2014年11月04日更新 エボラ対応に関するロードマップ (更新16)

10月31日付けの世界保健機関(WHO)の情報によりますと、エボラウイルス病の発生状況は以下のとおりです。

●要約
10月29日までに流行が発生した6か国(ギニア、リベリア、マリ、シエラレオネ、スペインおよびアメリカ合衆国)および過去にその影響を受けた2か国(ナイジェリア、セネガル)から報告されたエボラウイルス病(EVD)の疑い例から確定例までの診断例数は患者数13,567例、死亡者数4,951例でした。報告された診断例数は、10月29日の報告よりも減少していますが、これは主としてギニアでの疑い症例が除外されたことによります。

エボラ対応ロードマップ(リンク) に関する定期状況報告です。ロードマップの体系では、報告が3つのカテゴリーに分類されます。3つのカテゴリーとは、広範囲に及ぶ深刻な感染の伝播が生じている国(ギニア、リベリア、シエラレオネ)、初期の症例が生じた国、あるいは局所的な感染が発生している国(マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、 アメリカ合衆国)、流行が蔓延する地域に隣接する、または物資交流が盛んな国です。エボラウイルス病が独立して、関係することなく発生しているコンゴ民主共和国の状況についての概要は補足にて記載しています。

本サイトでは、最初の2つのカテゴリーについて報告しています。

1.広範囲に及ぶ深刻な感染の伝播が生じている国
ギニアとシエラレオネの各保健省から10月29日までに、また、リベリアの保健省から10月25日までに報告されたエボラウイルス病の発生状況は、患者数13,540例で、4,941死亡者数がとなっています(表1)。現時点で、リベリアとシエラレオネでは流行が始まって以来、全ての行政区域で少なくとも1例のエボラウイルス病患者の報告がありました。コートジボワールと国境を接するギニアおよびリベリアの8つの区域のうち、ギニアの1区域を除く全ての区域でエボラウイルス病患者の報告がみられています。

10月29日までに、523名の医療従事者[ギニア82例、リベリア299例、ナイジェリア11例、シエラレオネ127例、スペイン1例、アメリカ合衆国3例(うち、アメリカ国内2例、ギニアで感染1例)]がエボラウイルス病に感染し、269名が死亡しました。

WHOは、それぞれの症例における感染の原因を追跡するために広範囲にわたる調査を実施しています。調査初期でわかったことは、感染のかなりの割合がエボラの治療と看護の状況以外の場面で発生したということです。現在流行が深刻な3か国で、感染予防と管理体制を維持するために、検証作業が行われています。同時に、すべての広範なエボラ治療施設に最適な個人用保護具を確実に供給するために、また、すべての医療従事者が受けるリスクが可能な限り押さえられるように、さらに、訓練とそれに関連したガイドラインが確実に提供されるように、徹底的した努力が続けられているところです。

表1 ギニア、リベリア、シエラレオネにおける確定症例、可能性の高い症例、疑い症例数

図.ギニア、リベリア、シエラレオネにおける可能性の高い症例、確定症例、疑い症例の総数および死亡者数

※データは、各保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は継続されている再分類、遡っての調査、利用できる検査結果の検討によって変わることがあります。

2.初期の症例が生じた国、あるいは限局的に感染者が発生した国
マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、アメリカ合衆国の5か国で、現在までに広範囲に及ぶ深刻な流行が発生している国から流入してきた症例が報告されています。

ナイジェリアでは20症例および8例の死亡例がありました。セネガルでは1症例の発生がありましたが、死亡例はありません。しかしながら、この2か国では対策が功を奏した結果、セネガルとナイジェリアのエボラウイルス病の発生は、それぞれ2014年10月17日および 19日に終息が宣言されました。

10月23日に、マリで初めてのエボラウイルス病確診症例が報告されました。この患者は、ギニアからマリへ祖母と旅行した2歳の女児でした。患者は旅行期間中のほとんどで症状を現していました。患者は、10月22日にKayes(カイ)のFousseyni Daou病院に入院しました。確定診断のための検査検体がBamako(バマコ)のSERAFOに送られ、結果はエボラウイルス病陽性でした。患者は10月24日に死亡しました。3名の疑い症例が確認されましたが、これまでに除外されています。現在までに85名の接触者が確認されており、引き続き健康監視の下にあります。初めての症例が生じた場合に、それに対応するマリの準備状況がどうであるか評価するために、WHOの準備対応チームがマリにいました。このチームは、感染予防と管理体制、接触者の追跡、および医療従事者の訓練について、マリの保健当局に対して専門知識の提供と支援を行うことになっていましたが、直ちに目的を変更して対応しました。WHOのチームおよび主だった協力者がマリに留まり、引き続き支援を続けています。

スペインでは、マドリードで感染した患者1名について、エボラウイルス病陰性の検果を10月19日に、2度目の検査陰性の結果を10月21日に得ました。これにより、新しい症例が報告されなければ、スペインでは、2度目の検査陰性の結果が判明した日の42日後に、エボラウイルス病の終息が宣言されます。スペインで感染者と接触者した医療従事者の83名については、全例が21日間の経過観察を終えました。

図1 ギニア、リベリア、マリ、シエラレオネにおけるエボラウイルス病の累積症例数と新規症例数の地理上の分布図

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※データは、各保健省から報告された公式情報に基づいています。この地図上で使用される境界と表示されている名称および呼称は、いかなる国、領土、都市や地域の統治との関係についてWHOが見解を発表しているものではありません。また、地図上の点線と破線は、その国々あるいはその国境および境界の範囲が完全な合意にいたっていない可能性があるためにおおよその境界線を表しています。

アメリカ合衆国では4例の診断例が発生し、うち1例が死亡しています(表2)。最も新しい症例はギニアでボランティア活動を行っていた医療支援者で、10月17日にニューヨーク市に戻ってきました。患者は帰国時の検査では症状がありませんでした。しかし、10月23日に発熱を認めたことを報告し、エボラウイルス病の検査で陽性であることが分かりました。患者は、現在、ニューヨークのBellevue(ベルビュー) 病院で隔離されています。ここはニューヨークでエボラウイルス病患者を治療するために指定された8つの病院のうちのひとつです。

テキサス、ダラスのPresbyterian(プレスビテリアン)病院でエボラウイルス病陽性の患者を看護した後に感染した2名の医療従事者は、検査で2度の陰性が確認され退院しました。感染の可能性が考えられる176名の接触者のうち、現在99名が健康監視下におり、77名が21日間の観察期間を完了しました。

表2 マリ、スペイン、米国におけるエボラウイルス病症例の患者数および死亡者数

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* リベリアから帰国したエボラ患者を治療する間にアメリカで感染した2例の医療従事者、およびギニアで感染した1例の医療従事者が含まれています。データは保健省により報告された公式情報に基づいています。これらの数値は継続して行われている再分類、遡っての調査、利用できる検査結果の検討によって変わることがあります。

補足
コンゴ民主共和国でのエボラ流行
2014年10月28日現在、コンゴ民主共和国(DRC)で医療従事者8例を含む66例のエボラウイルス疾患(確定診断例38例、可能性の高い症例28例)が報告されています。また、49例が死亡と報告されました。この中には8例の医療関係者の中での死亡も含まれています。疑い症例とされていた症例は現在までにすべて除外されました。

現在、経過観察を受けている中で新規症例の報告はありません。最後に報告された症例が2度目の検査で陰性が確認され病院を退院した日から、20日が経ちました。これにより、コンゴ民主共和国は、新規症例の発生がなく2度目の検査陰性が確認された日から42日が経てば、エボラウイルス病の終息を宣言することになります。この流行は、西アフリカを発生地とする流行との関連はありません。

出典

WHO, Situation reports:Ebola response roadmap,
Situation report,31 October 2014
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/137424/1/roadmapsitrep_31Oct2014_eng.pdf?ua=1[PDF形式:640KB]