2013年12月02日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況について (更新58)

 11月29日付けで公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、カタールの国際保健規則の担当は、最高保健評議会と環境省が、オランダ保健省の国立公衆衛生環境研究所並びに(RIVM)エラスムス医療センターと協力し、MERS(マーズ)コロナウイルスに感染した確定患者2人と関連があった飼育小屋のラクダの群れから、MERSコロナウイルスを検出したとWHOに報告しました。

 患者の詳細は、過去の新着情報を参照してください。

  中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況について (更新48)

  中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況について (更新50)

カタールの調査結果

 MERS(マーズ)コロナウイルスに感染した2人の確定患者が発生したことで、カタールの当局(公衆衛生部門と動物資源部門)は、WHOと国際連合食糧農業機関(FAO)によって設立された国際チームの支援を受け、人への感染源となり得るものについて、広範囲に渡る疫学調査を実施しました。

  RIVMとエラスムス医療センターで行われた検査で、患者2人と接触のあった14頭の動物のうち、3頭のラクダからMERSコロナウイルスが確認されました。予防措置として農場の14頭のラクダは隔離されています。すべてのラクダは検体が採取された日とその後40日間、無症状または軽症でした。2人の確定患者の接触者は、この飼育小屋で雇用されていた労働者と同様にスクリーニング検査を受けましたが、全員がMERSコロナウイルス陰性でした。

 この結果は、ラクダがMERSコロナウイルスに感染し得るということを示していますが、ラクダや他の動物が、人への感染や人からの感染を含め、ウイルスの伝播にどのような役割を果たすのかを示す情報は不足しています。最高保健評議会は、他の動物種や飼育小屋の環境から採取された検体を更に検査するために、RIVMとエラスムス医療センターと連携しています。また、公衆衛生部門と動物資源部門は、動物と濃厚接触がある人の感染リスクを調査するため、国レベルで、更なる研究を実施しています。

 MERSコロナウイルスに感染して重症となるリスクが高い人は、ウイルスが存在する可能性があると知られる農場や飼育小屋を訪れる際に、動物との接触を避けるべきです。一般市民は、農場を訪れる際に、動物を触る前と触った後の定期的な手洗いを行う、病気の動物との接触を避ける、食品衛生対策を実施する等の一般的な衛生対策をしっかりと実施すべきです。

 WHOは、これらの結果を更に評価し、必要に応じて指針を改定するために、カタールの当局と連携しています。

 全体として、昨年9月からこれまでに、WHOに報告されたMERSコロナウイルスに感染したと確定された患者は160人で、このうち68人が死亡しました。

WHOのMERSコロナウイルスに関する指針

 現在の状況と利用可能な情報に基づいて、WHOはすべての加盟国へ、重症急性呼吸器感染症(SARI)のサーベイランスを継続し、通常と異なる傾向がみられた場合には慎重に検討するよう推奨しています。

 医療従事者は、引き続き、警戒するよう勧められます。最近、中東から帰国し、SARIを発症した患者には、現在のサーベイランスに関する推奨に示されている通り、MERSコロナウイルスの検査をすべきです。

 これまでに報告された患者は初発症状として呼吸器疾患がみられました。下痢のほか、ショックを伴う腎不全や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む合併症もみられています。重症の免疫不全患者では、典型的な所見や症状がみられない可能性もあります。

 医療機関では、感染予防・制御を総合的に実施する重要性を再認識すべきです。MERSコロナウイルスの感染が疑われる患者や確定患者に医療を提供する施設では、他の患者や医療従事者、医療機関を訪れる人にウイルスが感染するリスクを減らすために適切な対策を行うべきです。

 WHOは、すべての加盟国に対し、MERSコロナウイルスの新たな感染者が発生した際には、考えられる感染源と臨床経過の情報を合わせて、速やかに評価して報告するよう呼びかけています。感染様式を確認するための感染源調査は速やかに実施されるべきで、それにより、ウイルスの更なる伝播を防ぐことができます。

 WHOは、この事例に関して入国時の特別なスクリーニングおよび渡航や貿易を制限することを推奨していません。

 WHOは、現在の状況について事務局長に助言するため、国際保健規則に基づく緊急委員会を開催しました。緊急委員会は、WHOの全地域の国際的な専門家から構成されており、現時点の情報に基づいてリスクアセスメントを行った結果、満場一致で、国際的な公衆衛生上の脅威となる緊急事態(Public Health Emergency of International Concern: PHEIC )の要件は満たしていないと助言しました。

 海外渡航時には、手洗いの励行や動物との接触を避けるなど、一般的な衛生対策を心がけていただくとともに、MERSコロナウイルスの患者が発生している国に滞在した後に、発熱や咳などの呼吸器症状が現れた場合には、検疫所にご相談ください。

出典

WHO(GAR): Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) – update
http://www.who.int/csr/don/2013_11_29/en/index.html