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エボラ出血熱について (ファクトシート)

2014年9月 WHO (原文〔英語〕へのリンク

要点

エボラウイルス病は、以前からエボラ出血熱として知られているとおり、人において重症となり、しばしば死に至る病気です。
ウイルスは野生動物から人にうつり、生活環境では人から人へも感染し拡がります。
エボラウイルス病の致死率は平均して50%前後になります。過去の流行では、致死率は25%から90%の間で変動しています。
エボラウイルス病の最初の流行は、アフリカの中部の熱帯雨林に近い僻村で発生しましたが、西アフリカでの最近の流行は僻村だけでなく主要都市でも発生しています。
地域社会への関与が流行を制御するための鍵となります。流行の制御の成功は、症例の管理、調査研究と接触者の追跡、収集能力をもった検査体制、安全な埋葬、社会資源の動員、即ち、介入に一連の組立を作ることに依存しています。
補液による初期の支持療法、対症療法は生存率を向上させます。まだ、ウイルスを中和し改善させるような承認された治療法はありません。しかし、ある種の血液療法、免疫療法、薬物療法は開発途上にあります。
現在、承認されたエボラのワクチンはありません。しかし、2種類の有望なワクチン候補が評価の段階にあります。

背景

 エボラウイルスは、治療をしなければ、しばしば死に至る急激かつ重篤な病態を引き起こします。エボラウイルス病は、1976年の同時期に、スーダンのンザラとコンゴ民主共和国のヤンブクの2か所で初めて発生しました。後者は、エボラ川の近くの村で発生し、疾患名は川の名前にちなんで名づけられました。

 西アフリカでの現在の流行(2014年3月に初発例が確認されたもの)は、エボラウイルスが1976年に最初に確認されて以来、最大かつ最も困難なエボラ流行となっています。今回の流行は診断例、死亡例ともに、過去の流行を全て合わせたものを上回っています。流行は、ギニアで始まりシエラレオネとリベリアの国境を越え、(たった一人の旅行者から)空路でナイジェリアに、さらには、陸続きに(一人の旅行者から)セネガルへと広がっています。

 最も深刻な感染の伝播が生じている国であるギニア、シエラレオネ、リベリアでは、人的資源および医療設備の不足と、最近になって長期間の紛争および不安定が表面化してきたことにつれて、健康監視体制の弱体化をもたらしています。

 この流行とは別に、関連性のないエボラの流行がコンゴ民主共和国の赤道にある孤立集落ブエンデで起こりました。

 エボラウイルスが属するフィロウイルス科はクウェバウイルス(Cuevavirus)属、マールブルグウイルス属(Marburgvirus)、エボラウイルス(Ebolavirus)属の3種類の属から成ります。また、エボラウイルス属は、ザイール、ブンディブギョ、スーダン、レストン、タイフォレストの異なる5型が同定されています。ブンディブギョ、ザイール、スーダンの3種は、アフリカでの大流行を起こしてきました。2014年西アフリカで流行が起きたウイルスはザイール型に属しています。

感染経路

 オオコウモリ科のフルーツコウモリがエボラウイルスの自然宿主であると考えられています。エボラは、発症した、死亡した、または熱帯雨林に棲む動物(チンパンジー、ゴリラ、オオコウモリ、サル、森林に生息するレイヨウ、ヤマアラシ)のウイルスをもった血液、分泌液、臓器、その他の体液と濃厚に接触することによって感染します。

 その後、エボラは感染した人の血液、分泌液、臓器、体液など、また、これらの体液に汚染された物の表面や日用品(ベッド、衣類など)と直接接触することによって人から人へと感染が広がります。

 医療従事者は、エボラウイルス病の疑いまたは確定された患者を治療する際に、しばしば感染しています。これは、感染予防対策や厳しく訓練されていないときに、患者と濃厚接触したことが原因で起きています。

 参列者が死者の体に直接触れる埋葬儀式も、エボラの感染拡大の一因となりました。

 感染者は、血液、精液や母乳をも含む体液がウイルスを含んでいる限り、感染性を保持しています。感染者が回復した後でも、7週間は精液から感染する可能性があります。

症状と所見

 潜伏期間(感染から発症するまでの期間)は2日から21日です。症状が発現するまでの間は、感染者は感染力をもちません。最初の症状は、突然に襲われる発熱を伴う倦怠感、筋肉痛、頭痛、咽頭痛です。これらの症状に続いて、嘔吐、下痢、発疹、腎機能および肝機能の障害がみられ、しばしば内出血と外出血(歯肉出血や血性便)がみられます。検査所見では、白血球の減少、血小板の減少、肝臓の酵素の上昇がみられます。

診断

 マラリア、腸チフス、髄膜炎などの感染症とエボラウイルス病とを鑑別することは難しいと言えます。症状がエボラウイルス感染症によるものであることの確認は以下の検査法で行います。

抗体捕捉のためのELISA法
抗原検出試験
血清中和試験
RT-PCR法
電子顕微鏡
細胞培養によるウイルス分離

 患者から採取した検体は、バイオハザードリスクが非常に高く、バイオセーフティーレベルが最も高い環境下でのみ取り扱われるべきものです。

治療とワクチン

 補液による初期の支持療法、対症療法は生存率を向上させます。まだ、エボラウイルス病に対して使用できる承認された治療法はありません。しかし、ある種の血液療法、免疫療法、薬物療法は、現在、評価の段階にあります。承認されたワクチンはありませんが、2種類の有望なワクチンが臨床での安全性評価の段階にあります。

予防と感染制御

 流行の制御の成功は、症例の管理、調査研究と接触者の追跡、受け入れ能力をもった検査体制、安全な埋葬、社会資源の動員、即ち、介入に一連の組立てを作ることに依存しています。地域社会への関与が流行を制御するための鍵となります。エボラ感染の危険因子に注意する意識を高め、個々人でできる予防を行うことが人での感染を減らす効果的な対策となります。感染の危険性を低減するためのメッセージが、いくつかの要点にまとめられています。

感染したオオコウモリ、サル/類人猿との接触、その生肉の摂取に起因する、野生動物から人への感染の危険性を減らすこと:動物は、手袋やその他適切な防護服の下で処理する必要があります。動物製品(血液と食肉)は食べる前に徹底して加熱調理する必要があります。

エボラ症状のある人、特に、感染者の体液との、直接または濃厚な接触による人から人への危険性を減らすこと:自宅で感染者の世話をするときには、手袋と適切な個人用の防御具を着用する必要があります。病院を患者の見舞いで訪れた後、さらには、家庭での感染者の世話をした後にも必ず手洗いを行う必要があります。

流行の抑制策:抑制策には、迅速かつ安全な死者の埋葬、エボラ感染者と接触した可能性のある人の同定、21日間の接触者の健康状態の監視、さらなる感染拡大を防ぐために病人を健康者から隔離することの重要視、良好な衛生環境の重要視と清潔な環境の維持が含まれます。

医療機関での感染予防

 推定される診断名に関係なく、患者を世話するときに医療従事者は、常に標準的な予防対策を講じる必要があります。これらには、基本となる手指の衛生、清浄な空気の換気、個人用の防御具の使用(飛沫または感染物質などとの接触を防御するため)、安全な注射の実施、さらには安全な埋葬の実施が含まれています。

 エボラウイルスの疑いまたは確定した患者を世話する医療従事者は患者の血液と体液との接触を防ぐために、さらなる感染管理の対策をとる必要があります。1m以内でエボラウイルス感染者と接するときには、医療従事者は顔面の防御(フェイス・シールド、医療用マスクとゴーグル)、清潔かつ非滅菌性で長袖のガウン、手袋(いろいろな処置を行うための滅菌手袋)をつける必要があります。

 検査施設の勤務者にも危険があります。エボラ感染の検査のために人や動物から採取された検体は、訓練を受けた職員が取り扱うべきであり、十分に設備が整った検査施設で処理すべきです。

WHOの対応

 WHOは、エボラウイルス病の調査を行い、感染制御の計画を展開する危険国を支援することによって、エボラの流行を防ぐ目的をもっています。下記の文書はエボラやマールブルグウイルスの流行を制御するための総合ガイダンスです。 

 エボラやマールブルグウイルス病の流行:準備、警告、制御、および評価(Ebola and Marburg virus disease epidemics: preparedness, alert, control, and evaluation

 流行が発生したときに、WHOは調査を支援し、地域社会への参画、症例の管理、検査設備、接触者の追跡、感染管理、法的支援、安全な埋葬の実施を含む訓練や支援に対応しています。

 WHOはエボラ感染予防と制御に関する詳細なアドバイスを作成しました。

 エボラに焦点を当てた医療施設における疑いおよび確定したフィロウイルス出血熱の患者をケアするための感染予防と制御のための指針(Infection prevention and control guidance for care of patients with suspected or confirmed Filovirus haemorrhagic fever in health-care settings, with focus on Ebola

 <表:主なエボラ出血熱の発生年表>

ウイルス 患者数 死亡者数 致死率
2012 コンゴ民主共和国 ブンディブギョエボラウイルス 57 29 51%
2012 ウガンダ スーダンエボラウイルス 7 4 57%
2012 ウガンダ スーダンエボラウイルス 24 17 71%
2011 ウガンダ スーダンエボラウイルス 1 1 100%
2008 コンゴ民主共和国 ザイールエボラウイルス 32 14 44%
2007 ウガンダ ブンディブギョエボラウイルス 149 37 25%
2007 コンゴ民主共和国 ザイールエボラウイルス 264 187 71%
2005 コンゴ共和国 ザイールエボラウイルス 12 10 83%
2004 スーダン スーダンエボラウイルス 17 7 41%
2003
(11月-12月)
コンゴ共和国 ザイールエボラウイルス 35 29 83%
2003
(1月-4月)
コンゴ共和国 ザイールエボラウイルス 143 128 90%
2001-2002 コンゴ共和国 ザイールエボラウイルス 59 44 75%
2001-2002 ガボン ザイールエボラウイルス 65 53 82%
2000 ウガンダ スーダンエボラウイルス 425 224 53%
1996 南アフリカ
(ガボンからの輸入例)
ザイールエボラウイルス 1 1 100%
1996
(7月-12月)
ガボン ザイールエボラウイルス 60 45 75%
1996
(1月-4月)
ガボン ザイールエボラウイルス 31 21 68%
1995 コンゴ民主共和国 ザイールエボラウイルス 315 254 81%
1994 コートジボワール タイフォレストエボラウイルス 1 0 0%
1994 ガボン ザイールエボラウイルス 52 31 60%
1979 スーダン スーダンエボラウイルス 34 22 65%
1977 コンゴ民主共和国 ザイールエボラウイルス 1 1 100%
1976 スーダン スーダンエボラウイルス 284 151 53%
1976 コンゴ民主共和国 ザイールエボラウイルス 318 280 88%
出典

WHO. Ebola virus disease. Fact sheet Number103. Updated September 2014.
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs103/en/