2016年のニュース

抗生物質への耐性について (ファクトシート)

2016年10月 WHO (原文[英語]へのリンク

要点

抗生物質への耐性は、世界の人々の健康、食べ物の安全、今日の生活の向上に対する最大の脅威のひとつです。
抗生物質への耐性は、誰にでも、どの年齢層にも、どこの国でも発生します。
抗生物質への耐性は自然に発生しますが、人や動物における抗生物質の誤用・乱用が発生を助長します。
肺炎、結核、淋病といった感染症患者の増加は、これらの治療に用いられる抗生物質が効果を弱めていることから、治療を益々難しくしています。
抗生物質への耐性の問題は、いまでは病院内にとどまらず、医療費の高騰や致死率の増加にも及んでいます。

概要

 抗生物質は、細菌感染症の予防と治療のために用いられる医薬品です。抗生物質への耐性は、細菌がこれらの医薬品の使用に対抗して変化することで発生します。
 人でも、動物でもなく、細菌が抗生物質に耐性となります。この(耐性の)細菌は、人にも動物にも感染できるため、これらが引き起こす感染症は、耐性のない細菌が引き起こす感染よりも、治療が難しくなります。
 抗生物質への耐性は、医療費を増加させ、病院での入院期間を長びかせ、致死率を高くさせます。
 世界は、早急に抗生物質の処方の仕方と使い方を変える必要があります。行動を変えることなく、新しい抗生物質も開発されなければ、抗生物質への耐性は大きな脅威となります。行動の変容には、ワクチン接種により感染症の拡大を減らす取り組み、手洗い、より安全な形での性生活、食べ物の衛生面での適切な取り扱い、なども含まれます。

問題の展望

 抗生物質への耐性は、世界のどの地域も危険なレベルに達しています。新たな耐性メカニズムが出現し、世界中に拡がり、通常の感染症の治療への対応能力に脅威を与えています。肺炎、結核、敗血症、淋病といった増え続ける感染症は、抗生物質が効きにくくなることで、治療が難しくなり、時には不可能にさせています。
 抗生物質が、処方されることなく、人にも動物にも使用されているところでは、耐性の出現と拡大が益々酷くなっています。また、基本的な治療ガイドラインのない国では、抗生物質が医療者によって余分に処方され、国全体で過剰に使用されています。
 早急に取り組みを開始しなれば、我々は、通常の感染症や些細な傷でも簡単に生命を落とすような抗生物質の効かない時代に向かいます。

(抗生物質への耐性の)防止と管理

 抗生物質への耐性は、抗生物質の誤用や乱用に加えて、(抗生物質への耐性の)防止と管理が粗末なことでも助長されます。影響を軽減し、耐性を拡大しないために、(我々は)社会のあらゆるレベルで改善に取り組むことができます。

個人レベル
(抗生物質への耐性の)防止と管理に対し、個人ができることは以下のとおりです。
・資格をもった医療専門家から処方された抗生物質だけを使用すること
・もし、医療者が、あなたには抗生物質が必要ないと言ったならば、決して、抗生物質を要求しないこと
・抗生物質を使用する際には、必ず医療者の指示に従うこと
・決して、残ってしまった抗生物質を分け与えたり、使ったりしないこと
・定期的に、手洗い、衛生的に適切に扱われた食べ物、病人との濃厚な接触の回避、より安全な形での性生活、最新のワクチン接種状態の維持を行い、感染を予防すること

政策レベル
(抗生物質への耐性の)防止と管理に対し、政策方針の決定者ができることは以下のとおりです。
・抗生物質への耐性に取り組むために、国の確りとした活動計画が確実に作成すること
・抗生物質耐性菌への感染症の調査活動を向上させること
・感染の予防と管理のための対策への政策方針、計画、実施を強化すること
・質の高い医薬品を適切に使用し、また、使用しないための規制を行い、促進させること
・抗生物質への耐性の影響について出来るだけ情報を入手しておくこと

医療専門家レベル
・すべての者の手、機器、環境の清潔を確実に維持し、感染を予防すること
・最新のガイドラインに従い、必要とされるときにだけ、抗生物質を処方し、配分すること
・抗生物質耐性菌への感染を調査チームに報告すること
・抗生物質の正確な使い方、抗生物質への耐性、誤用の危険性について、処方する患者に説明すること
・感染の予防法(ワクチン接種、手洗い、安全な性生活、くしゃみをするときの鼻と口の被い方など)を処方する患者に説明すること

製薬企業レベル
(抗生物質への耐性の)防止と管理に対し、医療者ができることは以下のとおりです。
・新たな抗生物質、ワクチン、診断機器、その他の医療機器の研究と開発に投資すること

農業関係者レベル
(抗生物質への耐性の)防止と管理に対し、農業関係者ができることは以下のとおりです。
・必ず、獣医師の適切な指導の下に動物に抗生物質を投与すること
・成長を促進させたり、病気を予防したりするために、抗生物質を使用しないこと
・抗生物質の使用量を減らすために動物にワクチンを接種し、可能な方法があれば、抗生物質に代わる方法を用いること
・動植物の生産地からの食品の生産と加工の全ての段階で、適切に取り扱うことを促進し、適応させること
・農場でのバイオ・セキュリティを向上させ、衛生環境と動物飼育環境を改善することを通して感染を防ぐこと

最新の(抗生物質の)開発

 いくつもの新しい抗生物質が開発されていますが、もっとも危険な形態の耐性菌に効果が期待できる抗生物質はありません。
 人々が手軽に頻繁に旅行するようになったことに伴い、抗生物質への耐性は、全ての国、あらゆる分野での取り組みが必要な世界中の問題となっています。

(抗生物質への耐性の)影響

 感染症が第一選択の抗生物質で治療できない場合、さらに高価な医薬品を使用しなければなりません。病期も治療期間もいままでよりも長くなり、病院では医療費が膨らむだけでなく、家族にも、社会にもしばしば経済的負担を増大させることになります。
 抗生物質への耐性が現在の医学の成果を危険に曝しています。臓器移植、化学療法、帝王切開などの手術は、感染を予防し治療するために有効な抗生物質がなければ、はるかに大きな危険となります。

WHOの取り組み

 抗生物質の耐性出現への取り組みは、WHOの優先課題となっています。抗生物質への耐性を含め、抗微生物薬への耐性に対する世界行動計画が2015年の世界保健機関総会で採択されました。世界行動計画は、安全かつ有効な医薬品で、確実に感染症を予防し、治療することを目的とします。

 抗微生物薬耐性についての世界行動計画は、次の5つの戦略を目的としています。
 1. 抗微生物薬耐性への啓発と理解を向上させること
 2. 調査活動と研究活動を強化すること
 3. 感染症の罹患率を減らすこと
 4. 抗微生物医薬品を適正使用すること
 5. 抗微生物薬への耐性に立ち向かうために継続的な投資を確立させること

 世界行動計画の文面には、WHOは抗微生物薬への耐性に取り組む加盟国の行動計画を支援することが書かれています。
 抗微生物薬への耐性の最初の目的に取り組むために、WHOは「抗生物質、取り扱いの注意」をテーマにした複数年にわたる世界キャンペーンを行っています。キャンペーンは2015年11月に世界抗菌薬啓発週間(The World Antibiotic Awareness Week)の初年に開始されました。

出典

WHO. Fact sheet, Media centre. October 2016
Antibiotic resistance
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/antibiotic-resistance/en/