2017年のニュース

マイセトーマ(Mycetoma:真菌球、菌腫)について(ファクトシート)

2017年4月 WHO (原文[英語]へのリンク)

 重篤な感染症であるマイセトーマ (Mycetoma) がWHOの「顧みられない熱帯病 (NTDs)」の公式リストに追加されたことにより、ファクトシートが出されました。一般的には「マイセトーマ」が使用されることが多いようですが、ここでは因果関係を連想しやすい「真菌球」と表記します。

要点

真菌球は、皮膚、筋肉、骨にも影響を及ぼす皮下組織の慢性的な進行性の炎症性疾患であり、組織を破壊していきます。
真菌球は、多種多様な微生物によって引き起こされますが、ほとんどは細菌と真菌によって引き起こされます。
真菌球は、低層の草木が生い茂りやすく、短い雨季と長期の乾季を特徴にもった熱帯や亜熱帯の環境で発生します。
世界全体での疾患脅威は分かっていませんが、2013年の調査では合計で8,763人の患者が報告されています。
真菌球は、発生する地域の患者、地域社会、保健医療サービスに対し、医療、健康、社会経済上、さまざまな弊害をもたらします。
感染の予防は困難ですが、靴や衣類で穿刺傷を防げることから、感染症が常在する地域で暮らす人々や旅行者には、日頃から裸足で歩かないようにアドバイスすることが必要です。

概観

 真菌球は、通常、足に発生する慢性疾患です。しかし、身体のどの部分にでも発生します。おそらくは、何らかの真菌または細菌が外傷で皮下組織に入り込むことによって、感染が成立します。
 真菌球は、主に若年成人、特に15歳から30歳の間の男性に発生します。ほとんどが、途上国で発生しています。農業従事者、労働者、牧畜業者など、社会的・経済的に地位の低い労働者では、感染の状況は最悪となります。
 真菌球は、発生する地域の患者、地域社会、保健医療サービスに対し、医療、健康、社会経済上、さまざまな弊害をもたらします。有病率や罹患率に関する正確なデータはありません。しかしながら、罹患率を低下させ、治療効果を上昇させるには、早期での患者発見と治療が重要です。
 真菌球は19世紀半ばにインドの街Madurai(マドゥライ)で初めて報告されました。当初は、マドゥライ足と呼ばれていました。

感染の分布

 真菌球を起こしうる病原体は世界中に分布していますが、ベネズエラ、チャド、エチオピア、インド、モーリタニア、メキシコ、セネガル、ソマリア、スーダン、イエメンなどが「Mycetoma belt(マイセトーマ・ベルト)」と呼ばれ、熱帯・亜熱帯地域に常在しています。

感染経路

 感染伝播は、一般的には棘からの刺し傷など、原因となる病原体が軽度の外傷や穿刺傷によって体内に侵入することで成立します。真菌球と、素足で歩く人や肉体労働者との間には明確な相関関係があります。この疾患は、感染が常在する農村地域で裸足で暮らす住民に共通しており、感染を免がれる人はいません。

臨床上の特徴

 真菌球は、痛みのない皮下の塊、多数の洞、顆粒を含む排出物を組み合わせた構造を特徴とします。通常、皮膚、深部組織、骨などに波及し、(組織の)破壊、変形、機能の喪失などをもたらします。ときには、死に至ります。真菌球は、一般的には四肢、背中および臀部に発生しますが、身体のどの部分にでも発生の可能性があります。真菌球は、その緩慢な進行、無痛性であること、ほとんどの人での健康教育の欠如、感染が常在する地域における医療施設および保健管理施設の不足などから、切断以外に治療法のない、かなり進行した手遅れの状態で、多くの人々が(病んで)います。二次的な細菌感染症が頻繁に起き、治療せずにいると、疼痛、身体の障害および致命的な敗血症(全身に及ぶ重篤な感染症)に繋がる可能性が増します。感染が人から人に伝播することはありません。

診断

 原因菌は、洞の内部を細針で吸引(Fine Needle Aspiration、FNA)するか外科的に生検することによって、排出される顆粒内容物を直接検査することで確認することができます。粒子内容物への顕微鏡検査は病原体の確認に有用ですが、分類を誤ることもあるため、さらに培養で確認することも重要です。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による診断は、最も信頼性の高い検査法です。 血清学的な診断検査法はありません。画像診断にはMRIやCTスキャンがありますが、患部に超音波検査を行うことでも可能です。現実には、感染が常在する村落で真菌球を診断できるpoint-of-care(診断を直ぐに治療につなげること)の診断方法はありません。

治療

 治療は、原因となる病原体によって変わります。それは、複数を組み合わせた抗生物質を長期間にわたり内服するか、真菌の場合には抗真菌薬と手術の組み合わせになります。治療は、あまり満足のいくものではありません。多くの副作用があり、薬剤が高価で、感染が常在する地域ではとても利用できるものではありません。  

感染の予防と制御

 真菌球は報告義務のある疾患(法律によって報告が求められている疾患)ではないため、監視体制がありません。真菌球を予防し制御する計画は、まだ、ありません。感染の予防は困難ですが、感染症が常在する地域で暮らす人々や旅行者には、日頃から裸足で歩かないようアドバイスすることが必要です。

WHOと世界の取り組み

2016年5月28日の第69回世界保健会議では、真菌球を顧みられない熱帯病として認定する決議(WHA 69.21)が承認されました。
 真菌球を予防し管理するための公衆衛生上の戦略の策定には、この病気の脅威に対する疫学データの収集、研究への投資、医薬品の開発が必要となります。そのため、人的・物的資源に乏しい環境においても、対費用効果のある予防法、診断、早期の治療および患者管理が実用的になる必要があります。 現在、真菌球の疾患脅威を下げるために最も適切なアプローチは、現時点で利用できる手段を使って、積極的に患者を発見し、早期に診断・治療することです。
 2017年3月24日に、WHOは、WHA69.21を実施する優先事項を決めるための非公式会議をジュネーブで開催しました。(この会議で)疫学、患者管理、予防、保健体制の強化と対処能力の確立、調査活動と評価、研究、感染への提唱と地域住民の動員活動が、分野として選定されました。

出典

WHO. Fact Sheet、 Media Centre. April 2017
Mycetoma
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/mycetoma/en/