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狂犬病について (ファクトシート)

2014年8月 WHO (原文[英語]へのリンク

要点

狂犬病は150以上の国・地域で発生しています。
毎年、60,000人以上の狂犬病による死亡者が発生しており、主に、アジアとアフリカで発生しています。
狂犬病が疑われる動物に咬まれた人の40%は15歳未満の小児です。
人の狂犬病による死亡の原因の大多数は犬です。
狂犬病が疑われる動物と接触した後、数時間以内に傷を洗浄し、予防接種を受けることにより、狂犬病の発症と死亡を防ぐことができます。
毎年、狂犬病を予防するために世界で約2,900万人が暴露後接種を受けていて、推計21億米国ドルの費用がかかっています。

 狂犬病は、ウイルスによって起こる動物由来感染症(動物からヒトに伝搬する疾患)です。この疾患は、飼育されている動物にも、野生動物にも感染します。咬傷や擦過傷を通して、通常は唾液と濃厚接触することによって人に広がります。

 狂犬病は、南極大陸を除くすべての大陸に存在します。しかし、人の死亡の95%以上はアジアとアフリカで発生しています。狂犬病は、発症すると、ほぼすべての人が死亡します。狂犬病は、死亡がめったに報告されることのない、貧しくて脆弱な集団における顧みられない疾患です。主に、犬から人に伝播することを防ぐための対策が実施されていない遠隔地の農村部で発生します。

 100か国以上が、犬が人を危険にさらす狂犬病の症例を報告しています。犬のワクチン接種率を少なくとも70%にすることで、犬および人への伝播のサイクルを断ちます。安全で効果的かつ手ごろな価格のイヌ狂犬病ワクチンが利用できます。狂犬病の排除に着手する国々は、予防接種キャンペーンおよび感染管理のために、品質が保証されたイヌワクチンの利用が容易であることが必要です。

症状

 狂犬病の潜伏期間は、一般的には1か月から3か月ですが、1週間未満から1年以上と幅があります。狂犬病の初発症状は発熱のほか、しばしば、創傷部位の痛み、異常で説明のつかないひりひりする痛みやちくちくする痛み、灼熱感(錯感覚)があります。

 ウイルスが中枢神経系に広がるにつれ、脳と脊髄に、進行性で致命的な炎症が生じます。

 発症すると2つの病型があります。狂躁型の狂犬病では、活動性の亢進、易興奮性、恐水症状、また時々、恐風症状が現れます。数日後に、心肺停止によって死亡します。

 麻痺型の狂犬病は、人の狂犬病の総数の約30%を占めます。狂躁型よりも劇症ではなく、通常、長い経過をたどります。筋肉は、咬傷または擦過傷の部位から、徐々に麻痺が生じます。昏睡は徐々に進行し、結果的に死亡します。麻痺型の狂犬病は、しばしば誤診され、疾患の過少報告につながっています。

診断

 発症する前に狂犬病の感染を診断できる検査はありません。また、狂犬病に特有の恐水症状や恐風症状が出現するまでは、臨床診断が難しいことがあります。人の狂犬病は、脳脊髄液中の全ウイルス、ウイルス抗原、ウイルス特異的抗体や感染した組織(脳、皮膚、尿、唾液)中の核酸を標的とした様々な診断技術によって、生検と解剖のいずれの方法でも確定検査を行うことができます。

伝播

 人は、通常、感染した動物に深く咬まれたり、引っ掻かれたりすることで感染します。犬は、狂犬病の主な宿主であり、媒介動物です。 犬は、アジアとアフリカで毎年5万人と推計される人の狂犬病死亡のすべての感染源です。

 コウモリは、アメリカ大陸におけるほとんどの狂犬病死亡の感染源です。 また、コウモリの狂犬病は、最近、オーストラリア、西ヨーロッパで公衆衛生上の脅威となっています。キツネ、アライグマ、スカンク、ジャッカル、マングースや他の野生の肉食動物種からの感染による人の狂犬病死亡は、非常に稀です。

 感染性物質(通常は唾液)によって伝播することもあります。人の粘膜や新しい傷に感染性物質が直接接触することによって伝播することがあります。人が人を咬むことによるヒト-ヒト感染は理論上起こり得ますが、確認されていません。環境の変化や野生生物と人との密接な接触は、狂犬病に感染した野生生物種に人が暴露する機会の増加につながる可能性があります。

 稀に、狂犬病はウイルスを含むエアゾールの吸入や、感染した臓器の移植を通して感染するかもしれません。狂犬病に感染している動物の生肉または他の組織の摂取は、人の感染源になりません。

暴露後予防(post-exposure prophylaxis : PEP)

 暴露後予防は、以下の3つの方法から成ります。

暴露後、可能な限り早期に創部の処置を開始する
WHOの推奨に合う効果的な狂犬病ワクチンを規定の回数接種する
適応がある場合には、狂犬病の免疫グロブリンの投与を行う

 狂犬病に暴露後、早期に効果的な治療を行うことで、狂犬病の発症と死亡を防ぐことができます。

創部の処
 感染部位から、化学または物理的な方法で狂犬病ウイルスを除去することは、効果的な予防方法です。したがって、狂犬病ウイルスで汚染されているかもしれないすべての咬傷と擦過傷を迅速に処置することは重要です。推奨される救急処置は、迅速かつ徹底して、石鹸、水、洗浄剤、ポピドンヨードまたは狂犬病ウイルスを殺す他の物質で最低15分間、創部を洗い流すことです。

推奨される暴露後予防
 暴露後予防は狂犬病が疑われる動物との接触状況によって異なります(下表参照)。

<表>接触状況の区分と推奨される暴露後予

狂犬病が疑われる動物との接触状況による区分 暴露後予防の方法
区分1-動物に触れた。動物に餌を与えた。動物に正常な皮膚をなめられた。 なし
区分2-素肌を軽くかじられ、出血のない小さな擦過傷ができた。 迅速なワクチン接種と創部の処置
区分3-単回または複数回の皮膚を貫く咬傷・擦過傷ができた。傷のある皮膚をなめられた。なめられて粘膜が唾液に汚染された。コウモリと接触した。 迅速なワクチン接種、狂犬病免疫グロブリンの投与、創部の処置

 区分2と区分3の暴露はすべて、狂犬病を発症するリスクがあると評価され、暴露後予防が必要です。このリスクは、以下の場合に高くなります。

咬まれた動物が既知の狂犬病保有種または媒介種である場合
咬まれた動物が病気のように見えたり、異常な行動を起こしたりしている場合
傷や粘膜が動物の唾液で汚染された場合
動物を刺激せずに咬まれた場合
予防接種を受けていない動物と接触した場合

 開発途上国では、暴露後予防をするかしないかを決める際に、疑われる動物の予防接種歴のみで考慮すべきではありません。

 濃縮精製細胞培養および孵化卵狂犬病ワクチン(併せてCCEEVsと称する)は、狂犬病予防に安全かつ有効であることが証明されており、暴露前および暴露後予防の両方に向けてつくられています。ワクチンの投与には、筋肉内投与と皮内投与の2つの経路があります。これらのワクチン投与のうち皮内投与は、筋肉内投与と同様に安全で免疫効果が得られ、かつコストが60-80%低くなっています。皮内投与のCCVs(細胞培養ワクチン:cell culture vaccines)は、筋肉内投与の狂犬病ワクチンが要求されるのと同様のWHOの生産と制御の要件を満たす必要があります。

リスクの高い人

 犬の狂犬病は、アジアとアフリカで30億人以上の人に潜在的な脅威となっています。死亡者の大半(80%以上)は、適切な暴露後予防へのアクセスが制限されたり、存在しない貧しい農村部で発生します。農村部の一部では、暴露後予防のフルコースは平均年収の45%相当の費用がかかります(投与した場合)。

 アジアやアフリカでは、1日の平均収入が1人当たり約1-2米ドルにもかかわらず、狂犬病が疑われる動物との接触後の狂犬病暴露後の平均コストは、アフリカで40米ドル、アジアで49ドルなので、より高い危険にさらされています。

 狂犬病は、すべての年齢層で影響を受けますが、15歳未満の小児で最もよくみられます。平均して、暴露後予防の平均40%は5歳から14歳の小児に投与されており、その多くは男児です。

 居住環境や職業状況により、狂犬病ウイルスへの暴露の危険性が継続しているか、頻繁であるか、増加した人は、誰もが狂犬病に感染するリスクがあります。即時に適切な治療を受ける機会が制限されるかもしれない、農村部のリスクの高い地域で、広範囲な戸外で活動する渡航者は、滞在期間を問わず、危険にさらされていると考えなければなりません。狂犬病汚染地域に暮らしていたり訪問している小児には、特にリスクがあります。

予防

犬の狂犬病の排
 狂犬病はワクチンで予防可能な疾患です。人の狂犬病を予防するために最も費用対効果の高い戦略は、犬に予防接種をして狂犬病を排除することです。数か国、特にラテンアメリカでは、動物(大部分は犬)に予防接種をすることで、人(と動物)の狂犬病の患者数が減少しました。犬のワクチン接種率を少なくとも70%にすることで、犬および人への伝播のサイクルを断ちます。しかし、アフリカ、アジア、ラテンアメリカの一部では、最近、狂犬病による死亡者が増加しており、狂犬病は深刻な公衆衛生学的問題として再興していることが示唆されています。

 アフリカとアジアの大部分の地域では、国内の犬の狂犬病をコントロールすることで、人の狂犬病を予防することが現実的な目標であり、人への暴露後予防の中止という将来的な節約ができるということで、財政的に正当化されます。安全で効果的かつ手ごろな価格のイヌ狂犬病ワクチンが利用できます。狂犬病の排除に着手する国々は、予防接種キャンペーンおよび感染管理のために、品質が保証されたイヌワクチンが容易に利用できることが必要です。

 地域社会の参加、教育、啓発が、狂犬病制御プログラムの成功の重要な要素です。地域社会は犬に責任をもち、犬の咬傷を防止し、咬まれたときに何をすべきかを知っている必要があります。

人の予防接種
 安全で効果的な予防接種が暴露前予防に使われます。暴露前予防は、著しく暴露するリスクのある地域への長期滞在者や国外居住者の他、戸外、特に農村部で多くの時間を過ごす渡航者でサイクリング、キャンプ、ハイキングをする人に推奨されます。また、暴露前予防は、生きた狂犬病ウイルスや、その他の狂犬病に関連したウイルス(リッサウイルス)を扱う検査施設で働く人や、狂犬病常在地域で、コウモリや肉食動物、その他の哺乳類と直接接触する専門的または非専門的な活動をするような、リスクの高い仕事の人にも推奨されます。小児は、動物と遊びたがる傾向があり、重い咬傷を受けるかもしれず、咬まれたことを伝えないかもしれないため、高いリスクがあると考えられており、感染するリスクの高い地域に住んだり訪問したりする場合には、予防接種が検討されます。

 暴露前予防接種は現在、医療機関へのアクセスが制限されている遠隔地の人々に対してコウモリの狂犬病の感染を防ぐために、一部のラテンアメリカで行われています。

WHOの対

 WHOは、少なくても30年間、新しいツールを用いたアドボカシーや調査研究を通じて、特に、低所得国と中所得国で、狂犬病の予防と制御に影響を及ぼしている"顧みられないサイクル"を断ち切ろうとしてきました。

 国際連合食料農業機関(FAO:Food and Agriculture Organization)、世界動物保健機関(World Organization for Animal Health)、狂犬病制御世界同盟(GARC:Global Alliance for Rabies Control)と共同で、WHOは、犬の狂犬病の排除を進め、また、暴露後予防に皮内接種を広く使用することにより、細胞培養ワクチンの費用を60%から80%削減し、人の狂犬病の予防を進めています。

 WHOは、2015年までに、ラテンアメリカのすべての国で人と犬の狂犬病を排除するという目標と、2020年までに、東南アジアで犬から伝播する人の狂犬病を排除するという目標を支援しています。東南アジアでは、地域の5か年計画(2012年~2016年) で、現在の常在国における狂犬病の推計死亡者数を半分に減少することを目指しています。

出典

WHO. Rabies. Fact sheet N°99. Updated August 2014.
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs099/en/