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サウジアラビアへの巡礼者に対するMERS(マーズ)コロナウイルスに関する暫定的な渡航時の助言

Ⅰ はじめに

 MERS(マーズ)コロナウイルス(MERS-CoV)の発生は、2012年に初めて報告され、これまでに9か国で患者が発生しました。世界保健機関(WHO)は、国際保健規則(IHR 2005)に基づき、この新たに発生したウイルスに世界的に対応するために調整を行っています。この助言は、これから数か月間にウムラ(Umra)やハッジ(Hajj)に巡礼するために渡航する方がいる国の保健当局に、MERS-CoVの輸入例の予防、発見、管理を行うための指針です。現時点では、個々の巡礼者がMERS-CoVに感染するリスクは非常に低いと考えられています。

Ⅱ リスクに関する情報に関する効果的なコミュニケーション

 国は、ウムラやハッジの巡礼に渡航する者(特に脆弱な集団)、保健担当者、病気にかかった巡礼者を診療する医療従事者、公共交通機関、旅行会社、一般国民といった、すべての重要な集団に対し、ウムラやハッジに巡礼する前、巡礼中、巡礼した後に、MERS-CoVの広がりに関する情報を伝えるために、実際的で効果的なすべての方法を使うことが重要です。

 2.1 ウムラやハッジに巡礼する前の行動

 国は、巡礼者に対し、重要な基礎疾患(たとえば、糖尿病、慢性肺疾患、免疫不全などの慢性疾患)は渡航中にMERS-CoVへの感染を含む疾患にかかるリスクが増加することがあることを助言すべきです。このため、巡礼者は、巡礼が望ましいかどうか、リスクを検討・評価するために、渡航前に医療従事者に相談するべきです。

 国は、出発する巡礼者と旅行会社に対し、インフルエンザや旅行者下痢症などの疾患を含む一般的な感染症のリスクを下げる一般的な衛生対策に関する情報提供を行うべきです。特に、以下の点を強調すべきです。
  ・石けんと水で手をしっかり洗うこと。汚れているように見えない時には手指消毒薬も使用する
  ことができます。
  ・加熱していない肉や不衛生な状況で用意された食品の摂取を避ける、果実や野菜は摂取す
  る前に適切に洗うことなどの食品衛生対策を行うこと。
  ・個人衛生対策を継続すること。
  ・農場の動物、家きん、野生動物に不用意に接触しないこと。

 保健に関する助言は、渡航部門を連携したり、重要な場所(たとえば、旅行会社の事務所や空港の出発場所)に資料などを置いたりすることによって、ウムラやハッジに出発するすべての渡航者が入手できるようにすべきです。
  ・航空機や船舶に搭乗する際の保健に関する警告、バナー、パンフレット、入国地点でのラジ
  オ情報など様々なコミュニケーション手段を使うことでも渡航者に情報が伝わります。
  ・渡航の際の助言には、MERS-CoVに関する最新情報と、渡航時に病気にかかることを予防
  するための指針を含むべきです。

  MERS-CoVのサーベイランス、感染予防と感染制御の方法、臨床管理に関する現時点におけるWHOの指針、またはこれに準じた国の指針は医療従事者や医療機関に配布すべきです。

 国は、MERS-CoVの検査を行うための適切な検査体制を確保し、医療従事者や医療機関 に対し、検査に関する情報と臨床的に照会を行う情報を伝えるべきです。

 巡礼者に同行する医療従事者は、感染早期の所見・症状を認識する方法、ハイリスクグループと考えられる人、感染が疑われる患者を発見した時の対処方法、感染を減らす簡単な予防方法を含む、MERS-CoVに関する情報と指針は常に最新のものを入手すべきです。

 2.2 ウムラやハッジに巡礼中の行動

 発熱、咳を伴った重症(日常生活に支障が出る程度)の急性呼吸器疾患が現れた渡航者は、以下の助言をされるべきです。
  ・他人の感染を予防するために、接触する人は最低限とすること。
  ・咳やくしゃみをする時はティッシュペーパーで口と鼻を覆い、使用したティッシュペーパーはご
  み箱に入れ、手を洗うこと。これができなければ、咳やくしゃみは衣服の袖で覆い、手を使用し
  ないこと。
  ・同行している医療従事者または地域の保健担当部署に報告すること。

 2.3 ウムラやハッジに巡礼した後の行動

 巡礼者が帰国してから2週間以内に、発熱、咳を伴った重症(日常生活に支障が出る程度)の急性呼吸器疾患が現れた場合には、医療機関を受診し、速やかに地域の保健当局に報告するように助言をされるべきです。

 発熱、咳のある重症(日常生活に支障が出る程度)の急性呼吸器疾患が現れた巡礼者や渡航者の濃厚接触者で、症状のある人はMERS-CoVの健康監視を行うため、地域の保健当局に報告するように助言をされるべきです。

 医療従事者や医療機関は、帰国した巡礼者で急性呼吸器疾患、特に、発熱、咳、肺実質性疾患(たとえば、肺炎、急性呼吸窮迫症候群)がみられた場合には、MERS-CoVに感染した可能性を警戒すべきです。臨床症状が、WHOの症例定義に一致した場合には、MERS-CoVの診断検査、感染予防・感染制御対策を実施すべきです。臨床医は、免疫不全患者では非典型的な症状を示すことも警戒すべきです。

Ⅲ 入国地点での対応と輸送について

 WHOは、入国時の特別なスクリーニングおよび渡航や貿易を制限することを推奨していません。

 WHOは各国に対し、巡礼者のみならず、輸送業者、地上職員など巡礼者の渡航に関連する人でのMERS-CoV感染のリスクを軽減するために、渡航時の助言や渡航者の自己申告に関する認識を向上するよう奨励しています。

 IHRが求めている通り、国は、輸送機関(航空機や船舶等)で発見された病気にかかった渡航者を評価するために、一定の対応方法を確保すべきです。また、発症した渡航者を、臨床評価と治療を行うために病院や指定された機関へ安全に搬送する方法も確保すべきです。

 もし、病気の渡航者が航空機に搭乗していた場合には、乗客所在地登録票(パッセンジャー・ロケーター・フォーム)が使用されることがあります。これは、乗客の接触情報を収集するのに有用で、接触者を経過観察する際に、必要に応じて使用されます。

出典

World Health Organization interim travel advice on MERS-CoV for pilgrimages to the Kingdom of Saudi Arabia
http://www.who.int/ith/updates/20130725/en/index.html#