2016年のニュース

B型肝炎について (ファクトシート)

2016年7月 WHO (原文[英語]へのリンク

要点

B型肝炎は肝障害を起こすウイルス感染症です。急性疾患と慢性疾患を起こします。
このウイルスは、感染者の血液や、その他の体液に接触することで感染します。
推定で2億4000万人が慢性的にB型肝炎に感染しています(B型肝炎表面抗原が少なくとも6か月陽性と定義される者)
肝硬変、肝がんを含む毎年68.6万人以上の人がB型肝炎の合併症によって死亡しています。
B型肝炎は、医療従事者にとって重大な職業上の危険要因です。
しかし、B型肝炎は、現在、安全で効果的なワクチンを使用することによって予防することができます。

B型肝炎

 B型肝炎は、生命を脅かす可能性のある肝臓の感染症で、B型肝炎ウイルスによって引き起こされます。B型肝炎は、世界的に大きな健康上の問題です。慢性感染症を起こし、肝硬変や肝がんによる死亡への危険を高めます。
 B型肝炎ワクチンが1982年から使用できるようになりました。このワクチンは、感染の予防、慢性疾患への進展、B型肝炎による肝がんに対して95%の有効性があります。

地理的分布

 B型肝炎の罹患率はサハラ以南のアフリカや東アジアで高く、成人人口の5-10%が慢性的に感染しています。慢性感染の高い割合はアマゾンや東ヨーロッパ南部と中央ヨーロッパの南部でもみられます。中東とインド亜大陸では総人口の2-5%が慢性感染していると推定されています。西ヨーロッパと北アメリカでは慢性感染は1%未満です。

感染経路

 B型肝炎ウイルスは、体外でも、少なくても7日間は感染性を持ちます。この間に、予防接種を受けていない人の身体にウイルスが入ったならば、感染を起こすことがあります。B型肝炎ウイルスの潜伏期間は平均75日ですが、30日から180日の幅があります。ウイルスに感染した後、30日から60日後にウイルスが検出されるようになり、持続感染や慢性B型肝炎に進展する可能性が生まれます。
 高頻度で流行している地域では、B型肝炎は出産時の母子感染や水平感染(感染者の血液との接触)、特に5歳までに感染児から非感染児へと感染が拡がること、が最も一般的です。慢性感染への進展は、幼児期の母親からの感染または5歳までの感染が極めて一般的です。
 B型肝炎は、感染者の血液や、唾液、月経血、膣分泌液や精液などのさまざまな体液との経皮的または粘膜による接触を介しても拡がります。B型肝炎の性行為感染は、ワクチン未接種の、男性同性愛者や複数のセックス・パートナーやセックス・ワーカーとの接触をもつ異性の人々にも起こる可能性があります。成人での感染では、患者の5%未満が慢性肝炎になります。ウイルスの感染伝播は、医療施設や注射薬物使用者での針やシリンジの使い回しを通しても起こります。さらに、感染は、医療処置、外科処置、歯科治療、また、刺青を介したり、感染血に汚染されたカミソリやその類似の物品を介しても起こります。

症状

 急性感染期に、ほとんどの人には症状が現れません。しかし、感染した人の中には、皮膚や眼球結膜の黄染(黄疸)、褐色尿、激しい倦怠感、悪心、嘔吐、腹痛などの数週間続く急性症状を起こすことがあります。急性肝炎の一部の人は死に至るような急性肝不全に進展することがあります。
 また、B型肝炎ウイルスは、一部の人に肝臓に持続的な感染を起こし、後に肝硬変や肝がんに進展させます。

持続感染(慢性化)のリスクのある人

 B型肝炎ウイルスの感染が慢性化する可能性は、感染した年齢に依存します。6歳未満でB型肝炎ウイルスに感染した小児が、最も感染が慢性化しやすいようです。

幼児と小児
・1歳以下で感染した乳児の80%から90%で感染が慢性化します。
・6歳未満で感染した小児の30%から50%で感染が慢性化します。

成人
・成人時に感染した健康人の5%未満の人が慢性化します。
・慢性化した成人のうち20%から30%は肝硬変や肝がんへと進展します。

診断

 臨床的背景からは、B型肝炎を他のウイルスによって生じる肝炎と区別することはできません。そのため検査による診断確定が不可欠です。B型肝炎の診断や患者の経過観察には多数の血液検査が利用できます。その血液検査は、急性感染と慢性感染との鑑別にも利用されます。
 B型肝炎への感染の検査診断は、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBs抗原)の検出に焦点を当てています。WHOは、輸血を受けた人に偶発的に感染が起こることを避け、血液の安全を確保するために、すべての献血者がB型肝炎の検査を受けることを勧めています。
・急性HBV感染は、HBs抗原およびコア抗原、HBc抗原に対する免疫グロブリンM (IgM)の存在によって特徴づけられます。感染初期には、患者はHBe抗原に対しても血清反応が陽性になります。HBe抗原は常にウイルスの複製に対する高い信頼性をもつマーカーです。HBe抗原の存在は感染者の血液と体液が高い感染性をもつことを示しています。
・持続感染は少なくとも6か月間のHBs抗原の持続によって特徴づけられます。HBs抗原の持続は、その後の人生における慢性肝疾患と肝細胞がん(hepatocellullar carcinoma: HCC)に進展する危険への重要なマーカーです。

治療

 急性B型肝炎には、特別な治療法がありません。そのため、治療は、症状の緩和と、嘔吐や下痢で失われた体液の補正を含む十分な栄養バランスの維持を目的とします。
 慢性B型肝炎には、経口の抗ウイルス薬による薬物療法が可能です。治療は肝硬変への進展を抑制し、肝がんの発生確率を下げ、長期の生存を向上させます。
 WHOは、テノホビルやエンテカビルといった経口治療薬の使用を推奨しています。それは、これらがB型肝炎ウイルスを押さえ込む最も有力な薬剤だからです。これらは、他の薬物と比較して、ほとんど薬剤耐性を誘導することがありません。1日1回の服用で済み、ほとんど副作用がなく、限られた監視をするだけで済みます。
 しかし、ほとんどの人で、治療はB型肝炎の感染を完治することはできません。ただ、ウイルスの複製を押さえているに過ぎません。そのため、B型肝炎の治療を始めた人は生涯にわたり薬を飲み続けなければなりません。
 インターフェロン注射薬を使った利用が高収入の環境にある人々には考えられます。これは、治療期間を短縮できるかもしれません。しかし、その使用は費用が高く、注意深く監視する必要のある重大な有害事象をもつため、設備の整っていない施設では実行の可能性は小さいものです。
 たくさんのリソースに制約のある施設の中で、B型肝炎の診断と治療への利用環境はまだ限られています。そして、多くの人は既に肝疾患が進行してしまったときに初めて診断されています。肝がんは急激に進行します。そして、治療の選択肢は限られているため、その結果は一般には悲惨なものです。低所得国の施設の中で、肝がんのほとんどの患者が診断から数か月で死んでいきます。高所得国では、手術や化学療法が余命を数年に延ばしています。高所得国では、ときには肝硬変の患者に肝移植が行われていますが、成功率にはバラツキがあります。

予防

 B型肝炎ワクチンは、B型肝炎の予防の大きな柱です。WHOは、すべての幼児が出生後可能な限り早く、できれば24時間以内にB型肝炎ワクチンを受けるよう勧めています。出生時投与に2回か3回の追加投与をして、初回の一連接種を完結させる必要があります。ほとんどの場合、次の選択肢のうちの一つが適切と思われます。
・B型肝炎ワクチンの3回投与スケジュール。第一回目の投与(一価)は出生時に行い、DPTワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風)の第一回目と第三回目投与と同時期に、第二回目、第三回目投与(一価または混合ワクチン)を行う。または
・4回投与、出生時に一価を投与し、続いて3回の一価または混合ワクチンの投与を行う。通常は他の小児定期ワクチンと同時に接種する。
 完全に一連のワクチン接種を行えば、幼児、小児および若年成人の95%以上で保護できるレベルの抗体を誘導できます。この免疫力は少なくとも20年は持続し、おそらく生涯持続すると考えられます。このように、WHOは3回のワクチン接種計画を完結した人にはブースターのためのワクチン接種は推奨していません。
 過去に、予防接種を受けたことがなく、感染率の低いまたは中等度の国々に住む18歳未満の小児と青少年は予防接種を受けるべきです。そのような国では、ハイリスクグループではより多くの人々に感染させる可能性があり、彼らもまた、ワクチン接種されるべきです。ハイリスクグループには以下の人が入ります。
 ・頻繁に輸血や血液製剤を投与する必要がある人、透析患者、臓器移植を受けた人。
 ・刑務所拘留者
 ・注射薬物使用者
 ・HBV持続感染者の性的パートナーと同居家族
 ・複数の性的パートナーをもつ人々
 ・医療従事者や仕事を通じて血液や血液製剤にさらされる可能性のある人々
 ・流行地域に出発する前に、行われるべき一連のB型肝炎ワクチン接種が完了していない渡航者

 ワクチンは、安全性と有効性に優れています。B型肝炎ワクチンは1982年以降、世界中で10億回以上接種されています。多くの国では、小児の8%から15%がB型肝炎ウイルスに持続感染していましたが、予防接種によって、予防接種を受けた小児における持続感染の割合が1%未満に減少しました。
 2013年の時点で、183の加盟国においてB型肝炎に対する乳幼児予防接種は定期接種の一部として行われており、82%の子供がB型肝炎ワクチンを受けました。世界保健総会が世界的にB型肝炎の予防接種を勧める決議を採択した1992年に定期の予防接種として実施していた国は31か国であり、当時と比べ、大きく増加しました。 さらに、2014年の時点で、96の加盟国で出生時B型肝炎ワクチン接種を導入しています。
 加えて、輸血に使用されるすべての献血血液と血液製剤の品質保証スクリーニングなどの血液安全戦略の実施によりHBVの感染を防ぐことができます。安全な注射の実践し、不要で安全性を欠いた注射を行わないことが、HBV感染から守ることに効果があります。さらに、パートナーの数を最小限に抑え、防御予防手段(コンドーム)を使用するなどの、より安全なセックスの実践も感染を防ぎます。

WHOの取り組み

 2015年3月に、WHOは初めて「慢性B型肝炎とともに暮らす人々のための予防、ケア、治療のためのガイドライン」を発行しました。その推奨は以下のとおりです。
・肝疾患のステージと治療の適格性を評価するための、簡単で非侵襲性の診断検査の使用促進
・最も進行した肝疾患と死への高いリスクをもつ人々への治療の優先
・第1治療および二次治療における薬剤耐性への高い障壁をもつ核酸類似体の適切な使用(2-11歳の小児へのテノホビルとエンテカビル、およびエンテカビル)の推奨

 これらのガイドラインは肝硬変の患者への生涯の治療も推奨しています。また、疾患の進展、薬剤の毒性、肝がんの早期発見に対する定期的な検査を推奨しています。

 2016年5月に、世界保健総会では、初めて「ウイルス性肝炎部門の世界保健戦略、2016-2021」を採択しました。この戦略は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(医療費の支払いに困窮する貧困層にも保健医療サービスを届けること)の役割の重要性を強調し、この戦略の目標が、いくつもの継続すべき発展目標とともに並べられています。この戦略には、公衆衛生上の問題として、ウイルス性肝炎を撲滅することを視野に入れて おり、2030年までに新たなウイルス性肝炎感染者を90%減らし、ウイルス性肝炎による死亡者を65%減らすことが含まれています。これらの目標を達成するために、各国およびWHO事務局が取るべき活動が戦略の中で概説されています。
 2030年に向けた持続すべき発展目標の下で、世界の肝炎に対する目標達成に向けた各国を支援するために、WHOは次のような分野を支援しています。
・意識の向上、パートナーシップの促進、人的資源の動員
・エビデンスに基づく政策と行動するためのデータの定形化
・感染経路の防止
・スクリーニング、管理、治療の実行

 WHOは、ウイルス性肝炎に対する意識と理解の向上のため、毎年7月28日を世界肝炎デーと定めています。

出典

WHO. Media centre. Fact sheet N°204. Update July 2016
Hepatitis B
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs204/en/