2014年11月04日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況について (更新43)

 2014年10月31日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、10月12日と23日に、カタールの国立国際保健規約(IHR)担当者から中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)の症例が2例発生したことが報告されました。これらは2014年にカタールからWHOに報告された最初の症例です。

症例の詳細情報
 症例は71歳の男性。カタールのドーハからサウジアラビアのAl-Hasa(アル・ハサー)地域へ家族3人と自動車で旅行している途中、10月1日に症状が出現しました。10月7日、この患者は症状が悪化したためアル・ハサーにある個人の診療所を受診し、そこからドーハのHamad総合病院へ搬送されました。10月11日に行った検査によってMERS-CoV感染が陽性と確認されました。この患者はラクダの家畜小屋を持っており、ラクダの生乳を飲んでいたことが判っています。患者には合併症があり、現在重篤な状態です。

 もう1例は43歳の男性。ドーハにて10月14日に症状が出現しました。この患者は10月17日と18日に医療施設で治療を受けましたが、入院はしていません。10月20日、患者の容体が悪化し、病院に入院するとともに、同日の検査でMERS-CoV感染が陽性と確認されました。この患者には合併症はありませんが、発症までの14日間にラクダの家畜小屋を頻繁に訪れていました。その他の判りうるリスク要因に曝されたような経過はありません。現在、患者の容体は安定しています。

公衆衛生の対応
 この2症例の家族および医療従事者に関係する接触者は確認できており、健康監視下に置かれています。現在、これらの接触者の中で症状を示している者はいません。2例の患者と接触した家族に対し、適切な予防対策に関する健康教育メッセージの確認が行われました。カタールのすべての保健医療施設の感染予防および管理対策がSupreme Council of Health (SCH)により発出され、再度の強化が図られています。更にSCHは、環境省と共同で、2つの家畜小屋のラクダを調査しています。

 WHOには世界で885人の検査確認症例が報告され、そのうち319人が死亡しています。

WHOからのアドバイス
 発生状況と現在得られる情報に基づいて、WHOはすべての加盟国へ、重症急性呼吸器感染症(SARI)のサーベイランスを継続し、通常と異なる経過を辿る症例に対しては慎重に検討することを勧めています。

 感染予防および制御対策は、医療施設でのMERS-CoVの拡散の可能性を防止するためには必須です。MERS-CoVに感染した者の中には、軽症の患者や、所見が典型的でない患者がおり、常に患者を早期に発見できるわけではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、常にすべての患者に対して一貫して標準予防策を実施するべきです。急性呼吸器感染症状を伴う患者の世話をする場合には、標準予防策に飛沫予防策を追加すべきです。また、MERS-CoV感染の可能性がある患者、あるいは診断が確定した患者の世話をする場合には、接触予防策および目の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

 今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと見なされています。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場や市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れた後に常に手洗いを行い、病気の動物との接触を回避し、一般的な衛生手順を厳守すべきです。

 食品衛生の習慣は遵守しなければなりません。ラクダの生乳あるいは尿を飲まないように、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

 WHOは、このことに関連して入国時に特別な検査を行うことを推奨してはいません。また、現在、旅行あるいは貿易を規制することも推奨していません。

出典

WHO, Global Alert and Response (GAR)
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV)-Qatar, 31 October 2014
http://www.who.int/csr/don/31-october-2014-mers/en/