2016年のニュース

麻しんについて (ファクトシート)

2016年11月 WHO (原文〔英語〕へのリンク

要点

麻しんは安全かつ費用対効果の高いワクチンがあるにもかかわらず、小児での主な死因の1つです。
2015年には、世界で134,200人が麻しんで死亡しており、これは、毎日約367人、1時間に15人が死んでいることになります。
麻しんワクチンによって、2000年から2015年までに、世界での麻しんによる死亡者は79%減少しました。
2015年には、世界の小児の約85%が1歳の誕生日までに定期予防接種として1回目の麻しんワクチン接種を受けました。2000年には73%でした。
公衆衛生において、麻しんワクチンは最も効果の高いものの1つであり、麻しんワクチンの接種は、2000年から2015年までに、推定で2,030万人の死亡を防ぎました。

概要

 麻しんはウイルス性疾患です。非常に伝染しやすく、重症化します。ワクチン接種が広く実施される以前の1980年には、毎年推定で260万人もの患者が麻しんで死亡していました。

 この疾患は、安全かつ有効なワクチンがあるにもかかわらず、依然として世界の小児における大きな死亡原因の1つです。2015年には、推定で134,200人が麻しんで死亡しました。5歳未満の小児がほとんどでした。

 麻しんはパラミクソウイルス科のウイルスによる疾患で、通常、直接接触や空気を介して伝播します。麻しんウイルスは気道に感染し、その後に身体全体に広がります。麻しんは人に感染する疾患で、他の動物には感染することは知られていません。

 ワクチン接種の活動が加速され、麻しんによる死亡者数の減少に大きな衝撃が与えられました。2000年から2015年までに、麻しんのワクチン接種は麻しんによる死亡者を推定2,030万人も防ぎました。全世界での麻しんによる死亡者数は、2000年の651,600人から79%減少し、2015年には134,200人となっています。

症状と所見

 麻しんは通常、ウイルスに接触した後、10日から12日後に高熱で発症し、発熱は4日から7日間続きます。最初の段階で、鼻水、咳、結膜発赤、涙目、頬部内側の白色発疹(コプリック斑)がみられます。通常は数日後に、発疹が顔面と上頚部に出現します。発疹は3日間以上続いて拡大し、手や足にも現れます。発疹は5日から6日間続いた後に消退します。平均すると、ウイルスに接触した後14日(7日~18日)で発疹が出現します。

 麻しんに関連する死亡原因のほとんどは、この疾患に関連した合併症によるものです。合併症は5歳未満の小児、または20歳を過ぎた成人に多くみられます。最も深刻な合併症は、失明、脳炎(脳浮腫を引き起こす感染症)、重症の下痢とそれに伴う脱水、耳への感染、肺炎の様な重症呼吸器感染症です。麻しんの重症化は、貧しく栄養状態の悪い幼児、特にビタミンAの不足や、HIV/AIDSなどの免疫機能が低下した患者でよく起こるようです。

 低栄養状態の割合が高く、適切な公衆衛生が受けられない地域では、麻しん患者の10%近くが死亡します。妊娠中に感染した場合には、重い合併症のリスクがあり、流産や早産が起こる可能性があります。麻しんに感染し回復した人は、生涯にわたり免疫が維持されます。

感染リスクの高い人

 ワクチン未接種の幼児は、麻しんの感染と、死亡を含む合併症に最も高いリスクがあります。ワクチン接種歴のない妊婦にもリスクがあります。免疫のない如何なる人(ワクチン接種歴のない人またはワクチンを接種しても免疫ができなかった人)も感染する可能性があります。

 麻しんは、多くの発展途上国、特にアフリカやアジアの一部では、いまでも頻繁にみられる疾患です。麻しんによる死亡の大部分(95%以上)は国民1人あたりの所得が低く、公衆衛生の基盤が弱い国で発生しています。

 麻しんの流行は、特に、自然災害や紛争が起きている国や、そこから復興する国で発生すると致命的となります。公衆衛生の基盤や保健サービスへの打撃は定期予防接種の中断を起こし、避難キャンプでの混雑は感染のリスクを増大させてしまいます。

感染経路

 麻しんウイルスは非常に感染力が強く、咳、くしゃみ、濃厚接触、感染した鼻咽頭の分泌物との直接接触で伝播します。

 ウイルスは、浮遊中や物質の表面で最大2時間の活性があり、感染力を持ちます。感染者は発疹が出現する4日前から発疹が消退した4日後まで、感染力を持っています。

 麻しんの集団発生は、特に、若い栄養失調の子供で起こり、多くは死亡者を出す流行となります。麻しんがほぼ撲滅された国でも、依然として、他国からの輸入感染者が重要な感染源となっています。

治療

 麻しんウイルスに特化した抗ウイルスの治療法はありません。

 麻しんの重症合併症は、充分に栄養と水分を摂り、WHOの推奨する経口補液で脱水の治療を行うことで避けることができます。この補液は下痢や嘔吐で失った水分や他の必須元素を補うものです。抗生剤は、眼や耳の感染、肺炎の治療に対して必要に応じて処方されます。

 発展途上国で麻しんと診断されたすべての小児は、24時間間隔で2回のビタミンAの投与を受けることが必要です。この治療は、たとえ栄養状態が良い小児でも麻しんの間に起こるビタミンAが低下し、これを補正するため、眼の障害と失明を予防することを助けます。ビタミンAの補給は麻しんによる死亡を50%減少させることが示されています。

予防

 患者発生と死亡率の割合の高い国での集団予防接種キャンペーンを組み合わせた小児に対する麻しんワクチンの定期予防接種は、世界での麻しんによる死亡を減らす公衆衛生戦略の鍵となっています。麻しんワクチンは50年以上に亘って使用されてきました。安全で、効果的で、かつ安価です。一人の小児に麻しんワクチンを接種する費用は約1米ドル(110円)です。

 麻しんワクチンは、風しんや流行性耳下腺炎の感染症が問題となっている国では、しばしば、これらのワクチンと一緒に接種されます。単独ワクチンでも混合ワクチンでも同等の効果があります。麻しんワクチンに風しんワクチンを追加すると、わずかなコストの追加で同時に接種でき、実施費用が一回分で済みます。

 2015年には、世界の小児の約85%が、通常の保健サービスとして、1歳の誕生日までに1度目の麻しんワクチン接種を受けています。2000年には73%でした。1度目のワクチン接種では約15%の小児で免疫ができないので、確実に免疫を誘導し、集団発生を予防するために2度の接種が推奨されています。

WHOの取り組み

 2010年に、WHO総会は将来の麻しんの撲滅に向けて2015年までに達成すべき3つの目標を立てました。

・1歳児の定期予防接種において、全国で90%以上かつ、全ての地域もしくはこれと同等の行政単位で80%以上に、1回の麻しんを含むワクチン(MCV1)接種率を上げること
・年間の麻しん発生率を100万人あたり5人未満に減らし維持すること
・2000年の推定値から麻しんの推定死亡率を95%以上減らすこと

 2015年までに、ワクチン接種率の改善への世界的推進で死亡者を79%減少させました。2000年から2015年の間に、麻しん・風しんイニシアチブと予防接種のための世界同盟の支援を受けて、麻しんのワクチン接種は推定で2,030万人を予防しました。2015年には、41か国で約1億8300万人の子どもたちが、集団ワクチン接種キャンペーン中に麻しんワクチンの接種を受けました。WHOのすべての地域が、現在、この予防可能である致死的疾患を2020年までに撲滅する目標を定めています。

麻しん・風しんイニシアチブ(The Measles & Rubella Initiative)

 2001年に発足した麻しん・風しんイニシアチブ(M&R Initiative)は、麻しんと風しんの感染を制御する目標を達成しようとする国々を支える、アメリカ赤十字、国連基金、米国疾病予防管理センター(CDC)、国連児童基金(UNICEF)、WHOによる世界規模の共同団体です。麻しん・風しんイニシアチブは麻しんで死亡したり、先天性風しん症候群で生まれる子どもを確実になくすこと、2015年までに麻しんによる死亡を95%減らすこと、2020年までに少なくともWHOの5つの地域で麻しんと風しんの撲滅を達成すること、を委託されています。

世界麻しん風しん排除対策戦略計画2012-2020

 2012年に、麻しん・風しんイニシアチブは、2012年から2020年に実施する新たな麻しんと風しんの世界的戦略計画を開始しました。この計画では、2015年から2020年の間に麻しんと風しんの感染制御と撲滅の目標を達成するために、国内及び国際的な支援者と協力して、国としての予防接種管理のための明確な戦略が立てられています。

2015年末までに
麻しんの死亡者を2000年の水準に比べて、少なくとも95%減少すること
地域的な麻しんと風しん、および先天性風しん症候群(CRS)の撲滅目標を達成すること

2020年末までに
少なくともWHOの5つの地域で麻しんと風しんの撲滅を達成すること

 現在の麻しんのワクチン予防接種率および発生率の傾向、並びに中期戦略の再検討からの報告に基づき、WHOの予防接種専門家グループ(SAGE)は、世界ではワクチンの接種率の解離が続いていることから、世界での2015年のマイル・ストーンと麻しん撲滅の目標は達成されなかったと結論付けました。SAGEは、これまでに麻しんの感染管理で得られてきたものを確実に維持するために、全般的に予防接種の体制を向上させることに今まで以上に重点を置くことを促しています。

 WHOは、対象者へのワクチンの接種活動のさらに協調した取り組みを可能することで、そして、このワクチンで予防可能な病気である麻しんによる死亡を減らすために、麻しんを速やかに確実に診断し、麻しんウイルスの国際的な拡がりを追跡するための世界的な検査ネットワークを構築することに引き続き、強化していきます。

出典

WHO. Fact sheet, Media centre. Reviewed November 2016
Measles.
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs286/en/