2014年05月08日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況について (更新25)

 5月7日付けで公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、4月15日イエメンから1人、5月3日、6日ヨルダンから2人、MERS(マーズ)コロナウイルスに感染した確定患者が発生したと公表しました。

 4月15日にイエメンの国立IHRフォーカルポイント(NFP)よりWHOへ報告された患者の詳細は以下のとおりです。

 ・シバーム(Shibam)在住の44歳男性。この患者は2014年3月17日発熱、湿性咳嗽、悪寒、頭痛、筋肉痛、息切れ症状を伴い発症し、B型肝炎との診断をうけました。2014年3月22日ハドラマウト(Hadramaut)県内にある病院に入院し、その後、3月29日首都サナア(Sanaa)にある私立病院の集中治療室(ICU)へ転院しました。この患者は気管内挿管され、腎不全となり2014年3月31日に死亡しました。

 3月31日、この患者の容態が悪化し亡くなる前に、患者の咽頭から検体を採取したところ、4月2日、陽性結果が認められました。4月24日、検体は追加検査のため、米国の海軍医学研究ユニット3(NAMRU-3)へ送付され、5月5日検査結果は陽性反応を示しました。12人の接触者から咽頭検体が採取され、NAMARU-3での検査結果は陰性でした。

 この患者は、勤務先である空港で、乗客との接触がある航空機整備エンジニアでした。発症1か月前の渡航歴はなく、確定患者との接触歴はわかっていません。この患者は毎週ラクダ農場を訪れ、新鮮なラクダのミルクを飲んでいたと報告されています。

 5月3日にヨルダンのIHRフォーカルポイントよりWHOへ報告された患者の詳細は以下のとおりです。

 ・28歳男性、ヘルスケアワーカー。この患者は、2014年4月22日に頭痛と喉の痛みを訴えました。4月26日胸部レントゲン検査の結果は異常がなく、4月27日に実施したMERSコロナウイルス検査の結果は陰性でした。4月30日、咳、発熱症状が出現し、同日ザルカ(Zarqa)の病院に入院しました。5月2日、胸部レントゲン検査の結果肺炎が認められ、MERSコロナウイルス検査で陽性反応を示しました。現在の容態は、安定しています。

 この患者は、ザルカに入院した以前報告された患者と濃厚接触があったと報告されています。

 5月6日にヨルダンのIHRフォーカルポイントよりWHOへ報告された患者の詳細は以下の通りです。

 ・ザルカ在住の56歳ヨルダン人男性、個人クリニックに勤める呼吸療法士。この患者は、肺炎症状で4月28日に入院しました。5月3日、急性呼吸窮迫症候群を発症し、ICUに入院しました。5月4日に喉頭スワブ検体が採取され、5月5日、MERSコロナウイルスが陽性になり、2014年5月5日に死亡しました。この患者に渡航歴はなく、確定診断患者との接触歴は不明です。

 全体として、2012年9月からこれまでに、WHOに報告されたMERSコロナウイルスに感染した確定患者は496人になりました。この合計数には、サウジアラビアで4月11日から5月4日までに報告された229症例と、ヨルダンから最近報告のあった3症例、エジプト1例、米国1例、イエメン1例が含まれています。

 WHOは各国から提供された正式な情報に基づいて、できる限り速やかに全体死亡者数を更新していきます。

 現在の状況と利用可能な情報に基づいて、WHOはすべての加盟国へ、重症急性呼吸器感染症(SARI)のサーベイランスを継続し、通常と異なる傾向がみられた場合には慎重に検討するよう推奨しています。

 医療機関でMERSコロナウイルスに感染するかもしれないため、感染予防・制御を強化し続ける必要があります。MERSコロナウイルスの感染が疑われる患者や確定患者に医療を提供する施設では、他の患者やヘルスケアワーカー、医療機関を訪れる人にウイルスが感染するリスクを減らすために適切な対策を行うべきです。すべての医療従事者に対して感染予防・制御に関する教育と訓練を定期的に実施すべきです。

 MERSコロナウイルスに感染した患者の中には、軽症の患者や、所見が非典型的である患者がおり、患者を常に早期に発見できるわけではありません。そのため、MERSコロナウイルスや他の病原体に感染した疑いがある患者や確定患者の有無にかかわらず、常に、どの場所でも、すべての患者に対して標準予防策を実施することが重要です。

 急性呼吸器感染症の症状のある患者に医療を提供する際には、飛沫予防策を追加すべきです。また、MERSコロナウイルスに感染した可能性がある患者や確定患者に医療を提供する際には、眼の防護を加えた接触予防策を追加すべきです。エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気予防策を行う必要があります。

 臨床的にも疫学的にもMERSコロナウイルスの感染が強く疑われる場合には、その患者の最初の鼻咽頭スワブ(ぬぐい液)の検査が陰性であっても、感染している可能性があるとして管理すべきです。最初の検査が陰性であっても、再検査を行うべきで、下気道からの検体が望ましいです。

 医療従事者は、引き続き、警戒するよう勧められます。最近、中東から帰国し、SARIを発症した患者には、現在のサーベイランスに関する推奨に示されている通り、MERSコロナウイルスの検査をすべきです。WHOは、すべての加盟国に対し、MERSコロナウイルスの新たな感染者が発生した際には、考えられる感染源と臨床経過の情報を合わせて、速やかに評価して報告するよう呼びかけています。感染様式を確認するための感染源調査は速やかに実施されるべきで、それにより、ウイルスの更なる伝播を防ぐことができます。

 MERSコロナウイルスに感染して重症となるリスクが高い人は、ウイルスが存在する可能性があると知られる農場や飼育小屋を訪れる際に、動物との接触を避けるべきです。一般市民は、農場を訪れる際に、動物を触る前と触った後の定期的な手洗いを行う、病気の動物との接触を避ける、食品衛生対策を実施する等の一般的な衛生対策をしっかりと実施すべきです。

 WHOは、この事例に関して、入国時の特別なスクリーニングおよび渡航や貿易を制限することを推奨していません。

 海外渡航時には、手洗いの励行や動物との接触を避けるなど、一般的な衛生対策を心がけていただくとともに、MERSコロナウイルスの患者が発生している国に滞在した後に、発熱や咳などの呼吸器症状が現れた場合には、検疫所にご相談ください。

出典

WHO Global Alert and Response
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) – update
http://www.who.int/csr/don/2014_05_07_mers_jordan/en/
http://www.who.int/csr/don/2014_05_07_mers_yemen/en/

参考

ECDC
Rapid Risk Assessment: Severe respiratory disease associated with Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) Ninth update, 24 April 2014
http://www.ecdc.europa.eu/en/publications/Publications/Middle-East-respiratory-syndrome-coronavirus-risk-assessment-25-April-2014.pdf