2014年04月24日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況について (更新20)

 4月23日付けで公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、4月21日、18日、16日にアラブ首長国連邦(UAE)保健省は、MERS(マーズ)コロナウイルスに感染した確定患者が新たに9人発生したと公表しました。

 4月21日に報告された患者の詳細は以下のとおりです。

・アブダビの52歳女性。この患者は4月16日に発症し、入院しました。基礎疾患がありますが、現在の容態は安定しています。この患者は、4月5日から16日まで、サウジアラビアのジッダ(Jeddah)を旅行し、3回病院を訪れていました。動物との接触歴はなく、全ての接触者に対し追跡調査が行われています。

 4月18日に報告された患者の詳細は以下のとおりです。

・アブダビの63歳女性。4月14日に報告された確定患者との濃厚接触者。この患者は、4月13日にスクリーニングを受け、4月15日に発症しました。基礎疾患がありました。動物との接触や最近の渡航歴はありません。
・アブダビの73歳女性。2月26日以降、他の疾患で入院加療中であり、基礎疾患がありました。4月14日に集中治療室(ICU)に入院しました。動物との接触や最近の渡航歴はありません。

 全体として、2012年9月からこれまでに、WHOに報告されたMERSコロナウイルスに感染したと確定された患者は253人で、このうち93人が死亡しました。

 2014年4月20日のMERSコロナウイルスの「Disease Outbreak News」で公表された合計患者数には、4月16日に報告された6人がすでに含まれていました。患者の詳細は以下のとおりです。

 6人全てアブダビからの発生で、4月10日確定診断された患者の濃厚接触者です。現在までに、病院で隔離され、容態は良好です。他のヘルスケアワーカーや家族のスクリーニングが行われています。

・52歳女性。4月9日に発症し症状は軽度。4月10日にスクリーニングを受けました。基礎疾患はなく、動物との接触や、最近の渡航歴はありません。
・28歳男性。4月10日にスクリーニングを受けました。症状や基礎疾患はなく、動物との接触や最近の渡航歴はありません。
・59歳男性。4月12日にスクリーニングを受けました。症状はなく、基礎疾患があります。動物との接触や最近の渡航歴はありません。
・28歳男性。4月10日にスクリーニングを受けました。4月11日に軽度の症状が見られました。基礎疾患はなく、動物との接触や最近の渡航歴はありません。
・55歳女性。4月12日にスクリーニングを受けました。4月8日に軽度の症状が見られました。基礎疾患はなく、動物との接触や最近の渡航歴はありません。
・28歳女性。4月10日にスクリーニングを受けました。4月8日に軽度の症状が見られました。基礎疾患はなく、動物との接触や最近の渡航歴はありません。

 現在の状況と利用可能な情報に基づいて、WHOはすべての加盟国へ、重症急性呼吸器感染症(SARI)のサーベイランスを継続し、通常と異なる傾向がみられた場合には慎重に検討するよう推奨しています。

 医療機関でMERSコロナウイルスに感染するかもしれないため、感染予防・制御を強化し続ける必要があります。MERSコロナウイルスの感染が疑われる患者や確定患者に医療を提供する施設では、他の患者やヘルスケアワーカー、医療機関を訪れる人にウイルスが感染するリスクを減らすために適切な対策を行うべきです。すべての医療従事者に対して感染予防・制御に関する教育と訓練を定期的に実施すべきです。

 MERSコロナウイルスに感染した患者の中には、軽症の患者や、所見が非典型的である患者がおり、患者を常に早期に発見できるわけではありません。そのため、MERSコロナウイルスや他の病原体に感染した疑いがある患者や確定患者の有無にかかわらず、常に、どの場所でも、すべての患者に対して標準予防策を実施することが重要です。

 急性呼吸器感染症の症状のある患者に医療を提供する際には、飛沫予防策を追加すべきです。また、MERSコロナウイルスに感染した可能性がある患者や確定患者に医療を提供する際には、眼の防護を加えた接触予防策を追加すべきです。エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気予防策を行う必要があります。

 臨床的にも疫学的にもMERSコロナウイルスの感染が強く疑われる場合には、その患者の最初の鼻咽頭スワブ(ぬぐい液)の検査が陰性であっても、感染している可能性があるとして管理すべきです。最初の検査が陰性であっても、再検査を行うべきで、下気道からの検体が望ましいです。

 医療従事者は、引き続き、警戒するよう勧められます。最近、中東から帰国し、SARIを発症した患者には、現在のサーベイランスに関する推奨に示されている通り、MERSコロナウイルスの検査をすべきです。WHOは、すべての加盟国に対し、MERSコロナウイルスの新たな感染者が発生した際には、考えられる感染源と臨床経過の情報を合わせて、速やかに評価して報告するよう呼びかけています。感染様式を確認するための感染源調査は速やかに実施されるべきで、それにより、ウイルスの更なる伝播を防ぐことができます。

 MERSコロナウイルスに感染して重症となるリスクが高い人は、ウイルスが存在する可能性があると知られる農場や飼育小屋を訪れる際に、動物との接触を避けるべきです。一般市民は、農場を訪れる際に、動物を触る前と触った後の定期的な手洗いを行う、病気の動物との接触を避ける、食品衛生対策を実施する等の一般的な衛生対策をしっかりと実施すべきです。

 WHOは、この事例に関して、入国時の特別なスクリーニングおよび渡航や貿易を制限することを推奨していません。

 海外渡航時には、手洗いの励行や動物との接触を避けるなど、一般的な衛生対策を心がけていただくとともに、MERSコロナウイルスの患者が発生している国に滞在した後に、発熱や咳などの呼吸器症状が現れた場合には、検疫所にご相談ください。 

出典

WHO Global Alert and Response
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) – update
http://www.who.int/csr/don/2014_04_23_mers/en/