2014年10月27日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況について (更新42)

2014年10月17日にWHO欧州事務局から公表された情報によりますと、トルコで中東呼吸器症候群ウイルス(MERS-CoV)感染症の検査確定例が確認されたことが国立国際保健規約(IHR)担当者から報告されました。これはトルコで最初のMERS-CoV感染症例で、患者は10月11日に死亡しました。

症例の詳細情報
症例は42歳の男性、サウジアラビアのJeddah(ジッダ)で働くトルコ市民です。患者は9月25日にジッダで発症しました。当初、患者はサウジアラビア国内で医療施設を受診しましたが、10月6日に病状が悪化したために、ジッダからトルコのHatay(ハタイ県)への直行便で帰国しました。帰国の途中、患者は地方の病院への入院を経て、10月8日にハタイの大学病院に搬送されました。

公衆衛生の対応
直ちに、搭乗機および同機に乗り合わせた可能性のある接触者に関する情報が調査されました。搭乗員の健康状態はいまも健康監視下にあります。同時に、患者がジッダに滞在し、症状を発現していた時期(9月25日~10月6日)に接触した者も、サウジアラビアの健康管理施設で接触した者も含めて、検査が行われています。WHO欧州事務局と地中海東部地域事務局のIHR担当者はトルコとサウジアラビアの間の担当者どうしの直接連絡に対する促進を図っています。

WHOには世界で883人の検査確認症例が報告され、そのうち319人が死亡しています。

WHOからのアドバイス
発生状況と現在得られる情報に基づいて、WHOはすべての加盟国へ、重症急性呼吸器感染症(SARI)のサーベイランスを継続し、通常と異なる経過を辿る症例に対しては慎重に検討することを勧めています。

感染予防制御対策は、医療施設でのMERS-CoVの拡散の可能性を防止するためには必須です。MERS-CoVに感染した者の中には、軽症の患者や、所見が典型的でない患者がおり、常に患者を早期に発見できるわけではありません。

そのため、医療従事者は、診断に関係なく、すべての患者に対し一貫して常に標準予防策を実施することが重要です。加えて、以下の予防策を追加することも必要です。急性呼吸器感染症状を伴う患者には、医療を提供する際には飛沫予防策を追加すべきです。MERS-CoVに感染した可能性がある患者や診断が確定した患者に医療を行う際には、接触予防策と眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防策を行うべきです。

さらにMERS-CoVについて解明されるまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫機能不全のある人々はMERS-CoV感染で重症化するリスクの高いと見なされています。そのため、このような人々はウイルスの存在する可能性がある農場、市場、さらには飼育小屋を訪れる際には、動物、特にラクダとの濃厚な接触を避けるべきです。農場を訪れる際に、動物を触る前と触った後に定期的な手洗いを行い、病気の動物との接触を避ける等、一般的な衛生対策をしっかりと実施すべきです。

食品衛生の習慣は守られる必要があります。ラクダの生ミルク、尿、調理不十分の肉を摂食することは避けるべきです。

WHOは、このことに対して入国時の特別な検査や渡航や貿易の制限を行うことを推奨してはいません。

出典

WHO Global Alert and Response(GAR)
Middle East respiratory syndrome coronavirus(MERS-CoV)-Saudi Arabia, 24 October 2014
http://www.who.int/csr/don/24-october-2014-mers/en/