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条虫症/囊虫症について (ファクトシート)

2014年5月 WHO (原文[英文]へのリンク

要点

条虫症は条虫の成虫による腸管感染症です。
条虫症は不十分に調理された豚肉や牛肉にいる条虫の幼虫嚢胞(嚢虫)を不注意に経口摂取したヒトに感染し発症します。
ヒト条虫キャリアは便中に条虫卵を排出し、環境を汚染します。
嚢虫症は、条虫卵を摂取した結果、囊虫によって引き起こされる組織の感染症です。無鉤条虫T.saginataではなく、有鉤条虫T.soliumの囊虫は人間に感染できます。
中枢神経で成長した嚢胞は神経囊虫症を起こします-多くの発展途上国でこの疾患の最も重篤な形態で、主な予防可能なてんかん(発作)の原因のひとつです。
てんかんに罹っている世界の5,000万人の80%以上は低所得と低中所得の国々に住んでおり、その多くの国にはヒトとブタの有鉤条虫症が常在しています。

 条虫症は2種類の条虫によって起きる腸管感染症です。最も重要なヒト条虫感染症は有鉤条虫(ブタ条虫)と無鉤条虫(ウシ条虫)によって起きます。

 ヒトは十分に調理されていない牛肉を摂食したときに無鉤条虫に感染します。無鉤条虫による条虫症は通常、人の健康に与える影響は軽微です。

 ヒトが生または加熱が不十分な豚肉(有鉤条虫)を食べるとまたヒト感染が起こります。深刻な疾患-囊虫症-の原因になり得るため、有鉤条虫感染症は非常に重要です。

 囊虫症は、幼虫期の条虫(囊虫)の感染症です。囊虫は筋肉、皮下組織、眼や脳のような体内の多くの組織で成長することができます;中枢神経に存在する囊虫は神経囊虫症、この疾患の最も深刻な状態を起こします。

 神経囊虫症はヒト中枢神経の一般的な感染症であると考えられ、発展途上国で最も頻度の高い予防可能なてんかんの原因です。てんかんに罹っている世界の5,000万人の人々の80%以上は低所得と低中所得の国々に住んでおり、その国の多くはヒトとブタの有鉤条虫症が常在しています。

 ヒトのてんかんや死亡につながる可能性があるため、囊虫症は主にアフリカ、アジア、ラテンアメリカの発展途上国で実質農業社会の健康と生活に影響します。また、豚や牛の市場価値を下げ、豚肉と牛肉の食の安全を損ないます。

 理論的に制御可能で、1993年に疾病根絶の国際タスクフォースにより根絶可能と宣言されましたが、有鉤条虫囊虫症は顧みられない疾患のままであり、2010年には主要な顧みられない熱帯病のリストにWHOにより加えられました。

伝播

 条虫症は、調理が不十分な豚肉や牛肉中の囊虫を不注意に摂食することでヒトに獲得されます。

 一度人の体内に入ると、囊虫は腸管内で成虫の条虫となって寄生し、便とともに卵保有分節片(セグメント)を放出します。

 囊虫症は、片節や虫卵を摂取したときに感染します。豚や牛の自然の感染症ですが、有鉤条虫症例ではまた、通常、有鉤条虫卵に汚染された土壌、水、食べ物(主に野菜)を摂取するとき、人は感染し得ます。

 条虫症と囊虫症は豚や牛が人の便に接触するような畜産が行われる地域で一般的です。

症状

 有鉤条虫や無鉤条虫による条虫症は通常軽度で非特異的な症状により特徴づけられます。囊虫を経口摂取後6-8週間で条虫にまで十分成長しますがその頃、腹痛、吐き気、下痢や便秘が発現する可能性があります。

 これらの症状はその後の治療で条虫が死ぬまで続く可能性があります。(治療しければ何年も寄生する可能性があります)

 有鉤条虫の囊虫症の症例では潜伏期間は様々で、感染したヒトは何年も無症状のままの可能性があります。

 いくつかの流行地域(特にアジア)では、感染したヒトで皮膚の下(皮下)に肉眼的または触知可能な結節(触知で検出できる小さい瘤や結節)が形成される可能性があります。

 嚢胞が自然変性を起こしたりまたは治療によって宿主が嚢胞に気付くときに、炎症反応が起こっていることがあります。

 神経囊虫症は、宿主の免疫応答や寄生虫の遺伝子型に加え、寄生虫数、大きさ、病期と病理学的変化を起こしている場所に応じた様々な症状や所見が関連しますが、臨床的に無症状なこともあります。症状には、慢性頭痛、失明、発作(再発性の場合はてんかん)、水頭症、髄膜炎、認知症および中枢神経系病変の占拠部位に起因する症状を含みます。

治療

 条虫症はプラジカンテル(5-10mg/kg、一回投与)またはニクロサミド(大人と6歳より大きい子供:2g、下剤使用2時間後、軽い朝食後に一回投与; 2-6歳の子供:1g; 2歳未満の子供:500mg)    で治療することができます。

 現在のところ、神経囊虫症に対する標準ガイドラインは存在せず、治療は個々の症例に合わせて調整する必要があります。嚢胞の破壊は炎症反応につながる可能性があるので、活動性疾患の治療は、コルチコステロイドおよび/または抗てんかん薬の支持療法、そして時には手術とともに、プラジカンテルおよび/またはアルベンダゾールの長期の治療コースが挙げられます。投与量と治療期間は、主に嚢胞の数、大きさ、場所、嚢虫の成長段階、嚢虫を取り巻く炎症性浮腫、臨床症状や所見の急性度や重症度に依存し、大幅に変わる可能性があります。

予防と制御

 無鉤条虫感染症は低病原性(宿主から宿主に広がる力が低い) なので個々の臨床的取り組みで管理できます。

 これとは対照的に、有鉤条虫感染症は、予防や制御やできるかぎりの排除を目的とした適切な公衆衛生上の介入が必要です。

 有鉤条虫の制御のため8つの主要な介入
  1 予防化学療法の利用(アクセス)
  2 条虫症症例の道程と治療
  3 健康教育
  4 衛生設備の改善
  5 豚飼育の改善
  6 豚の駆虫治療
  7 豚の予防接種
  8 食肉検査と食肉加工過程の改善

 ヒトや豚の有鉤条虫の条虫症/囊虫症の地理的分布に関する信頼できる疫学的データはまだ不足しています。

 適切な監視メカニズムは、リスクの高い地域社会を特定し、そのような地域で予防と制御措置にフォーカスを当てることを手助けするために、ヒトやブタの囊虫症の新規症例が記録されることを可能にするべきです。症例の報告義務制度は、介入の効果的戦略を目的として、高く支持されています。

WHOの役割

 2009年の食品媒介条虫感染症及び条虫症/囊虫症に関するWHO専門家会議を踏まえ、WHO顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases: NDT)のロードマップは2015年までに有鉤条虫/(神経)囊虫症を制御するための戦略を先導し、2020年までに選択された流行国で規模を拡大することを目指します。

 非公式協議は、選択された国、専門家、戦略的パートナーとともに2014年7月にWHOで開催されます。協議は、有鉤条虫の伝播を中断するためにそして症例の検出と神経囊虫症の管理を改善するために現在利用可能なツールを使い、国々の「ベストフィット」の戦略を特定することを目指します。低資材下での設定に焦点を当てた文献の系統的再検討を通してエビデンスが照合されています。

 予備調査結果は、有鉤条虫による疾患を管理するために単一介入では不十分であることを強固にしています。獣医師や食品安全部門や他部門との作業が、疾患の負担を長期的に削減し、一連の食品価値を安全に防護するために必要でしょう。

出典

WHO Fact sheet N°376, Update May 2014
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs376/en/