2014年05月07日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況について (更新24)

 5月5日付けで公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、4月24日ヨルダンから1人、5月2日米国から1人、MERS(マーズ)コロナウイルスに感染した確定患者が発生したと公表しました。米国ではこれが初めてのMERS感染患者(輸入例)です。

 4月24日にヨルダンの国立IHRフォーカルポイント(NFP)よりWHOへ報告された患者の詳細は以下のとおりです。

 ・サウジアラビアの28歳男性。この患者は接触者追跡調査を通じて特定され、無症状です。2014年4月23日に確定診断された患者の親戚です。4月22日、24日に鼻咽頭スワブ検体が採取され、中央公衆衛生研究所において、PCR検査法によりMERSコロナウイルスに感染していることが確認されました。サウジアラビア国家当局は、この患者と4月22日に報告のあった症例の追跡調査を行っています。現在のところ二次感染の事例は確認されていません。

 5月2日に米国のフォーカルポイントよりWHOへ報告された患者の詳細は以下のとおりです。

 ・サウジアラビア、リヤド在住の60代男性米国人。この患者は、2014年4月24日にロンドンヒースロー空港を経由してリヤドから米国シカゴへ渡航しました。加えて、バスでシカゴからインディアナへ旅行しています。

 報告によると、この患者はリヤドで働いていました。この患者がMERSコロナウイルス確定患者を直接世話していたかどうか、どのような感染予防策をとっていたか、米国保健当局はこの時点ではわかっていません。CDCチームはこの情報も含め、この患者のさらなるデータ収集を米国インディアナ州保健局と協力して行っています。

 この患者は2014年4月14日ごろに呼吸器症状のない微熱を伴う体調不良を感じました。4月27日、息切れ、咳、発熱と軽度鼻炎症状が出現しました。4月28日、緊急治療室で診察を受けたところ、胸部レントゲン検査において、右肺下部への浸潤影が認められ、個室病室へ入院しました。報告によると、4月29日、陰圧室と空気感染予防策が講じられており、4月30日、完全隔離(標準、接触者、空気感染)の予防策が実施されました。4月29日胸部CT検査の結果によると、両肺の浸潤影が認められました。現在の容態は、息切れがあるものの挿管はされておらず、安定しています。

 CDCの国際移住検疫局(Global Migration and Quarantine:DGMQ)部門は、場所や要面談接触者の特定を支援するため、患者が利用した2便の乗客リストと、バス会社からの情報の入手を始め、郡、州、国際的な関係機関、航空会社、バス会社と協力して取り組んでいます。

 米国および、南北アメリカ地域におけるMERSコロナウイルスの初めての輸入症例です。

 現在の状況と利用可能な情報に基づいて、WHOはすべての加盟国へ、重症急性呼吸器感染症(SARI)のサーベイランスを継続し、通常と異なる傾向がみられた場合には慎重に検討するよう推奨しています。

 医療機関でMERSコロナウイルスに感染するかもしれないため、感染予防・制御を強化し続ける必要があります。MERSコロナウイルスの感染が疑われる患者や確定患者に医療を提供する施設では、他の患者やヘルスケアワーカー、医療機関を訪れる人にウイルスが感染するリスクを減らすために適切な対策を行うべきです。すべての医療従事者に対して感染予防・制御に関する教育と訓練を定期的に実施すべきです。

 MERSコロナウイルスに感染した患者の中には、軽症の患者や、所見が非典型的である患者がおり、患者を常に早期に発見できるわけではありません。そのため、MERSコロナウイルスや他の病原体に感染した疑いがある患者や確定患者の有無にかかわらず、常に、どの場所でも、すべての患者に対して標準予防策を実施することが重要です。

 急性呼吸器感染症の症状のある患者に医療を提供する際には、飛沫予防策を追加すべきです。また、MERSコロナウイルスに感染した可能性がある患者や確定患者に医療を提供する際には、眼の防護を加えた接触予防策を追加すべきです。エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気予防策を行う必要があります。

 臨床的にも疫学的にもMERSコロナウイルスの感染が強く疑われる場合には、その患者の最初の鼻咽頭スワブ(ぬぐい液)の検査が陰性であっても、感染している可能性があるとして管理すべきです。最初の検査が陰性であっても、再検査を行うべきで、下気道からの検体が望ましいです。

 医療従事者は、引き続き、警戒するよう勧められます。最近、中東から帰国し、SARIを発症した患者には、現在のサーベイランスに関する推奨に示されている通り、MERSコロナウイルスの検査をすべきです。WHOは、すべての加盟国に対し、MERSコロナウイルスの新たな感染者が発生した際には、考えられる感染源と臨床経過の情報を合わせて、速やかに評価して報告するよう呼びかけています。感染様式を確認するための感染源調査は速やかに実施されるべきで、それにより、ウイルスの更なる伝播を防ぐことができます。

 MERSコロナウイルスに感染して重症となるリスクが高い人は、ウイルスが存在する可能性があると知られる農場や飼育小屋を訪れる際に、動物との接触を避けるべきです。一般市民は、農場を訪れる際に、動物を触る前と触った後の定期的な手洗いを行う、病気の動物との接触を避ける、食品衛生対策を実施する等の一般的な衛生対策をしっかりと実施すべきです。

 WHOは、この事例に関して、入国時の特別なスクリーニングおよび渡航や貿易を制限することを推奨していません。

 海外渡航時には、手洗いの励行や動物との接触を避けるなど、一般的な衛生対策を心がけていただくとともに、MERSコロナウイルスの患者が発生している国に滞在した後に、発熱や咳などの呼吸器症状が現れた場合には、検疫所にご相談ください。

出典

WHO Global Alert and Response
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) – update
http://www.who.int/csr/don/2014_05_05_mers/en/
http://www.who.int/csr/don/2014_05_05_mers_jordan/en/

参考

ECDC
Rapid Risk Assessment: Severe respiratory disease associated with Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) Ninth update, 24 April 2014
http://www.ecdc.europa.eu/en/publications/Publications/Middle-East-respiratory-syndrome-coronavirus-risk-assessment-25-April-2014.pdf