2017年のニュース

鳥や動物からのインフルエンザについて (ファクトシート)

2016年11月 WHO(原文〔英語〕へのリンク

要点

人は、鳥インフルエンザ・ウイルスA亜型(H5N1)、A(H7N9)、およびA(H9N2)、並びにブタ・インフルエンザ・ウイルスA亜型(H1N1)および(H3N2)など、鳥類や他の動物との人獣共通感染型のインフルエンザ・ウイルスに感染する可能性があります。
人への感染は、主に感染した動物やウイルスで汚染された環境と直接接触することで起こります。しかし、これらのウイルスが人と人との間で効率的に感染伝播することはありません。鳥類や動物との人獣共通感染型のインフルエンザ・ウイルスは、食べ物が適切に調理されていれば、これまでに人に感染したという科学的な証拠はありません。
人に感染する鳥や動物からのインフルエンザは、軽度の結膜炎から重症の肺炎や死に至るまで幅広い病態を引き起こします。
A(H5N1)やA(H7N9)の患者の大部分は、ウイルスに感染した生きた家禽や死んだ家禽との直接または間接の接触と関係しています。人への感染リスクを下げるためには、感染源となる動物の病気そのものを管理することが重要です。
インフルエンザ・ウイルスは、水鳥(水禽類)の大きなウイルス宿主が静かに保たれており、根絶することはできません。動物から人への感染は引き続き発生する可能性があります。公衆衛生上のリスクを最小限に抑えるためには、動物と人、両方について質の高い調査を行い、リスクに基づいたパンデミックへの計画を立てる必要があります。

概要

 インフルエンザ・ウイルスには、A型、B型、C型の3種類があります。インフルエンザA型ウイルスは、人にも多種多様な動物にも感染します。インフルエンザB型ウイルスは、人と人の間でのみ感染が循環し、季節性の流行を引き起こします。インフルエンザC型ウイルスは、人とブタに感染する可能性がありますが、感染症状は一般的に軽度で、あまり報告されていません。

 インフルエンザA型ウイルスは、異なるウイルスの表面タンパク質、ヘマグルチニン(H)とノイラミニダーゼ(N)との組み合わせによってサブタイプ(亜型)に分類されます。18の異なるサブタイプをもつヘマグルチニンと11の異なるサブタイプをもつノイラミニダーゼが存在します。感染の宿主によって、インフルエンザA型ウイルスは、鳥インフルエンザ、ブタ・インフルエンザ、または他の種類の動物のインフルエンザのウイルスに分類できます。例えば、鳥インフルエンザには、鳥インフルエンザA亜型(H5N1)およびA亜型(H9N2)のウイルス、また、ブタ・インフルエンザにはブタ・インフルエンザA亜型(H1N1)およびA亜型(H3N2)ウイルスが挙げられます。これらの動物でのインフルエンザA型ウイルスはすべてが人のインフルエンザ・ウイルスとは異なり、人と人の間では容易に感染はしません。

 水鳥(水禽類)は、ほとんどのインフルエンザA亜型ウイルスの主要な自然宿主です。ほとんどの場合、ウイルスの特性として、鳥類に引き起こす症状は無症状か軽度です。鳥に重大な病態を引き起こし、高い割合で死に至らしめるウイルスは、高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)と呼ばれています。一般的に家禽類で流行をも引き起こしても、重大な病態とならないウイルスは、低病原性鳥インフルエンザ(LPAI)と呼ばれています。

鳥や動物からのインフルエンザ・ウイルスの人への感染

 鳥および動物からの人獣共通感染型のインフルエンザ・ウイルスによる人への感染が報告されています。人への感染は、主に感染した動物やウイルスで汚染された環境と直接接触することで起こります。しかし、これらのウイルスが人と人の間で効率的に感染伝播することはありません。

 1997年に、中国の香港特別行政区(Hong Kong SAR)で発生した家禽のHPAI A(H5N1)ウイルスからの人への感染が報告されました。2003年以降、この鳥インフルエンザ・ウイルスはアジアからヨーロッパおよびアフリカに拡大し、一部の国では(いまでも)家禽の中に常在しています。この感染の発生で、数百万の家禽への感染、数百人の患者および多く死亡者を出してきました。また、家禽での感染発生で、感染の発生国の生活、経済および国際貿易に深刻な打撃を与えてきました。その他の鳥インフルエンザA亜型(H5)ウイルスも、家禽と人の両方に感染の流行を引き起こしてきました。

 2013年には、LPAI A(H7N9)ウイルスの人への感染が中国で報告されました。それ以来、このウイルスは国内の至るところの家禽に広がっており、数百人に上る患者と多くの死亡者をもたらしています。

 A(H7N7) and A(H9N2)ウイルスなど、この他のインフルエンザ・ウイルスは、人に対し一時的な感染を引き起こしてきました。いくつかの国では、ブタ・インフルエンザ・ウイルス、特にA (H1) and A(H3)の亜型をもつウイルスも、一時的な人への感染が報告されています。

鳥および動物との人獣共通感染症の人における臨床上の特徴

 鳥および動物との人獣共通感染型のインフルエンザの人への感染は、軽度の結膜炎から重症の肺炎や死に至るまで幅広い病態を引き起こします。潜伏期間、症状の重症度、臨床症状の現れ方などの疾患の特徴は、感染を起こす亜型に依存します。

 鳥インフルエンザA(H5N1) ウイルスの人への感染は、現在のデータでは、潜伏期間が平均で2日から5日、最大17日までの幅となっています。鳥インフルエンザA(H7N9) ウイルスの人への感染は、潜伏期間が平均で5日、1日から10日までの幅となっています。これらのウイルスは、潜伏期間の平均が季節性インフルエンザ(2日)よりも長くなっています。ブタ・インフルエンザ・ウイルスの人への感染は、潜伏期間が平均で2日から7日と報告されています。

 鳥インフルエンザA(H5)および鳥インフルエンザA(H7N9) ウイルスに感染した多くの患者で、この病態が侵襲的な臨床経過を示しています。通常、初発症状は高熱(38度か、それ以上)と咳で現れます。 呼吸困難や努力呼吸など下気道が関係する自他覚症状が報告されています。咽頭痛や鼻炎などの上気道症状は、それほど多くはありません。この他には、下痢、嘔吐、腹痛、鼻出血、歯肉出血、胸痛などの症状が、いくらかの患者の臨床経過の中で報告されています。感染による合併症には、低酸素血症、多臓器不全、細菌や真菌による二次感染などがあります。鳥インフルエンザA(H5)および鳥インフルエンザA(H7N9) ウイルスによる感染症患者の死亡率は、季節性インフルエンザによる死亡率よりも遙かに高くなっています。

 鳥インフルエンザA(H7N7)および鳥インフルエンザA(H9N2) ウイルスへの感染では、多くの患者は症状が軽度か現れないままとなります。鳥インフルエンザA(H7N7)の感染例で、1例だけはオランダで致死的な感染が報告されました。ブタ・インフルエンザ・ウイルスへの感染では、僅かに数例で入院が必要となり、極めて稀に感染による死亡例が報告されていますが、ほとんどの患者が軽度の症状です。

抗ウイルス薬による治療

 数種類の抗ウイルス薬、特にオセルタミビルは、ウイルスの増殖を抑制し、生存率を改善し得ることを示す根拠があります。

 感染が疑われた患者には、最大限に治療の効果を得るために、できるだけ早期(理想的には症状が出現してから48時間以内)に(抗ウイルス薬を)処方することが必要です。但し、現時点ではA(H5N1)とA(H7N9)は死亡率が高く、ウイルスの増殖時間も長いという科学的な証拠があるため、病気が進展した後も投薬を考慮することが必要となります。コルチコステロイドの使用は推奨されません。臨床に携わる医師は、A(H5N1)やA(H7N9)ウイルスによる感染が重篤の場合には、一日の推奨投与量よりも多く投与したり、治療期間を延長したりすることも考慮することが必要です。

 A(H5)やA(H7N9)の重症患者や胃腸症状が強い患者では、薬物の吸収が障害される可能性があります。胃腸症状が強い患者を管理する際には、こういったことも考慮すべきです。さらに、ほとんどのA(H5N1)とA(H7N9)ウイルスは、アマンタジンには耐性を示しているため、アマンタジンの使用は推奨されません。

人における感染のリスクファクター

 鳥インフルエンザ・ウイルスにおいて、人が感染する一番のリスクファクターは、感染した生きた家禽や死んだ家禽のほか、生きた鳥を扱う市場のようなウイルスで汚染された環境に、直接または間接に接するところにあります。感染した家禽の屠殺、脱羽、死んだ個体の取り扱い、家庭用に家禽を調理するための準備もリスクファクターとなります。

 適切に加熱調理された家禽や卵からA(H5N1)やA(H7N9)ウイルスが人に広がるという科学的な証拠はありません。A(H5N1)患者のうちの何人かが、血液で汚染された家禽の生肉を摂取したことと関係していました。家禽での鳥インフルエンザ・ウイルスの流行を制御することが、人での感染リスクを減らすためには不可欠です。いくつかの家禽類でA(H5)およびA(H7N9)ウイルスの流行が持続していることを踏まえると、感染制御には、各国で長期間の全面的な対策を委託することと動物と人の衛生担当部局が合同で強力に取り組むことが必要となります。

 ブタ・インフルエンザ・ウイルスの人への感染は、感染した豚との濃厚な接触、養豚場の訪問などで報告されています。しかし、人から人への感染の発生は限られています。

人におけるパンデミックの可能性

 インフルエンザによるパンデミック(新たなウイルスによって、世界中の大部分が影響を受ける流行)は予想できませんが、世界中で、健康、経済、社会に影響を与える事象は繰り返し発生しています。インフルエンザによるパンデミックは、人から人に持続的に伝播する能力を持ったインフルエンザ・ウイルスが発生し、そのウイルスに対して人が免疫をまったく持たないか、ほとんど持たないという鍵となる要因が重なったときに起こります。世界における貿易や渡航が拡大し、地域に限局した流行が急速に拡大し得る環境になっており、公衆衛生上の対策を準備する時間はほとんどありません。

 鳥インフルエンザA(H5N1)とA(H7N9)のウイルスは、いくつかの家禽類で広く伝播を続けており、ほとんどの人はこれらのウイルスに免疫がなく、ウイルスがいつでも人に重篤な病態を引き起こし得るとともに、ウイルス自体に人と人との間でさらに強い感染力を獲得する突然変異も起こし得ることから、公衆衛生上の懸念となっています。これまでのところ、人から人への感染は、家族間のような症状の重い患者とその世話をした者との間で濃厚に持続的に接触したときのように、稀にしか起こらないような状況で発生したことは考えられるものの、持続的な人から人への感染は起きていません。もし、これらのウイルスが人に感染するウイルスからの特定遺伝子を取り込む又は獲得することが起きた場合、そのときには、パンデミックを引き起こす可能性があります。

 現在の伝播を起こしている鳥や動物からのインフルエンザ・ウイルスが、将来、パンデミックを起こすかどうかは分かりません。しかし、人への感染力をもつ鳥や動物からのインフルエンザ・ウイルスの拡散は、人と動物の両方で調査活動を続け、人における感染の調査をすべておいて高い品質で行うとともに、リスクに基づいたパンデミックへの計画を立てる必要があります。

WHOの取り組み

 WHOは、世界における健康問題に関して指導力を発揮する中で、世界インフルエンザ・サーベイランス及び対応システム(GISRS)を通じて、綿密に鳥や動物からのインフルエンザ・ウイルスを監視しています。具体的に、WHO、国際獣疫事務局(OIE)、国際連合食糧農業機関(FAO)が協力し合って、公衆衛生上の懸念となる鳥や動物からのインフルエンザ・ウイルスの追跡とリスクの評価を行っています。

 リスク評価の結果に基づき、WHOは、動物の健康保健担当部局やインフルエンザを含む動物の感染制御と予防対策を担当する国レベルの家畜医師の担当部所などの支援組織と協力して、適切に介入のための手順を調整し、作成しています。

出典

WHO Fact sheet, Media centre. Updated November 2016
Avian and other zoonotic influenza
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/avian_influenza/en/