2014年07月07日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況について (更新37)

 7月2日、7月4日付けのWHOから公表された情報によりますと、6月22日イランは1人の新たなMERS-CoV患者、6月25日、27日、30日、7月1日にサウジアラビア国立IHRフォーカルポイント(NFP)は6人の新たなMERS-CoV患者と、以前に報告された患者1人の死亡を確認したとWHOへ報告しました。

イランの患者の詳細は以下のとおりです:
 患者はイラン国籍の44歳男性で、イラン南東部ケルマーン州在住のヘルスケアワーカー(HCW)。2014年6月6日に軽度のインフルエンザ様症状で発症しました。症状は悪化し呼吸困難となり6月17日に入院しました。検体が6月17日に採取され6月18日最初の検査ではMERS-CoVは陰性でした。症状はさらに悪化し6月19日に集中治療室(ICU)に移されました。その日に追加で採取された検体が6月20日にMERS-CoV陽性となりました。

 患者は現在ICUの陰圧室に隔離されています。発症する14日以内の渡航歴や動物との接触歴、生のラクダ製品の摂食歴はありませんでした。患者には基礎疾患がありました。以前に確定診断されたMERS-CoV症例との接触歴はありませんでしたが、患者の勤務する病院で重症呼吸器感染症(SARI)と診断された患者と5月26日に緊密な接触があったと報告されています。患者の状態は現在安定しています。

 そのSARI患者は5月5日から15日までウムラ(小巡礼)のためサウジアラビアを訪れていました。5月17日にSARIと診断され同日に入院しました。5月22日に検体が採取されインフルエンザは陰性、24日にはMERS-CoV陰性の結果でした。患者は5月26日にICUへ転室になり気管内挿管されました。2014年5月30日にSARI患者は死亡しました。ヘルスケアワーカーと家族内の接触者調査が州保健担当部署により継続されており、さらに情報が入手されれば提供されます。

6月25日にサウジアラビアから報告された2症例の詳細は以下のとおりです:
 46歳の外国籍男性でリヤード州リヤド市在住の建設業従事者。2014年6月21日に咳、発熱で発症しました。6月24日に受診し胸部X線写真で肺炎の所見がありました。同日に入院し、採取された検体はMERS-CoV陽性でした。基礎疾患がありましたが、MERS確定患者との接触や動物との接触歴はなかったと報告されています。患者は発症するまでの14日以内にウムラへ出かけてなく、ヘルスケア施設を訪れてなく、ラクダ製品の摂食もなかったと報告されています。現在入院中で状態は安定しています。

 57歳のサウジ国籍で退職した男性。マッカ州ジッダ市在住で2014年6月13日に呼吸器症状と発熱で発症しました。6月21日に受診し、胸部X線写真で肺炎の所見がありました。同日入院し、6月23日に採取された検体で同日MERS-CoV陽性となりました。患者には基礎疾患がありましたが、MERS-CoV確定患者や動物との接触歴はなかったと報告されています。患者は発症するまでの14日以内にウムラへ出かけてなく、ヘルスケア施設を訪れてなく、ラクダ製品の摂食もなかったと報告されています。現在入院中で状態は安定しています。

6月27日にサウジアラビアから報告された1症例の詳細は以下のとおりです:
 58歳の外国籍男性で、ビーシャ地域ビーシャ市南部の農場に住み込みで働いている農業従事者。2014年6月15日に咳と発熱で発症しました。ビーシャの病院を6月22日に受診し、市中感染肺炎と診断され同日入院となりました。6月24日に検体が採取され、同日の検査でMERS-CoV陽性でした。患者には基礎疾患はなく、MERS確定患者との接触歴や動物との接触歴もなかったと報告されています。働いていた農場にはラクダを含む動物はいないと患者は報告しています。患者は発症する14日以内にウムラへ出かけてなく、ヘルスケア施設を訪れてなく、ラクダ製品の摂食もなかったと報告されています。状態は重篤で7月27日にICUへ転室になりました。同日体外膜型人工肺(ECMO)を使うためジッダ中心部へ搬送されました。

 以上の患者の接触者調査が継続されており、さらに情報が得られれば提供されます。

6月30日にサウジアラビアから報告された1症例の詳細は以下のとおりです:
 15歳の少年。リヤード州リヤド市在住で、6月26日に発症しました。患者は6月28日に受診し検体採取されました。6月30日にMERS-CoV感染が確認され、患者は連絡を受け入院しました。現在状態は安定しています。患者はマッカ州メッカ市への渡航歴がありました。以前にMERS-CoV確定患者との接触歴はなく、発症するまでの14日以内の動物との接触歴、ラクダ製品の摂食歴もありませんでした。

7月1日にサウジアラビアから報告された2症例の詳細は以下のとおりです:
 53歳男性で、ナジュラーン州ナジュラーン市在住の薬剤師。6月16日に発症、6月28日に入院し、現在の状態は安定しています。6月30日にMERS-CoV感染が検査確認されました。患者には基礎疾患がありました。発症するまでの14日以内の動物との接触歴、ラクダ製品の摂食歴もありませんでした。発症の20日前にアスィール州アブハー市へ旅行し1日滞在しました。

 28歳主婦でリヤード州リヤド市在住。6月23日に発症し6月29日に入院、現在の状態は安定しています。6月30日にMERS-CoVと確定診断されました。基礎疾患はなかったと報告されています。以前に確定診断されたMERS-CoV患者との接触歴や渡航歴はありませんでした。発症するまでの14日以内の動物との接触歴、ラクダ製品の摂食歴もありませんでした。

 接触者調査が継続しています。

 さらに以前報告された確定患者の中で1人が死亡したと報告されました。

 全体として、これまでに、WHOに公式に報告されたMERS-CoVに感染した確定患者は少なくとも287人の死亡者を含み827人になりました。

WHOのアドバイス
 現在の状況と利用可能な情報に基づいて、WHOはすべての加盟国へ、重症急性呼吸器感染症(SARI)のサーベイランスを継続し、通常と異なる傾向がみられた場合には慎重に検討するよう推奨しています。

 感染予防制御対策は、医療施設でのMERS-CoVの拡散の可能性を防止するために必須です。MERSコロナウイルスに感染した患者の中には、軽症の患者や、所見が非典型的である患者がおり、患者を常に早期に発見できるわけではありません。そのため、MERSコロナウイルスや他の病原体に感染した疑いがある患者や確定患者の有無にかかわらず、常に、どの場所でも、すべての患者に対して標準予防策を実施することが重要です。急性呼吸器感染症の症状のある患者に医療を提供する際には、飛沫予防策を追加すべきです。また、MERSコロナウイルスに感染した可能性がある患者や確定患者に医療を提供する際には、眼の防護を加えた接触予防策を追加すべきです。エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気予防策を行う必要があります。

 MERS-CoVについてもっと詳細がわかるまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫機能不全のある人々はMERS-CoV感染で重症化するリスクの高いヒトと見なされます。それ故、このような人々がウイルスの存在する可能性がある農場や市場、飼育小屋を訪れる際には動物特にラクダとの密接な接触を避けるべきです。

 農場を訪れる際に、動物を触る前と触った後の定期的な手洗いを行う、病気の動物との接触を避ける等の一般的な衛生対策をしっかりと実施すべきです。

 食品衛生対策を実施する等の一般的な衛生対策をしっかりと実施すべきです。ラクダの生ミルクや尿、適切に調理されていない肉を摂食するのは避けるべきです。

 WHOは、この事例に関して、入国時の特別なスクリーニングおよび渡航や貿易を制限することを推奨していません。

 海外渡航時には、手洗いの励行や動物との接触を避けるなど、一般的な衛生対策を心がけていただくとともに、MERSコロナウイルスの患者が発生している国に滞在した後に、発熱や咳などの呼吸器症状が現れた場合には、検疫所にご相談ください。

出典

WHO Global Alert and Response,
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV)-update, 4 July 2014
http://www.who.int/csr/don/2014_07_04_mers/en/

Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV)-update, 2 July 2014
http://www.who.int/csr/don/2014_07_02_mers/en/