2017年のニュース

B型肝炎について(ファクトシート)

2017年7月 WHO (原文[英語]へのリンク

要点

B型肝炎は肝障害を起こすウイルス感染症です。急性疾患と慢性疾患を起こします。
このウイルスは、感染者の血液や、その他にも体液に接触することで伝播します。
推定で、2億5,700万人が慢性的にB型肝炎に感染しています(B型肝炎表面抗原が陽性と定義される者)
2015年には、肝硬変、肝がんを含む毎年88.7万人以上の人がB型肝炎の合併症によって死亡しました。
B型肝炎は、職業上、医療従事者にとって重大な危険要因です。
しかし、B型肝炎は、現在、安全で効果的なワクチンを使用することによって予防することができます。

概要

 B型肝炎は、生命を脅かす可能性のある肝臓の感染症で、B型肝炎ウイルスによって引き起こされます。B型肝炎は、世界中で健康上の大きな問題となっています。B型肝炎は、慢性感染症を起こし、肝硬変や肝がんにより死亡する危険を高めます。

 1982年から、B型肝炎ワクチンが使用できるようになりました。このワクチンは、感染の予防、慢性疾患への進展、B型肝炎による肝がんに対して95%の有効性があります。

地理的分布

 B型肝炎の罹患率は、WHO西太平洋地域およびWHOアフリカ地域で最も高く、それぞれに、成人層の6.2%および6.1%が感染しています。WHO東部地中海地域、WHO東南アジア地域およびWHOヨーロッパ地域では、それぞれに、人口全体の3.3%、2.0%および1.6 %が感染しているとみられています。WHOアメリカ大陸地域では人口の0.7%が感染しています。

感染経路

 B型肝炎ウイルスは、体外でも、少なくとも7日間は感染力を持続します。この間に、ウイルスが予防接種を受けていない人の身体に侵入すると感染することがあります。B型肝炎ウイルスの潜伏期間は平均75日ですが、30日から180日までの幅があります。ウイルスに感染した後、30日から60日でウイルスは検出されます。持続感染や慢性B型肝炎にも進展します。

 高頻度で(感染が)流行している地域では、B型肝炎は出産時の母子感染や水平感染(感染者の血液との接触)、特に5歳までの感染児から非感染児への接触で、極めて頻繁に感染の拡がりが起こります。慢性感染への進展は、幼児期での母親からの感染または5歳までの感染が極めて一般的です。

 B型肝炎は、感染者の血液や、唾液、月経血、膣分泌液や精液などのさまざまな体液との経皮的接触または粘膜による接触を介して拡がります。性行為によるB型肝炎への感染は、ワクチン未接種の男性同性愛者や複数のセックス・パートナー、並びにセックス・ワーカーと交渉機会のある異性の間で起こります。成人での感染では、患者の5%未満ですが、慢性肝炎にもなります。ウイルスの感染伝播は、医療施設や注射薬物使用者での針やシリンジの使い回しを通しても起こります。さらに、感染は、医療処置、外科処置、歯科治療、並びに、刺青、感染血に汚染されたカミソリやその類似品を介しても起こります。

症状

 急性感染期には、ほとんどの人に症状は現れません。しかし、中には、皮膚や眼球結膜の黄染(黄疸)、褐色尿、激しい倦怠感、悪心、嘔吐、腹痛などの急性症状が、数週間続く人もいます。急性肝炎の一部の人は、死に至るような急性肝不全に進展することがあります。

 また、B型肝炎ウイルスは、一部の人で慢性的な肝臓への感染を起こし、後に、肝硬変や肝がんに進展することがあります。

持続感染(慢性化)のリスクのある人

 B型肝炎ウイルスの感染が慢性化する可能性は、感染した年齢に依存します。6歳未満でB型肝炎ウイルスに感染した小児で、最も感染が慢性化しやすいようです。

 幼児と小児
・1歳以下で感染した乳児の80%から90%で感染が慢性化します。
・6歳未満で感染した小児の30%から50%で感染が慢性化します。

 成人
・成人時に感染した健康人でも、5%未満は慢性化します。
・慢性化した成人のうち20%から30%は肝硬変や肝がんへと進展します。

HBV-HIV重複感染

 HBV感染者の約1%(270万人)はHIVにも感染しています。逆に、世界におけるHIV感染者でのHBV罹患率は7.4%になります。2015年以降、WHOは、病期の進行度にかかわらず、HIV感染と診断されたすべての人には治療を推奨しています。当初、HIVへの感染の第一選択として推奨された治療薬の組み合わせに含まれるテノホビルは、HBVに対しても有効です。

診断

 臨床的背景からは、B型肝炎を他のウイルスによって生じる肝炎と区別することができません。そのため、検査による診断確定が不可欠です。B型肝炎の診断や患者の経過観察には複数の血液検査が利用できます。その血液検査は、急性感染と慢性感染との鑑別にも利用されます。

 B型肝炎への感染の検査診断は、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBs抗原)の検出に焦点を当てています。WHOは、輸血を受けた人に偶発的に感染が起こることを避け、血液の安全を確保するために、すべての献血者がB型肝炎の検査を受けることを勧めています。
・急性HBV感染は、HBs抗原およびコア抗原、HBc抗原に対する免疫グロブリンM 抗体(IgM)の存在によって特徴づけられます。感染初期には、患者はHBe抗原に対しても血清反応が陽性になります。HBe抗原は常にウイルスの複製に対する高い信頼性をもつマーカーです。HBe抗原の存在は感染者の血液と体液が高い感染性をもつことを示しています。
・持続感染は(同時のHBeAgの有無にかかわらず)少なくとも6か月間のHBs抗原の持続によって特徴づけられます。HBs抗原の持続は、その後の生涯において慢性肝疾患と肝細胞がん(hepatocellullar carcinoma: HCC)に進展するリスク(要因)への重要なマーカーとなります。

治療

 急性B型肝炎に、特別な治療法はありません。そのため、治療は、症状の緩和と、嘔吐や下痢で失われた体液の補正を含めた十分な栄養バランスの維持を目的として行います。

 慢性B型肝炎には、経口の抗ウイルス薬による薬物療法が可能です。治療は肝硬変への進展を抑制し、肝がんの発生確率を下げ、長期の生存を向上させます。

 WHOは、テノホビルやエンテカビルといった経口治療薬の使用を推奨しています。それは、これらがB型肝炎ウイルスを押さえ込む最も有力な薬剤だからです。これらは、他の薬物と比較して、ほとんど薬剤耐性を誘導することがありません。1日1回の服用で済み、ほとんど副作用がなく、限られた観察をするだけで済みます。

 エンテカビルは特許権が切れていますが、入手環境と費用は大きく異なります。テノホビルは、中所得国から高所得国で2018年まで特許によって保護されており、2017年2月での時点では、治療費が年間400米ドルから1500米ドル掛かります。(中国、ロシア連邦など)一部の中所得国では、テノホビルの利用において特許障壁が存在していますが、テノホビルのジェネリック医薬品の利用が可能なほとんどの国では手頃な価格になっています。世界価格報告体制(Global Price Reporting Mechanism:GPRM)は、2017年2月の時点で1年間の治療費が48ドルから50ドルとなることを示しています。

 しかし、ほとんどの人で、治療はB型肝炎の感染を完治することはできません。ただ、ウイルスの複製を押さえているに過ぎません。そのため、B型肝炎の治療を始めた人は生涯にわたり薬を飲み続けなければなりません。

 たくさんの施設で人的・物的資源に制約のある中で、B型肝炎の診断と治療への利用環境はまだ限られています。2015年には、HBVに感染している2億5,700万人のうち9%(2,200万人)だけが(自らの)診断を知っていました。診断を知っていた人のうち、治療でカバーできた範囲はわずかに8%(170万人)でした。多くの人は、既に進行した肝臓の病態に陥ってから診断されます。

 HBV感染症の長期合併症のうち、肝硬変および肝細胞癌は疾患における大きな脅威となります。肝癌は急速に進行し、治療の選択肢も限られており、一般に予後は不良です。低所得国では、肝癌と分かった人は数か月以内に死亡してしまいます。高所得国では、手術と化学療法で数年間は寿命を延ばすことができます。ときに、高所得国では、肝硬変患者に対して肝移植が行われますが、その成功の程度はさまざまです。

予防

 B型肝炎ワクチンは、B型肝炎の予防の大きな柱です。WHOは、すべての幼児が出生後可能な限り早く、できれば24時間以内にB型肝炎ワクチンを受けるよう勧めています。現在、5歳未満の小児において慢性HBV感染症への罹患率が低いことは、B型肝炎ワクチンが広く使われていることが寄与している可能性があります。世界で、2015年に、この年齢層でのHBV感染症への推定罹患率は約1.3%しかなく、これに対して、ワクチン接種前の時代には約4.7%もありました。出生時投与に2回か3回の追加投与をして、初回の一連接種を完結させる必要があります。ほとんどの場合、次の選択肢のうちの一つが適切と思われます。
・B型肝炎ワクチンの3回投与スケジュール。第一回目の投与は単独ワクチン(一価)を出生時に行い、DPTワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風)の第一回目と第三回目投与と同時期に、第二回目、第三回目投与(一価または混合ワクチン)を行う。または
・4回投与、出生時に一価を投与し、続いて3回の一価または混合ワクチンの投与を行う。通常は他の小児定期ワクチンと同時に接種する。

 完全に一連のワクチン接種を行えば、幼児、小児および若年成人の95%以上で保護できるレベルの抗体を誘導できます。この免疫力は少なくとも20年は持続し、おそらく生涯持続すると考えられます。このように、WHOは3回のワクチン接種計画を完結した人には免疫増強のためのワクチン接種は推奨していません。

 過去に、予防接種を受けたことがなく、感染率の低いまたは中等度の国々に住む18歳未満の小児と青少年は予防接種を受けるべきです。そのような国でのハイ・リスク・グループの人は、より多くの人々に感染させる可能性があり、彼らもまた、ワクチン接種を受けるべきです。ハイ・リスク・グループには以下の人が入ります。
・頻繁に輸血や血液製剤を投与する必要がある人、透析患者、臓器移植を受けた人。
・刑務所拘留者
・注射薬物使用者
・HBV持続感染者の性的パートナーと同居家族
・複数の性的パートナーをもつ人々
・医療従事者や仕事を通じて血液や血液製剤にさらされる可能性のある人々
・流行地域に出発する前に、行われるべき一連のB型肝炎ワクチン接種が完了していない渡航者

 ワクチンは、安全性と有効性に優れています。B型肝炎ワクチンは1982年以降、世界中で10億回以上接種されています。多くの国では、小児の8%から15%がB型肝炎ウイルスに持続感染していましたが、予防接種によって、予防接種を受けた小児における持続感染の割合が1%未満に減少しました。

 2015年には、世界でB型肝炎ワクチンを3回目の接種率は84%に達し、世界での出生時のB型肝炎ワクチン接種率は39%でした。アメリカ大陸と西太平洋地域のWHO事務局のみが、接種率に大きな幅がありました。また、輸血に使用されるすべての献血血液と血液製剤の品質保証スクリーニングなどの血液安全戦略の実施によりHBVの感染を防ぐことができます。2013年には、世界で献血の97%が検査され、品質が保証されています。しかし、また(安全性には)溝が残っています。不要な注射や安全でない注射を排除し、安全な注射の扱いを実施することは、HBV感染症を予防する上で効果の高い戦略になります。安全でない注射の使用は、2000年の39%から2010年には5%に減少しました。さらに、(性的)パートナーの数を最小限に抑え、感染防御への対策(コンドーム)を使用するなどの、より安全な性生活の実践も感染を防ぎます。

WHOの取り組み

 2015年3月に、WHOは初めて「慢性B型肝炎とともに暮らす人々のための予防、ケア、治療のためのガイドライン」を発行しました。その推奨は以下のとおりです。
・肝疾患のステージと治療の適格性を評価するための、簡単で非侵襲性の診断検査の使用促進
・最も進行した肝疾患と死への高いリスクをもつ人々への治療の優先
・第1治療および二次治療における薬剤耐性への高い障壁をもつ核酸類似体の適切な使用(2-11歳の小児へのテノホビルとエンテカビル、およびエンテカビル)の推奨

 これらのガイドラインは肝硬変の患者への生涯の治療も推奨しています。また、疾患の進展、薬剤の毒性、肝がんの早期発見に対する定期的な検査を推奨しています。

 2016年5月に、世界保健総会では、初めて「ウイルス性肝炎部門の世界保健戦略、2016-2020」を採択しました。この戦略は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(医療費の支払いに困窮する貧困層にも保健医療サービスを届けること)の役割の重要性を強調し、この戦略の目標が、いくつもの継続すべき発展目標とともに並べられています。この戦略には、公衆衛生上の問題として、ウイルス性肝炎を撲滅することを視野に入れており、2030年までに新たなウイルス性肝炎感染者を90%減らし、ウイルス性肝炎による死亡者を65%減らすことが含まれています。これらの目標を達成するために、各国およびWHO事務局が取るべき活動が戦略の中で概説されています。

 2030年に向けた継続可能な発展目標の下で、世界の肝炎に対する目標達成に向けた各国を支援するために、WHOは次のような分野を支援しています。
・意識の向上、パートナーシップの促進、人的資源の動員
・エビデンスに基づく政策と行動するためのデータの定形化
・感染経路の防止
・スクリーニング、管理、治療の実行

 WHOは、ウイルス性肝炎に対する意識と理解の向上のため、毎年7月28日を世界肝炎デーと定めています。

出典

WHO Fact sheet, Media Centre. Update July 2017
Hepatitis B
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs204/en/