2013年09月24日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況について(更新45)

9月20日付で公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、以前(6月2日)にイタリアでMERS(マーズ)コロナウイルスに感染した確定患者と報告された2人が疑い患者に分類し直されました。

5月に行われた検査をさらに解析した結果、この2人の患者は、現在のWHOの「確定患者」の症例定義を満たしていないことが明らかとなり、分類し直されました。2人の患者は2歳の女児と42歳の女性で、ヨルダンに渡航歴のある初発患者の濃厚接触者として発見されました。

WHOの症例定義による「疑い患者」は、MERSコロナウイルスに感染した可能性が高いと考えられるものの、適切な検体が採取できず、現在の基準で行われる確定診断のための検査が完全に実施できなかった患者です。

全体として、昨年9月からこれまでに、WHOに報告されたMERSコロナウイルスに感染したと確定された患者は130人で、このうち58人が死亡しました。

現在の状況と利用可能な情報に基づいて、WHOはすべての加盟国へ、重症急性呼吸器感染症(SARI)のサーベイランスを継続し、通常でないパターンの症例を慎重に検討するよう推奨しています。

医療従事者は、引き続き、警戒するよう勧められます。最近、中東から帰国し、SARIを発症した患者には、現在のサーベイランスに関する推奨に示されている通り、MERSコロナウイルスの検査をすべきです。

可能であれば、診断のために患者の下気道からの検体を採取すべきです。また、臨床医は、免疫不全患者では、下痢のような非特異的な症状・所見がみられた場合でも、MERSコロナウイルスの感染を考慮すべきです。

医療機関では、感染予防・制御を総合的に実施する重要性を再認識すべきです。MERSコロナウイルスの感染が疑われる患者や確定患者に医療を提供する施設では、他の患者や医療従事者、医療機関を訪れる人にウイルスが感染するリスクを減らすために適切な対策を行うべきです。

WHOは、すべての加盟国に対し、MERSコロナウイルスの新たな感染者が発生した際には、考えられる感染源と臨床経過の情報を合わせて、速やかに評価して報告するよう呼びかけています。感染様式を確認するための感染源調査は速やかに実施されるべきで、それにより、ウイルスの更なる伝播を防ぐことができます。

WHOは、この事例に関して入国時の特別なスクリーニングおよび渡航や貿易を制限することを推奨していません。

WHOは、現在の状況について事務局長に助言するため、国際保健規則に基づく緊急委員会を開催しました。緊急委員会は、WHOの全地域の国際的な専門家から構成されており、現時点の情報に基づいてリスクアセスメントを行った結果、満場一致で、国際的な公衆衛生上の脅威となる緊急事態(Public Health Emergency of International Concern: PHEIC )の要件は満たしていないと助言しました。

海外渡航時には、手洗いの励行や動物との接触を避けるなど、一般的な衛生対策を心がけていただくとともに、MERSコロナウイルスの患者が発生している国に滞在した後に、発熱や咳などの呼吸器症状が現れた場合には、検疫所にご相談ください。

出典

WHO(GAR):Middle East respiratory syndrome coronavirus(MERS-CoV) – update
http://www.who.int/csr/don/2013_09_20/en/index.html