世界におけるインフルエンザの流行状況について(更新7)

2014年4月22日 WHO(原文〔英語〕へのリンク[PDF形式:854KB]

要約

世界的にみて、北半球でのインフルエンザシーズンはほとんどの国でシーズンオフの水準に近づきつつあるようです。インフルエンザの検出数が減少するにつれて、インフルエンザB型の検出数の割合が多くの地域、特にアジア、中東、北米でわずかに増加しました。

  • 北米におけるインフルエンザの水準は、減少し続けています。シーズン終盤のインフルエンザB型の循環は続いていますが、全体的なインフルエンザの検出数は少ないままでした。
  • ヨーロッパでは、地域のインフルエンザシーズンは終息に向かいつつあると考えられ、インフルエンザの活動性は低下し続けています。インフルエンザ検査検体の中でインフルエンザが陽性となる割合は高くなっていましたが、全体として検体数は減少していました。インフルエンザA (H3N2)とA(H1N1)pdm09の両者とも循環しており、インフルエンザBウイルスが少数検出されました。東ヨーロッパでは、北ヨーロッパや南西ヨーロッパに比べ、シーズン後期でのインフルエンザの活動性が高かったのですが、検出数は同様に減少し始めました。
  • 東アジアでは、インフルエンザの活動性はシーズンオフの水準になり、インフルエンザBが、検出されたインフルエンザの大部分を占めていました。
  • アジアの熱帯地域では、インフルエンザの活動性は低下し続けました。
  • 北アフリカと西アジアでは、ほとんどの国でインフルエンザの活動性は低いままで、検出されたウイルスでは、インフルエンザBが優勢でした。
  • 南半球では、インフルエンザの活動性は低いままで、散発的に検出されていました。
  • FluNet(4月15日時点)によれば、第13週から第14週(3月23日から4月5日)の間、82の国・地域にある国のインフルエンザ・センターやその他の国内のインフルエンザ研究施設からデータが報告されました。WHO世界インフルエンザサーベイランス及び対応システム(GISRS)の検査施設では、44,319以上の検体を検査しました。インフルエンザが陽性となったのは6,717検体で、このうち4,163検体(62%)がインフルエンザAで、2,554検体(38%)がインフルエンザBでした。亜型が解析されたインフルエンザA型ウイルスのうち、1,149検体(47.2%)がインフルエンザA(H1N1)pdm09、1,287検体(52.8%)がインフルエンザA(H3N2)でした。解析されたインフルエンザB型ウイルスのうち、224検体(83%)が山形系統で、46検体(17%)がビクトリア系統でした。

北半球の温帯地域

北米

北米では、全体のインフルエンザ活動性は前週に比べて少し低下し、1月にピークを迎えた後、引き続き減少傾向を示しました。インフルエンザBが検出された株の大部分を占めており、シーズン早期、インフルエンザA(H1N1)pdm09が最も頻繁に検出された時点からの変動がみられました。しかし、全体としての活動性は低下し、2013~2014シーズンで最も高い頻度で検出されたのはインフルエンザA(H1N1)pdm09のままでした。

カナダでは、インフルエンザの活動性は全体的に少し低下しましたが、インフルエンザBの水準は上昇し続けていました。インフルエンザB型ウイルスは、この数週間に検出される大部分を占めており、今シーズンは2012~2013シーズンの同時期に比べてインフルエンザB型がやや多めに検出されました。しかし、インフルエンザの活動性の水準は年間でこの時期に予想される範囲にとどまっており、このシーズンでは依然としてインフルエンザA(H1N1)pdm09が優勢なウイルスでした。

米国では、ほとんどの地域でインフルエンザの活動性が依然として少し低下し続けました。カナダと同様に米国でも、この数週でインフルエンザBの検出割合が増加しました。肺炎およびインフルエンザに起因する死亡割合は流行状況とする閾値を下回っており、ILI(インフルエンザ様疾患)で受診した外来患者の割合は1.6%で、国の基準値である2.0%より低い水準でした。

メキシコでは、引き続きインフルエンザの活動性は低下し続け、肺炎の割合はこの時期として予想される水準の範囲でした。この数週では、検査でインフルエンザ陽性となる検体に占めるインフルエンザBの割合は、24%から38%に増加しました。この傾向はこの地域の他の諸国と同様であり、全体の検出数は依然低値でした。メキシコでみられた諸指標からは、インフルエンザシーズンがほぼ終わりに近づいたことが示唆されました。

ヨーロッパ

ヨーロッパでは、インフルエンザの活動性は、全体的に低下しました。インフルエンザ検体における陽性率の上昇が観察されましたが、全体の検体数は減少しました。大部分の国でインフルエンザの活動性は不変か低下傾向で、低い水準であると報告されました。インフルエンザA(H1N1)pdm09およびA(H3N2)ウイルスがヨーロッパ地域全体で循環しており、国によってどちらが優勢なのか、ともに優勢なのかについてばらつきがみられましたが、インフルエンザBの循環は非常に限られていました。東ヨーロッパでは、ヨーロッパの他の地域に比べ、インフルエンザの活動性がシーズンの後半に上昇しましたが、低下傾向を示し始めました。これは南西部ではより早期にシーズンが始まったのに対して、東部ではより後期にシーズンが始まったことによる可能性があります。東ヨーロッパでは、インフルエンザBとともにインフルエンザAの両方の亜型が検出されましたが、大部分はインフルエンザA(H3N2)でした。ヨーロッパ北部および南西部ではインフルエンザの検出数は減少し続けており、活動性は全般的に低い状態でした。全体として、ILIやARI(急性呼吸器感染症)のために医療機関を受診する割合はほとんどの国で基準値に復し、インフルエンザが陽性となったSARI(重症呼吸器感染症)患者の割合は引き続き減少しました。

アフリカ北部、西アジア、中央アジア

中央アジアと西アジアでは、ほとんどの国でインフルエンザの活動性は低いままでした。イランおよびトルコでのインフルエンザの水準は低いと報告され、検出されたウイルスの大部分がインフルエンザBでした。イスラエルとパキスタンではインフルエンザの検出数の減少が報告されましたが、全体としてのインフルエンザの活動性は依然としてやや上昇していました。

東アジア

東アジア地域では、インフルエンザの活動性は低下し続けました。インフルエンザA(H1N1)pdm09、A(H3N2)、インフルエンザB型ウイルスがともに循環しましたが、インフルエンザBがA(H1N1)pdm09を超えて現時点では優勢なウイルスでした。中国では、インフルエンザの活動性は減少を続け、シーズンオフの水準になりました。中国では、北部および南部の両地域でインフルエンザBが優勢であり、インフルエンザA(H1N1)pdm09およびA(H3N2)の検出数は低値でした。最近インフルエンザBが増加しましたが、中国で今シーズン優勢であるウイルスは依然としてインフルエンザAでした。

モンゴルではILIの活動性は減少し続け、数週の間では初めてモンゴルの許容値上限の60%をほぼ割り込みました。検体に占めるインフルエンザ陽性の割合と入院を要した肺炎患者数もまた減少し続けました。4月上旬に検出されたウイルスで優勢だったのは、インフルエンザBであり、今シーズンの早期により高い水準で循環していたインフルエンザA(H1N1)pdm09およびA(H3N2)を凌駕しました。このパターンは東アジア地域内の他の地域で観察された傾向に沿ったものでした。日本では、インフルエンザの活動性が低水準であることが報告され、前週に比して減少していました。韓国では、東アジア地域の他の国と同様に、インフルエンザの活動性が低下し、インフルエンザBが検出数の大部分を占めました。韓国でのILIの活動性は低下傾向を示しましたが、国の基準値である12.1%をやや上回ったままでした。

熱帯地域

アメリカ大陸の熱帯地域/中米とカリブ海諸国

中米、南米の熱帯地域におけるインフルエンザの活動性は、全体として低い水準でした。カリブ海諸国の数カ国では、過去の数週間でインフルエンザの活動性がやや増加していましたが、新たに入手できた情報は限られています。

中部アフリカの熱帯地域

アフリカでは、インフルエンザの活動性は全体的に低い水準でした。西アフリカでは低い水準でインフルエンザBが循環しました。

アジアの熱帯地域

ほとんどの東南アジア諸国では、インフルエンザの活動性は低下するか、低い水準にとどまりました。インドネシア、ラオス、タイではインフルエンザの活動性は低下しました。タイでは、インフルエンザA (H1N1)およびインフルエンザBの両者が循環し、インドネシアでは、インフルエンザA (H3N2)およびインフルエンザBの両者が循環しました。

南半球の温帯地域諸国

南半球におけるILIの活動性は、依然として比較的低いままで、インフルエンザA(H1N1)pdm09、A (H3N2)、インフルエンザBが低い水準で循環していました。

出典

Influenza update22 April 2014 - Update number 209
http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/2014_04_22_
surveillance_update_209.pdf?ua=1[PDF形式:853KB]