2014年のニュース

日本脳炎について (ファクトシート)

2014年3月 WHO (原文〔英語〕へのリンク

要点

日本脳炎ウイルスは、デングウイルス、黄熱ウイルス、ウエストナイルウイルスと同様、フラビウイルス科フラビウイルス属のウイルスで、蚊によって広がります。
日本脳炎は、アジアの多くの国においてウイルス性脳炎の主な原因であり、毎年約6万8千人の患者が発生しています。
日本脳炎に感染しても発症することは稀ですが、脳炎患者の死亡率は30%ほどと高いです。脳炎を発症した患者の30%から50%に永久的な神経学的後遺症または精神的後遺症が生じることがあります。
WHOの南東アジア地域と西太平洋地域の24か国で日本脳炎が常在し、30億人以上に感染するリスクがあります。
日本脳炎に対する治療法はありません。治療は重症の臨床所見を緩和し、患者が感染を克服するのを支援することに焦点が当てられています。
日本脳炎を予防するために安全で有効性のあるワクチンが利用できます。WHOは、日本脳炎が公衆衛生上の問題として認識されているすべての地域で日本脳炎の予防接種を推奨しています。

 日本脳炎は、アジアにおけるウイルス性脳炎の最も重要な原因です。日本脳炎ウイルスは、蚊によって媒介され、デングウイルス、黄熱ウイルス、ウエストナイルウイルスと同様にフラビウイルス科フラビウイルス属のウイルスです。日本脳炎は、1871年に日本で初めて報告されました。

 疾患の年間発生率は、国や国内の地域によって異なり、人口10万人対10未満から100以上まで様々です。最近の文献の再調査では、世界で毎年約6万8千人の日本脳炎患者が発生し、最大で2万400人が死亡していると推計されています(2011年10月の世界保健機関紀要)。日本脳炎は、主に子どもに発生します。常在国の成人は、子どもの頃に感染して、自然免疫を有しますが、どの年齢層の人にも影響があるかもしれません。

所見と症状

 日本脳炎ウイルスに感染しても、ほとんどの場合は、軽症(発熱と頭痛)または症状が現れません。しかし、250人の感染者のうち約1人は、急速に出現する高熱、頭痛、項部硬直、見当識障害、昏睡、痙攣発作、痙性麻痺、死亡という重い症状で発症します。発症した人の致死率は30%ほどと高いです。

 生存者の20%から30%は、麻痺、反復性の痙攣発作、緘黙症(言語障害)などの永久的な知的障害、行動障害、神経障害に苦しみます。

伝播

 WHOの南東アジア 地域と西太平洋地域の24か国で日本脳炎が伝播するリスクがあり、30億人以上に感染するリスクがあります。

 日本脳炎は、感染したイエカ属の蚊(主にコガタアカイエカ)に刺されることで人に感染します。人は感染しても、蚊を感染させるほどのウイルス血症に進展しません。日本脳炎の生活環は、蚊、豚または水鳥の中で存在しています。日本脳炎は、主に、農村部や都市の周辺で、宿主となる脊椎動物の近くで人が生活している状況でみられます。

 アジアの温帯地域のほとんどでは、日本脳炎は主に暖かい時期に伝播し、大規模な流行が起こることがあります。熱帯地域と亜熱帯地域では、伝播は一年中起こることがありますが、米を栽培している地域では、しばしば雨期と収穫前の時期に伝播が強くなります。

診断

 日本脳炎が常在する地域に住む人や、常在する地域への渡航者で、脳炎を発症した人は、日本脳炎の疑い患者と考えられます。日本脳炎を確定し、脳炎の他の原因を除外するために、血清または脳脊髄液の検査が必要であり、脳脊髄液の検査が優先されます。

 疾患のサーベイランスは、ほとんどが急性脳症の症候群サーベイランスです。指定された定点機関における確定検査はしばしば行われており、検査に基づいたサーベイランスを広げるための取組も行われています。患者発生報告によるサーベイランスは、日本脳炎の予防接種により、日本脳炎が効果的に制御された国で実施されています。

治療

 日本脳炎の患者に対する抗ウイルス薬による治療はありません。患者の症状を軽減し、安定させるための支持療法が行われます。臨床管理の指針はPATH(保健分野における適切な技術を導入することを目的に設立された非政府組織)によって作成されました。

予防と制御

 疾患を予防するために安全で有効性のある日本脳炎ワクチンが利用できます。WHOは、日本脳炎が公衆衛生上の問題として認識されているすべての地域における日本脳炎ワクチンの予防接種とサーベイランスと報告体系の強化を含む強力な予防及び制御活動を推奨しています。蚊の制御や増幅動物である豚の制御などの他の制御方法は、信頼性が低いことが示されました。

 現在使用されている主な日本脳炎ワクチンは4種類あり、マウス脳由来の不活化ワクチン、細胞由来の不活化ワクチン、弱毒生ワクチン、キメラウイルスを使用した生ワクチンです。伝統的に広く使用されたワクチンは、中山株または北京株をマウスの脳組織の中で増殖させ、不活化し、精製された製品した。このワクチンは、依然として数か国で生産され、使用されています。

 過去数年間で、中国で製造されたSA14-14-2という弱毒生ワクチンが常在国で最も広く使用されたワクチンになりました。WHOは、2013年10月、このワクチンの事前資格審査を行いました。細胞培養による不活化ワクチンも、黄熱ワクチン株によるリコンビナント生ワクチンとともに承認されました(1つの製品はWHOによる事前資格審査が行われました)。2013年11月、GAVIは日本脳炎の予防接種のキャンペーンを行う必要のある国におけるキャンペーンの実施を支援するために資金提供を行う窓口を開設しました。

 日本脳炎が常在する地域への渡航者はすべて、日本脳炎のリスクを軽減するために、蚊に刺されないように予防策を行うべきです。個人で行う予防策には、虫よけ剤の使用、長袖と長ズボンの着用、蚊取線香やその他の殺虫剤用噴霧器の使用が含まれます。

疾患の集団発生

 日本脳炎の大規模な集団発生は、2年から15年ごとに発生します。日本脳炎の伝播は、媒介蚊が増加する雨期に強まります。しかし、大規模な洪水や津波の後に日本脳炎の伝播が増加したという根拠はまだありません。新たな地域における日本脳炎の拡大は、灌漑計画に支えられた農業開発と集約的な米の栽培に関連していました。

 日本脳炎に対するWHOの対応は下記の通りです。

ワクチンの使用を含む日本脳炎を制御するための世界的な推奨を提供すること。WHOは日本脳炎が公衆衛生上の問題として認識されているすべての地域で日本脳炎の予防接種を推奨しており、予防接種を実施するための支援を行っています。

日本脳炎のサーベイランス、日本脳炎ワクチンの導入、大規模な日本脳炎の予防接種キャンペーンに関する技術的な支援を提供すること。

出典

WHO Fact sheet No 386  Japanese encephalitis  March 2014
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs386/en/