世界のインフルエンザ流行について(更新2)

2016年2月8日 WHO(原文[英語]へのリンク[PDF形式:775KB]

要約

世界的に、インフルエンザの活動レベルが高まっていることの報告が北半球の温帯地域から続いています。検出されるほとんどのウイルスはインフルエンザA(H1N1)pdm09でした。

  • ヨーロッパでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09の活動の高まりが報告されてきています。ヨーロッパ北部と東部のいくつかの国では、インフルエンザ様疾患(ILI)の顕著な増加とインフルエンザA(H1N1)pdm09による重症患者の増加が報告されました。ヨーロッパの一部の国では、インフルエンザBウイルスが主体となる活動の増加が報告されました。
  • 北米では、インフルエンザA(H1N1)pdm09の僅かな増加が報告されました。しかし、全体としては、まだ低いレベルに留まっています。
  • 東アジアでは、日本と韓国でインフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスを主体として、インフルエンザの活動が高まってきました。中国北部では、主にインフルエンザA(H3N2)とインフルエンザBウイルスが検出されました。
  • アジア西部では、イスラエルでインフルエンザの活動が高いレベルに留まっていました。しかし、ヨルダン、オマーン、イランでは、ピークに達したとみられました。
  • アフリカ大陸の熱帯地域では、インフルエンザ・ウイルスの検出は数か国で報告されるに留まりました。
  • アメリカ大陸の熱帯地域、中米、カリブ海では、全体として、ほとんどの国でインフルエンザとその他の呼吸器系ウイルスの活動が低いレベルにありました。プエルトリコとグアドループでは、ここ数週間でインフルエンザとインフルエンザ様疾患(ILI)の増加が報告されました。コスタリカでは、インフルエンザの活動は減少レベルにありますが高い状態が続いています。
  • アジア熱帯地域では、全体として南アジアと東南アジアの国々で、低調なインフルエンザの活動状態が続いていることが報告されました。
  • 南米温帯地域では、呼吸器系ウイルスの活動が低い状態でした。
  • 2016年1月11日から2016年1月24日までのデータが、FluNet(協定世界時間2016年2月5日 04:13:45現在)に基づき、87の国と地域にある国立インフルエンザセンター(NICs)とその他の国立インフルエンザ研究施設から集められています。WHO世界インフルエンザ・サーベイランス及び対応システム(GISRS)の検査施設では、この間に112,204本を超える検体が検査されました。インフルエンザ・ウイルスが陽性となった検体は20.839本で、このうち17,413検体(83.6%)がインフルエンザA型、3,428検体(16.4%)がインフルエンザB型でした。亜型が解析されたインフルエンザA型ウイルスのうち、10,873検体(81.9%)がインフルエンザA(H1N1)pdm09、2,405検体(18.1%)がインフルエンザA(H3N2)でした。解析されたインフルエンザB型ウイルスのうち、509検体(42.1%)がB-山形系統で、700検体(57.9%)がB-ビクトリア系統でした。
  • WHOのA(H1N1)pdm09のリスク評価が、以下のリンクで公開されていました。http://www.who.int/influenza/publications/riskassessment_AH1N1pdm09_201602/en/

北半球の温帯地域

北米

北米では、インフルエンザの活動が高まってきましたが、まだ今回の報告では低い状態にありました。主にインフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスが検出されました。

カナダでは、インフルエンザの活動が高まってきました。しかし、検出数は毎年のこの時期の予想レベルを下回る状態でした。インフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスの検出数が増え、この数週間で優勢となってきました。インフルエンザ様疾患(ILI)の活動も高まり、0-4歳児では最高となりました。

アメリカ合衆国では、インフルエンザ様疾患(ILI)の活動が現在も低調ですが、呼吸器検体中のインフルエンザ陽性率が、国の基準2.1%を超えて6.8%に上がってきました。インフルエンザA(H1N1)pdm09が検出のほとんどを占め、次いでインフルエンザA(H3N2)、インフルエンザBの順でした。インフルエンザによる入院率は、65歳以上で最も高く、0-4歳児がこれに続いていました。アメリカ全国保健統計センター(NCHS)の死亡調査システムと122都市からの報告サーベイランスに基づく肺炎とインフルエンザを原因とする死亡率は、システムで特異に設定される流行の閾値を下回っていました。RSウイルスの検出率は、この報告期間に22.8%から23.5%に上昇しました。しかし、まだ中等度のレベルに留まっています。

メキシコでは、急性呼吸器感染症(ARI)が増えてきました。しかし、主原因のウイルスであるインフルエンザA(H1N1)pdm09は予想レベルを下回っていました。

ヨーロッパ

ヨーロッパのほとんどの国では、インフルエンザの活動が高まってきました。インフルエンザA(H1N1)pdm09が検出されたウイルスのほとんどで、インフルエンザ様疾患(ILI)と急性呼吸器感染症(ARI)に対するヨーロッパ大陸サーベイランスでは、このウイルスが検出の67%を占めました。ほとんどの国では、まだインフルエンザの活動は低調と報告されていました。(しかし)、ベラルーシ、ギリシャ、アイルランド、マルタでは、インフルエンザの活動が高い状態となり、フィンランド、ロシアとウクライナでは、活動が非常に高い状態と報告されました。重症急性呼吸器感染症(SARI)に対する定点観測調査システムを使ったいくつもの国から、インフルエンザA(H1N1)pdm09感染に関係した患者数の増加が報告されました。同様に、病院及び集中治療室からインフルエンザの確定診断が報告される国からは、大半の患者からインフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスの検出が報告されました。患者の年齢層は、主に15-64歳でした。

西アジア

西アジアでは、イスラエルでインフルエンザA(H1N1)pdm09の活動レベルの高止まりが報告されました。僅かにインフルエンザBウイルスも伝播していました。オマーンでも報告が続いていましたが、インフルエンザA(H1N1)pdm09、インフルエンザA(H3N2)、インフルエンザBウイルスのレベルは下がってきたことが報告されました。イランとヨルダンでは、インフルエンザの活動はピークを迎えたとみられました。

中央アジア

中央アジア全体で、引き続き、インフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスが関係するインフルエンザの活動が報告されていました。

アジア北部/アジア温帯地域

東アジアでは、インフルエンザの活動レベルの高まりが報告されてきました。モンゴルでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09の活動レベルの高まりがピークを迎えたとみられました。インフルエンザ様疾患(ILI)の割合は、主な流行ウイルスであるインフルエンザA(H1N1)pdm09をともないながらも許容の範囲内にありました。肺炎による死亡者数が、前年に一致してピークを迎えた後、許容範囲まで低下したことが報告されました。韓国では、この数週間、インフルエンザA(H1N1)pdm09によるインフルエンザの活動が検出されました。僅かにインフルエンザBウイルスもともなっていました。この報告期間におけるインフルエンザ様疾患(ILI)の活動は、基準レベルを上回りました。日本では、主に検出されるインフルエンザA(H1N1)pdm09によるインフルエンザの活動が高まってきました。中国北部では、この数週間でインフルエンザ様疾患(ILI)の活動が高まりました。検出されるほとんどのウイルスは、インフルエンザA(H3N2)とインフルエンザBでした。

熱帯地域

中米、カリブ海、南米の熱帯地域

カリブ海、中米、南米熱帯地域の国々からは、この間に、インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザA(H3N2)、稀にインフルエンザBウイルスの報告をともないながら、引き続きインフルエンザの活動が報告されました。

プエルトリコでは、最近、インフルエンザ様疾患(ILI)の活動とインフルエンザの検出数が高止まりしています。コスタリカでは、最近、インフルエンザの活動が低下傾向を示してきましたが、レベルは高い状態です。検査における陽性検体数は予想されるレベルを上回っていました。インフルエンザA(H1N1)pdm09が優勢で、インフルエンザA(H3N2)ウイルスがこれに続いていました。RSウイルスの活動がこの数週間で高まってきました。コスタリカでは、重症急性呼吸器感染症(SARI)の活動は低下してきましたが、この間、レベルは高い状態で推移しました。

アフリカ熱帯地域

アフリカ北部と西部では、極小規模のインフルエンザの活動が報告されました。

アジア熱帯地域

アジア南部では、これまでの数週間と比べて活動の低下傾向が報告されました。

ブータンでは、僅かにくすぶるインフルエンザ様疾患(ILI)をともなってインフルエンザBウイルスの活動の増加が報告されました。重症急性呼吸器感染症(SARI)のレベルの低下も報告されました。

中国南部では、この数週間にみられているように、インフルエンザの活動はインフルエンザA(H1N1)pdm09が占めていました。第3週には、インフルエンザ様疾患(ILI)の活動がこの数週間と比べて高まってきました。香港では、インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザBの流行が混じり合っての増加が検出されました。インフルエンザ様疾患(ILI)の活動は、一般外来と民間の定点医療機関において、これまでの数週間と比べてこの期間に高くなっていました。

東南アジアでは、インフルエンザの活動の検出が続いていました。ラオスでは、引き続きインフルエンザの活動のレベルの低下が報告されました。主なウイルスはインフルエンザBウイルスでした。シンガポールでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09、インフルエンザA(H3N2)、インフルエンザBが入り交じって流行していました。

南半球の温帯地域

南米温帯地域

南米温帯地域では、インフルエンザとその他の呼吸器系ウイルスの活動が低い状態でした。インフルエンザ様疾患(ILI)と重症急性呼吸器感染症(SARI)の活動は、予想の範囲内に留まりました。検出されるインフルエンザ・ウイルスは、インフルエンザA(H1N1)pdm09が主体で、ときにインフルエンザB、稀にインフルエンザA(H3N2)が続いていました。アルゼンチンとチリでは、インフルエンザ様疾患(ILI)の活動が僅かに高まっていましたが、まだ、予想の範囲内です。重症急性呼吸器感染症(SARI)のレベルも、この数週間は低下してきています。

アフリカ南部

南アフリカでは、インフルエンザのオフシーズンが続いています。

オセアニア、メラネシア、ポリネシア

オーストラリアで、最近、極小規模のインフルエンザA(H1N1)pdm09の活動がみられたと報告されました。大洋州ソロモン諸島、ミクロネシア連邦では、インフルエンザ様疾患(ILI)の活動レベルが閾値を上回ったことが報告されました。

出典

WHO.Influenza Update number256. 8February2016
http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/2016_02_08_surveillance_update_256.pdf?ua=1[PDF形式:775KB]