2014年09月22日更新 エボラ対応に関するロードマップ (更新3)

 9月18日付けの世界保健機関(WHO)の情報によりますと、西アフリカにおけるエボラ出血熱の発生状況は以下のとおりです。

 エボラ対応ロードマップ(リンク)に関する定期状況報告の第4報です。報告書には、保健省が報告した公式情報に基づいた疫学的な状況の要約および利用可能な場合には中心となるロードマップの指標と比較した対応の評価が含まれています。データが整理・統合されるときには追加の指標について報告されます。

 この報告に含まれるデータは利用が可能な最も質の高い情報に基づいています。疫学的な状況と対応の履行の両方に対して情報の利便性と正確性を向上させるためにかなりの努力が続けられています。

 ロードマップの体系に沿って、国別の報告は3つのカテゴリーに分類されます。3つのカテゴリーとは、広範囲に及ぶ深刻な伝播が生じている国(ギニア、リベリア、シエラレオネ)、初期の症例が生じた国、あるいは局所的な伝播が生じている国(ナイジェリア、セネガル)、活発な伝播力をもつ地域に隣接する国(ベナン、ブルキナファソ、コートジボワール、ギニアビサウ、マリ、セネガル)です。西アフリカのエボラ流行と関連のない、別個のエボラウイルス疾患が発生しているコンゴ民主共和国の状況の概観についても示されています(添付1を参照のこと)。

概観
 西アフリカのエボラウイルス疾患の現在の流行は、2014年9月14日の時点で診断例5,335症例(可能性の高い症例、確定症例、疑い症例(定義については添付2を参照のこと)を含む)と死亡例2,622症例となっています(表1)。影響を受けている国は、ギニア、リベリア、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネです。下に示す図1は2013年12月30日(疫学的な第1週)に始まり2014年9月14日(同第37週:9月8日から9月14日)までに報告された国による総症例数を示しています。

図1 感染の影響を受けている3か国の症例数ヒストグラム140918_WHO_fig1.jpg1. 広範囲に及ぶ深刻な感染の伝播が生じている国
 広範囲に及ぶ深刻な伝播が生じている3国(ギニア、リベリア、シエラレオネ:表1)では依然として疫学的に流行拡大の傾向が続いています。リベリアでの症例の急増は、主に首都モンロビアで報告された症例数の急激な増加によってもたらされています。

 表1 ギニア、リベリア、シエラレオネにおける可能性の高い症例、確定症例、疑い症例の総数(2014年9月14日現在)140922_WHO_ebola_roadmap_table1.jpg

※データは、保健省によって報告された公式情報に基づいています。これらの数字は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。疫学第37週:9月8日~14日

 下図(図2~図4)は広範囲に及ぶ深刻な伝播が生じている各国での確定症例と可能性の高い症例の新規症例数の経時変化を示したもので、各々の国の首都で生じた症例数の経時変化が付されています。

ギニア

図2:ギニアとコナクリから報告された週別のEVD症例数140918_WHO_fig2_Guinea.jpg

※データは、保健省によって報告された公式の情報に基づいています。これらの数字は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。疫学第37週:9月8日~14日

 第37週(または現在まで)に新しく報告された症例数は増加していません(前週と比較してわずかに減少しています、図2)。これには主に、流行の発端となったゲケドゥ(Gueckedou)と隣接するマセンタ(Macenta)から報告された症例数が減ったことが寄与しています。首都コナクリ(Conakry)での感染の伝播は続いています。しかし、いくつかの地区では疫学第37週の時点で全く症例が報告されていないか(主として北部)、あるいは新たな症例の発生が報告されていません(主として北東部)。これは、リベリアやシエラレオネとは対照的です。しかし、ギニアで症例の減少が続いているという徴候はありません。

リベリア
 新しく報告された症例数はまだ週を追う毎に上昇しており、この上昇は主に首都モンロビア(Monrovia)での症例が最近も急増し続けていることによります(図3)。ギニアの地区、マセンタとゲケドゥに国境を接する、ロファ(Lofa)郡から報告された新規症例数は、第37週では増加していません。しかし、これをもってロファ郡で発生率が安定化したと言うことは時期尚早ではあります。

 図3:リベリアとモンロビアから報告された週別のEVD症例数140918_WHO_fig3_Liberia.jpg

※データは、保健省によって報告された公式の情報に基づいています。これらの数字は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。疫学第37週:9月8日~14日

 過去数ヶ月間、WHO、米国CDC、他の協力団体から派遣されたスタッフは、データ収集を改善し、この急速に増加する流行の可能な限り最高の状況報告を提供するために、データ・ソースを統合するためにリベリアの保健省と密接に協力してきました。この作業には、異なるデータベースの統合作業や、検査室の検査結果による症例とリベリア政府によって報告された症例数とのクロス・チェックが含まれています。この編集作業において、可能性の高い症例、疑い症例として以前分類された多くの症例が再分類され、同時に、以前報告されていなかった症例が約100症例見つかりました。これらの新しい数字はまもなく公開され、データ収集の中で大幅な改善として反映されることになるでしょう。それによって、より正確な状況の理解を提供することになるでしょう。リベリアは、流行による最悪の影響を受けている国のまま留まっています。

シエラレオネ
 シエラレオネのEVDの発生率は依然として上昇しており、先週の報告では200例以上の新しい症例が報告されました(図4)。感染の伝播は首都フリータウンと周辺都市部で高くとどまっています。新たに報告された症例数はカイラフン(Kailahun)とケネマ(Kenema)で安定しているように見えますが、他の多くの地区、ポート・ロコ(Port Loko )(フリータウンに隣接した地区)、ボー(Bo)、ボンバリ(Bombali)、トンコリリ(Tonkolili)では、過去一週間にわたる新規の症例数は増加していると報告されています。

 図4 シエラレオネおよび首都フリータウンから報告された週別のEVD症例数140918_WHO_fig4_Sierra_Leone.jpg

※データは、保健省によって報告された公式の情報に基づいています。これらの数字は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。疫学第37週:9月8日~14日

地理的分布
 下の図5は広範囲に及ぶ深刻な感染の伝播が生じている国における症例の位置を示しています(表1も参照のこと)。現時点までのそれぞれの地域での累積症例数がグレー色の円で、9 月14日までの過去21日以内に発生した症例数が赤の円で示されています。

 以前に症例が確認された9つの地区(ギニアの6地区、シエラレオネの1地区、リベリアの2地区)では9月14日以前の過去21日間に症例は報告されていません。以前に感染のみられていなかった2地域で、9月14日以前の過去7日間に最初の症例が報告されました。ギニアでは、新たに影響を受けたDalaba地域で、疑い症例が1例、確定症例が1例報告されました。リベリアでは、可能性の高い症例4例、疑い症例2例が、新たに影響を受けたメリーランド(Maryland)地域で報告されました。そこはコートジボアールとの国境にあたります。

広範囲に及ぶ深刻な感染の伝播が生じている国々での対応
 広範囲に及ぶ深刻な感染の伝播が生じている国々で、エボラ対応の補足的な活動が地理的範囲全体に行き渡ることを目指して、WHOは以下の5つの特定の領域で対応の作業を監視しています。各領域における最新の展開状況を下に詳細に示します。

①症例の管理:エボラ治療センター、紹介、感染予防と制御
 エボラ治療センター(ETC)のベッドおよび紹介できる病棟の場所の確保に対する要求は増え続け、ギニア、リベリア、シエラレオネの受容能力を越えています。国境なき医師団(MSF)は依然として、流行の影響を受けている国々の全地域で最も多大な支援を提供している国際的なパートナーであり、210人の国外スタッフと約1,650人の国内スタッフが5カ所のエボラ治療センター(ETCs:ギニアに2カ所、リベリアに2カ所、シエラレオネに1カ所)で対応に貢献しています。MSFはセネガルとナイジェリアでの対応にも貢献しています。

 ギニアでは、現在のETCの収容力は130床です。リベリアは、現在、全国でベッド数315床の収容力をもつが、需要の20%しか満たしていません。モンロビア単独で1210床が必要です。しかし、現在の収容力は240床です。現在、シエラレオネではEVDの患者に対して165床がありますが、国内の需要の25%しか満たしていません。

 ナイジェリアでは、現在、十分に需要はみたされており、症例を入院させる収容力に変化はない状態です。セネガルのダカールでは、現在、大学のFann病院でエボラ症例を治療するために9床の収容力があります。

図5:ギニア、リベリア、シエラレオネにおける新規症例数および総数の地理的分布140918_WHO_fig5.jpg

 ※データは、保健省によって報告された公式の情報に基づいています。地域は確定例および/または可能性の高い症例が報告されたときのみ、活動性のある、もしくは、新しい感染として定義されています。これらの数字は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。

 医療従事者での感染は、特にこの流行で警告すべき特徴となっています。これまでに318名の医療従事者がこの疾患を発症し、ほぼ半数が死亡しました(表2)。WHOは現場で働くスタッフ及びエボラ患者に看護を提供するすべての医療従事者に対して可能な限り安全な条件を確かめる作業を行っています。

 流行の影響を受けている国々の感染防御及び予防(IPC)の対策は強化されなければなりません。手洗い場の配置を、医療ケアを行う現場および流行の影響を受けている国の地域共同体全体で増やしていく必要があります。いくつかの地域では未だに水と石鹸が利用できません。アルコールを基剤とした手の擦込み溶液(手の清浄剤)の調達と配布が、大規模なレベルで必要となっています。WHOは、アルコール性の手の擦込み清浄剤の提供を、製造する複数の企業からたくさん寄付として受けてきました。それは速やかに流行の影響を受けている国に配布されるべきものです。

 WHOはIPCに関する訓練戦略の最終案をまとめており、これに従って作業計画が作られる予定です。アフリカ諸国においてIPCのトレーナーを育成するための訓練を含み、訓練に対して継続的な技術的援助が行われています。新しい訓練用物品が開発されました。リベリア、コンゴ民主共和国、シエラレオネ、ジンバブエではIPC訓練のためのワークショップが開催されたり、計画されたりしています。「2014年エボラ流行対応のために西アフリカに赴任する医療従事者のためのトレーニングコース」に関して、米国CDCと協同作業が続けられています。9月16日には、WHOのIPC専門家によって、「エボラウイルス疾患の予防および制御のために重要な処置」について、Webber Training(http://www.webbertraining.com/)でプレゼンテーションがなされる予定です。

 表2 ギニア、リベリア、ナイジェリア、シエラレオネにおける医療従事者での可能性の高い症例、確定症例、疑い症例の総数140922_WHO_ebola_roadmap_table2.jpg

 データは、保健省によって報告された公式の情報に基づいています。これらの数字は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。

②症例の診断
 ギニアでは、三つの検査室が稼働しており、現在、症例検体数に関して、また地理上の範囲での需要を満たす十分な受入能力があります。リベリアでは、検査室の受入能力はモンロビアで新しいエボラ治療センターを開設したときに再評価する必要があります。シエラレオネでは、ボンバリ(Bombali)と西部地域での症例数の大きな負荷があり、追加の移動検査室の展開が必要なる可能性があります。カイラフン(Kailahun)地区では、カナダ公衆衛生庁が、地域のMSFのETCと協調して活動を再開しました。ケネマでは、CDCチーム1の検査室がケネマとボー地区からの検体を検査しています。フリータウンでは、NICD移動検査室がフリータウンと西部地域からの検体を検査しています。

③サーベイランス
 接触者への追跡調査能力が、現在、シエラレオネで強化されています。

④安全な埋葬
 リベリアでの埋葬チームは、毎日10~15遺体を埋葬しなければならず、作業負担が増え耐えきれなくなっています。安全な埋葬チームの数を増やすための努力が続けられています。モンロビアでは、新たに6つのチームが訓練されており、現在ある6つのチームに加えられる予定です。1日あたり5遺体を最大限とする運営を目指しています。安全な埋葬訓練は、流行の影響を受けているほとんどの郡(ニンバ、ボン、ロファ)、及び、流行への対策チームが入っているその他の郡でも行われています。

 図6:ギニア、リベリア、シエラレオネに対する対策の監視体制140918_WHO_fig6.jpg

⑤社会的動員
 社会的動員チーム(Social Mobilization team)は3つの深刻な感染の伝播が生じている国でエボラへの対応戦略の実施に積極的な参加を続けています。シエラレオネでは、焦点は、啓発活動のチーム(約28,500人)への強化訓練を提供することにあります。彼らは2014年9月19日から21日に掛けて150万世帯を1軒ずつ訪問して、地域社会の懸念を聞き、エボラの伝染、予防、看護及び治療に関する適切な知識を提供し、病気の患者を治療もしくは観察施設に連れて行くことを家族に奨励する活動をする予定です。

 リベリアでは、新たな焦点が計画されているエボラ/地域治療ユニットの一部として地域共同体に関与してもらうという戦略に置かれています。その活動は地区及び地区に準じる地域で設定される予定です。この社会的動員チームは、各国における関連活動を監視し実地調査するために、共通とすべき指標の評価も行っています。

 上記の活動領域に加えて、本質的なサービスに対する決定的なギャップに対処するために短期間の収容能力を提供するために作業が続けられています。 世界食糧計画(WFP)は、2014年4月以来、147,500人のために3000 トンの食料を提供してきました。世界食糧計画によって運営される国連の人道支援エアサービス(United Nations Humanitarian Air Service)は、これまでに2機の航空機と1機のヘリコプターを使って要請のあった290の輸送を行ってきました。WFPと物流クラスターは400立方メートルの医療物資の輸送を容易にしました。WFPはエボラ治療センター(総500床)の建設を目指すWHOに対して技術供与と物流支援も行っています。

2. 初期の症例が生じた国、あるいは局所的な伝播が生じている国
 2ヶ国(ナイジェリアとセネガル)では広範囲に及ぶ深刻な感染の伝播が生じている国から入国してきた症例が報告されています(表3参照)。ナイジェリアでは、感染が伝播している患者が全て7月20日にリベリアからラゴス(Lagos)に旅行した一人の人物につながります。この症例との接触者の中で、一人がポート・ハーコート(Port Harcourt)に旅行し、さらなる地域伝播の感染源となりました。この伝播は目下のところ4症例に限られています。最優先事項として、最上位にある規制当局によって支援されるところの接触者の追跡がラゴスとポート・ハーコートで実施されてきました。ラゴスでは374人が21日間の観察期間を終え、4人が今も観察下にあります。ポート・ハーコートでは164人の接触者が21日間の観察期間を終え、359人が現在も観察下にあります。

 セネガルでは、8月20日に陸路でギニアからダカールへと旅行していた1名が、8月27日に検査でエボラ陽性となりました。74名の接触者が経過観察を受けていますが、現在までのところ誰も検査でEVD陽性とはなっていません。

 表3 ナイジェリア、セネガルにおける可能性の高い症例、確定症例、疑い症例および死亡例の総数(2014年9月14日現在)140922_WHO_ebola_roadmap_table3.jpg

3. エボラへの暴露を迅速に検出し対応するための各国の準備状況
 事務局長が国際保健規則(IHR 2005)に基づき招集した、2014年の西アフリカのエボラ流行に関する2回目の緊急委員会が、今週eメールで開催される予定です。この委員会では、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態として流行の状態を再評価し、流行を封じ込め、国際的な広がりを抑制するために現在臨時に行われている対策の効果を評価する予定です。

 WHOや幅広い協力者は、流行の影響を受けていないアフリカ各国でのエボラのサーベイランス、対応への準備と対応計画への支援をしています。優先的な活動には、発熱による説明のつかない死亡例の集団発生に対する積極的サーベイランス、一般大衆及び旅行者に対する情報の提供、隔離施設の決定、WHOにより認証された検査室へのアクセスが正当に行えるようにすること、疑い例に接触した人を特定し、モニターする対策を確立することが含まれています。

 WHOアフリカ地域では、流行の影響を受けていない国々で発生しうるEVDの流行に対応するための準備ができるように実行計画を最終決定したところです。実際に感染が伝播している地域と国境を接する国々に対して、EVDの流行に対する最小限の基準が満たせるように、支援が行われる予定です。

 WHOアフリカ地域において検査の能力を強化する活動が続けられています。具体的には、WHOアフリカ地域における検査室の能力を高めるため、WHOアフリカ地域の新興性高危険性病原体の検査ネットワーク(the Emerging and Dangerous Pathogen Laboratory Network)のすべてのメンバーで協力し、などの任務がおこなわれています。新興性高危険性病原体ネットワークは、エボラ感染の検査ができるすべての研究室の場所と受入能力を示す地図を作成しています。現在、検体の輸送体制の確立や、全てのエボラ陽性のものの管理を含む必要不可欠な試薬や物品の調達を主要な施設で進めています。

 WHOは、日々の旅行、貿易、輸送においてエボラに対応するために採用されている方策を監視しています。また、WHOは国際的に協力者と共同歩調を取り、状況を監視し、適切なときに海上-航空部門に情報を提供するために国際旅行や国際輸送の対策委員会を設置しています。


添付1.
コンゴ民主共和国でのエボラ流行
 2014年9月15日現在、コンゴ民主共和国(DRC)で71例のエボラウイルス病(EVD)症例(53例の確定症例か可能性の高い症例、18例の疑い症例)が報告されています。そのうち40例が死亡と報告されました。症例のうち11%はEVDと診断された患者に従事した医療関係者に発症しています。接触者としてリストされた403人の95%が9月15日の段階で確認されました。この流行は、ギニア、リベリア、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネでの流行との関連はありません。

添付2.
エボラ症例は疑い症例、可能性の高い症例、確定症例のうちのどの基準に合致するかで分類される。

表5:エボラ症例の分類に使われる基準140918_WHO_Ebola_table5_criteria.jpg

出典

WHO: Ebola Response Roadmap Situation Report,18 September 2014
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/133833/1/roadmapsitrep4_eng.pdf?ua=1