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髄膜炎菌性髄膜炎 (ファクトシート) 

2015年2月 WHO (原文〔英語〕へのリンク

要点

髄膜炎菌性髄膜炎は細菌性の髄膜炎で、脳や脊髄周囲を被っている薄い被膜(髄膜)に生じる重篤な感染症です。
サハラ以南のアフリカ、西のセネガルから東のエチオピアに渡って広がる髄膜炎ベルト(26か国)は、この疾患の発生率が最も高い地域です。
2010年以前で集団予防接種の活動が推進される前には、髄膜炎菌A群は髄膜炎ベルト地域での全症例の80~85%の原因菌と推計されており、7~14年の周期で流行を起こしていました。以降、髄膜炎菌A群の割合は劇的に減少しています。
2014年の流行期には、サーベイランスが強化されているアフリカの19か国で、1,146人の死亡者を含む11,908人の髄膜炎と疑われる患者が報告されました。この患者数は、機能的ネットワーク(2004)を通してサーベイランスが強化されて以来、最も少ない数でした。
この疾患を予防するために数種類のワクチンがあります。A包合体ワクチン、C包合体ワクチン、4価(A、C、Y、W135)包合体ワクチンと髄膜炎菌多糖体ワクチンです。
2015年1月の時点で、アフリカのベルト地域15か国で2億1,700万人以上の人がA包合体ワクチンを受けました。

概要

 髄膜炎菌性髄膜炎は、細菌性の髄膜炎で、脳を被う膜に感染する重篤な髄膜の感染症です。重い脳の障害を起こし、治療しなければ、患者の50%が死に至ります。

 数種類の細菌が髄膜炎を起こします。(その中でも)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)は、大規模な流行を起こす能力をもつ細菌のひとつです。髄膜炎菌は血清型によって12種類に分類されています。その中で6種類(A、B、C、W135、X、Y)が流行を起こします。地理的分布や流行を起こす能力は血清型により異なります。

感染経路

 細菌は、保菌者が呼吸中に生じる飛沫や咽頭分泌物を介して人から人に伝染します。キス、くしゃみ、咳のほか、感染者(保菌者)との狭い空間での生活(寮生活、食器やコップの共用)など、長時間の緊密な接触が、この疾患を拡散させます。潜伏期間の平均は4日ですが、2日から10日間の幅があります。

 髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)は人だけに感染します。他の動物は宿主になりません。細菌は咽頭に定着することができます。機序は完全には解明されていませんが、時に、体の防御機構に打ち勝って感染が成立し、血流に乗って脳に達します。髄膜炎菌は10~20%の人の咽頭に常在していると考えられています。しかし、流行時には、その保菌者の割合はさらに高くなっている可能性があります。

症状

 最もよく見られる症状は、項部硬直、高熱、光過敏症、錯乱、頭痛、嘔吐です。早期に診断され、適切な治療が開始されても、患者の5~10%は死亡します。たいていの場合、発症後24~48時間以内に死に至ります。細菌性髄膜炎は、生存者の10~20%に、脳障害、聴覚障害、学習障害を起こします。頻度は低いものの、髄膜炎菌のさらに重篤(しばしば致死的)な容態として、出血性の発疹や急激な循環虚脱によって特徴づけられる髄膜炎菌性敗血症も起こします。

診断

 髄膜炎菌性髄膜炎の初期診断は、診察に続いて腰椎穿刺による化膿性髄液で確認します。時に、髄液の顕微鏡検査で細菌が見られることもあります。髄液や血液検体 からの細菌培養、凝集試験、PCR法によって確かめられ、診断が確定されます。血清型の同定、抗生剤の感受性試験は、感染予防の対策を具体化するために重要です。

治療

 髄膜炎菌性疾患は死に至る高い可能性があり、常に、医療上の緊急事態として扱われるべきです。医療機関への入院は必須ですが、隔離の必要はありません。できるだけ早期に適切な抗生剤治療を、理想的には直ちに腰椎穿刺ができるならば穿刺の後に、開始しなければなりません。腰椎穿刺よりも先に治療が開始されると、髄液中の細菌を培養できず、診断を確定することが難しくなります。

 治療には、ペニシリン、アンピシリン、クロラムフェニコール、セフトリアキソンなどの様々な抗生剤が使用されます。公衆衛生基盤や社会資本の限られるアフリカ地域での流行時には、セフトリアキソンが選択薬となります。

予防

 3つのタイプのワクチンが利用可能です。

1.  多糖体(ポリサッカライド)ワクチンは、この疾患を予防するために、30年以上使用されてきました。髄膜炎菌多糖体ワクチンには、2価(A、C)、3価(A、C、W)、4価(A、C、Y、W135)があります。

2.  B群については、多糖体がヒトの神経組織の多糖体と抗原性が類似しているので、ワクチンを開発することができていません。しかし、4種類のタンパク成分を組み合わせて作られたB群に対する初めてのワクチンが2014年に使われ始めました。

3.  1999年からC群に対する包合体ワクチンが利用可能となり、広く使用されています。カナダ、米国、ヨーロッパでは、4価(A、C、Y、W135)包合体ワクチンが、2005年に承認され、小児にも成人にも使用されています。

 サハラ以南のアフリカ、西のセネガルから東のエチオピアに広がる髄膜炎ベルト(26か国)は、この疾患の発生率が最も高い地域です。

 26か国は以下の国です。髄膜炎菌性髄膜炎の流行のリスクはこれら26カ国間でも国内でも異なります。

 ベナン、ブルキナファソ、ブルンジ、カメルーン、中央アフリカ共和国、チャド、コートジボアール、コンゴ民主共和国、エリトリア、エチオピア、ガンビア、ガーナ、ギニア、ギニアビサウ、ケニア、マリ、モーリタニア、ニジェール、ナイジェリア、ルワンダ、セネガル、南スーダン、スーダン、タンザニア、トーゴ、ウガンダ

 2010年12月にブルキサファソの全国、マリとニジェールの一部(2011年には残る地域にも)の1歳から29歳を対象に、新たな髄膜炎菌A群包合体ワクチンが導入されました。2015年1月の時点で、アフリカのベルト地帯15か国で2億1700万人以上の人がこの新しいワクチンを受けました。

 15か国は以下の国です。

 ベナン、ブルキナファソ、カメルーン、チャド、コートジボアール、エチオピア、ガンビア、ガーナ、マリ、モーリタニア、ニジェール、ナイジェリア、スーダン、トーゴ。

 新たな髄膜炎菌A群包合体ワクチンは、従来の多糖体ワクチンを比べていくつかの有利な点をもっています。

髄膜炎菌A群に対して、より(免疫力が)高く、より持続力のある免疫応答を誘導します。
咽頭での細菌の保有とそれに伴う伝播を減らします。
長期に免疫応答が持続することは、ワクチン接種を受ける人だけでなく、髄膜炎に曝されてきた周りの家族や他の人たちにも恩恵を与えることが期待されます。
他の髄膜炎菌ワクチンの価格(1用量あたり2.50米ドル~117.00ドル)よりも低価格(同0.60米ドル)で利用できます。
特に、従来の多糖体ワクチンでは対策を取れなかった2歳以下の小児の保護に有効となることが期待されます。

 加えて、その熱安定性は、管理温度域内(Controlled Temperature Chain:CTC、室内常温域)の条件下での使用を可能にします。4か国で200万人以上の人がワクチン接種場所で氷を使用することなくワクチンを接種されてきています。

 髄膜炎の流行の危険があるとみられ、このワクチン導入計画の対象となっているアフリカ26か国全ての国で、このワクチンが2016年までに導入される計画です。1歳から29歳という広い対象範囲でアフリカ地域から髄膜炎菌A群を撲滅できると期待されています。

流行傾向

 髄膜炎菌性髄膜炎は、世界中で季節変動を伴う小さな集団発生を起こし、流行する細菌性髄膜炎の割合が変動する原因となっています。

 髄膜炎菌性疾患の負荷が最も大きいのは、西はセネガルから東はエチオピアまでに広がる髄膜炎ベルト地域として知られるサハラ以南のアフリカ地域です。12月から6月までの乾期には、舞い上がる埃、夜の冷え込み、上気道感染が重なって鼻咽頭粘膜の損傷が起こり、髄膜炎菌性疾患のリスクが高くなります。同時に、建物内での人混み、聖地巡礼や伝統的な市場など、地域レベルでの人の大きな移動によって、髄膜炎菌の伝播が加速されることがあります。これら要因がいくつも重なると、髄膜炎ベルト地域で乾期に大流行が起こす要因となります。

WHOの取り組み

 WHOは、流行への事前の準備、予防、対策で構成される戦略を展開しています。事前の準備は、患者の発見から調査および検査診断までのサーベイランスに焦点を当てています。予防は、アフリカの髄膜炎ベルト地域に住む1歳から29歳までの全ての人を対象に新たな髄膜炎菌A群包合体ワクチンを接種することからなります。WHOは、流行に直面している国に対して、現地での技術的支援を定期的に行っています。

 流行への対策は、セフトリアキソンによる迅速かつ適切な患者の治療と、ワクチンを接種していない人々に集団予防接種を行うことからなります。

 アフリカの髄膜炎ベルト地域での髄膜炎の流行は、公衆衛生における重荷となっています。WHOは、公衆衛生上の問題として髄膜炎菌性疾患の排除に取り組んでいます。

出典

WHO Meningococcal meningitis Fact sheet N°141 Feburuary 2015
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs141/en/