中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)に関するIHR緊急委員会第9回会議でのWHOの声明

2015年6月17日 WHO (原文[英語]へのリンク

2015年6月17日付けのWHOメディアセンターからの発表によりますと、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)に関するIHR緊急委員会9回会議が、国際保健規則(2005)に則った事務局長の召集により2015年6月16日中央ヨーロッパ時間12時(欧州中央時間夏時間:UTC+2)から15時まで開催され、委員及び専門家アドバイザーらによってテレビ会議を使って検討されました。

WHO事務局は、韓国および中国の最近の患者発生と感染伝播パターンの説明を含めて、疫学的および科学的解明、リスク評価、感染制御と予防対策に関して委員会での議論を刷新しました。これらの国は自国でのMERS-CoVの発生状況と展開についての更新情報と評価を提出しました。

韓国とWHOで行った最近のMERS合同会議に参加した委員会委員とアドバイザーが、彼らの経験に基づいた報告を共有するために招かれました。

委員会は、韓国のMERS-CoVが拡大した原因となった主な要因に関する合同会議の評価について言及しました。合同会議が指摘した点は以下のとおりです。

1. 医療従事者および国民一般におけるMERSに対する危機意識の欠如
2. 病院での適正を欠いた感染防御と制御対策
3. 混み合った救急室や病院の多病床でのMERS感染患者との濃厚で長時間の接触
4. 複数の病院で医療を求める「ドクターショッピング」の慣習
5. 接触者の間で二次感染を助長する病室内に、たくさんの見舞客や家族が感染者とともに留まる慣習

委員会は、中国で居場所を迅速に突き止め、隔離し、患者を治療することと検疫下に接触者を置くことを可能にするために、韓国が感染者に関してIHRの下で情報を提供した早さについて言及しました。

委員会は、遺伝子配列の決定について利用可能な知見では韓国の患者から得られたウイルスが中東から得られたウイルスと比べていかなる重大な変異も起こしていないことに言及しました。これらのウイルスの中に潜在する遺伝子変異を監視しておくことは重要です。この集団感染では、MERS-CoVの感染経路が医療施設と大きく関係していました。この視点は、衛生行政当局が医療施設に常に効果的な感染予防と制御対策が配備されていることを保証するために、ありとあらゆる努力を怠ってはならないことを強調しています。

地域で持続的な感染伝播が発生している証拠はありません。委員会は、公衆衛生対策では接触者の追跡の強化と、患者と接触者(潜伏期間中)が適切に隔離もしくは停留措置や健康監視を履行し、彼らが旅行に出かけないことの対策を、確実に前進させる努力をしており、集団感染を終息させるための継続した公衆衛生対策が患者発生数の減少と一致してきていることに言及しました。しかし、発生状況の緻密な監視は、感染伝播が遮断されること、確認された感染経路と疫学的に繋がる根拠を持たない全ての患者が慎重に評価されること、これらを確実に実行するためには重要な課題です。これからの数週間に、集団感染の初期段階では同定されなかった接触者を含む新たな患者が発見される可能性はあります。もし、国外に旅行する接触者の報告や噂が聞かれたならば、他国はそこに目を配り、その可能性を速やかに評価することが重要です。

委員会は、環境汚染、換気不良やその他の要因がもつ潜在的な役割を含め、人々の間で、このウイルスの感染に関する知識に多くのギャップがあることに言及し、これらの分野での継続的な研究が重要であることを示しました。

委員会は、この集団感染は目覚まし時計のような警鐘であり、流動性の高い世界では、全ての国がこのような予期しない感染発生の可能性とその他の深刻な容態となる感染症に対して常に備えを怠るべきでないことを評価の中で表明しました。この状況は、医療とその他の鍵となる部門、即ち、航空会社との連携を強化し、相互の情報伝達プロセスを固めることの必要性に注目させています。

委員会は、前回のアドバイスは引き続き保持されるべきであることを改めて表明し、合同会議の提言への強い支持を表明しました。

委員会は、国際的な公衆衛生上の脅威となる緊急事態(Public Health Emergency of International Concern: PHEIC)の条件は満たしていないと結論づけました。

この結論に至るために、委員会は、集団感染が発見された後、組織編成された後に、韓国がこの集団感染を制御下に置くために毅然として行動を開始したことを指摘しました。この中には、接触者の同定、適切な停留措置と健康監視の確実な遂行、加えて、患者や監視期間内に感染の可能性のある接触者が不適切に移動することを阻止するために効果的な対策を行ったことなど、さまざまなアプローチを使用したことが含まれます。このような努力が、合同会議での提言の採択に反映されています。

WHOは、今回の感染発生に対していかなる旅行あるいは貿易を規制することを推奨していません。また、入国時に検査を行うことは必要としないと考えています。また、感染の影響を受けた国からの、また、影響を受けた国へ行く、渡航者において、MERS-CoVに対する注意を向上させることは、公衆衛生におけるよい実践となります。WHOは、委員とアドバイザーに更新された情報を提供していきます。発生状況が必要とする場合には、緊急委員会が再招集されます。

出典

WHO:Media Center News, Statements. 17 June 2015
WHO statement on the Eighth Meeting of the IHR Emergency Committee concerning MERS-CoV
http://www.who.int/mediacentre/news/statements/2015/ihr-ec-mers/en/