合で伝播していると報告されています。

南半球の温帯地域

 南半球の温帯地域のすべての国で、現在、インフルエンザの活動性は、シーズンオフの水準です。

出典

Influenza update 15 March 2013 - Update number 181
http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/latest_update_GIP
_surveillance/en/index.html